守護獣はマジでやばいアルか!? ポンコツ勇者、決死の策で(また)暴走し、理性派フレアのサバイバル術と村のニンジンの謎~
洞窟最深部。黒い角笛の音と共に現れた『歪みノ守護獣』――全身が禍々しい結晶で覆われた巨大な熊型の魔獣――は、その黒紫色の双眸で俺たちを睨みつけ、地響きのような咆哮を上げた。その威圧感たるや、先ほどの幹部ゴルザック(股間強打により戦闘不能)など比較にならないレベルアル!
「出タナ…『歪みノ守護獣』…!コレハ…マズイ…!」
フェンが、全身の毛を逆立てて警戒態勢に入る。解放された銀狼たちも、本能的な恐怖からか後ずさっている。黒装束の兵士たちは、守護獣の登場に士気を取り戻し、再び俺たちに襲い掛かろうとしていた。
ポヨンちゃんは先ほどの光で力を使い果たしたのか、ぐったりと俺の腕の中にいるが、その小さな手は俺の服をしっかりと握っているアル。
「(こ、これは…本気で死を覚悟するレベルアル…!だが、ここでやられるわけにはいかないアル!)」
俺は、なけなしの勇気を振り絞り、守護獣と黒装束たちを交互に見やった。そして、一世一代(何度目アルか)の策を思いついた!
「フェン!狼たち!あのデカブツの注意を引いてくれアル!俺が、あの『歪みの欠片』をどうにかする!」
《ユニークスキル:誤変換【ミストランスレート】が発動しました!》
俺の勇ましい指示は、仲間たちにはこう聞こえたらしい。
「フェン!狼たち!あのデカブツにオシッコをかけてマーキングしてくれアル!俺が、あの『歪みのお煎餅』を美味しくいただくアル!」
フェン「…オ前ハ…最期マデ…ソウイウ奴ナノカ…?」
他の銀狼たち「「「グルルル…(困惑)」」」
黒装束たち「(ヒソヒソ)…敵の大将はアホなのか…?」「歪みのお煎餅…?罰当たりな…」
空気が、またしても変な方向に凍り付いたアル!
『S.A.G.E.より作戦評価:マスターの奇策(という名の自爆行為)、敵味方双方の士気を著しく低下させる効果を確認アル。ある意味、戦術兵器と言えなくもないアル』
「(やかましいアル!こうなったらヤケクソアル!)喰らえ!俺のピンクの…なんとかアターーーーック!アル!」
俺は【セーフティ・リジェクション】に強制されるまでもなく、自ら(ヤケクソで)「歪みの欠片」に向かって突進した!俺の狙いは、この欠片を破壊するか、あるいは守護獣とぶつけて同士討ちさせることアル!
守護獣が俺の動きに気づき、巨大な結晶の爪を振り上げる!黒装束たちも慌てて俺を止めようとする!
フェンが、そして数匹の勇敢な銀狼が、決死の覚悟で守護獣と黒装束たちに飛びかかり、俺への攻撃をわずかに遅らせる!
「うおおおおお!届け、俺のポンコツパワー!」
俺が「歪みの欠片」に触れようとした、その瞬間!
欠片が、俺のピンクオーラと守護獣の放つ歪みのオーラ、双方に反応したのか、激しく明滅を始めた!そして、キィィィンという甲高い音と共に、欠片から制御不能なエネルギーの奔流が迸ったのだ!
「な、なんだアルかこれええええええ!?」
洞窟全体が激しく揺れ、天井から岩が降り注ぐ!エネルギーの奔流は、守護獣も黒装束も、そして俺たちをも無差別に飲み込もうとしていた!
その頃、巨大発光キノコの森。
フレア(理性モード)は、クルトと共に、ひとまずの安全確保と情報収集に努めていた。エルミナは「♪キノコのポルカで夜もすがら~ユート様とステップ踏むの~♪」と、木の周りをくるくる回り、ギンジは「聖剣よ!我が魂の叫びに応えよ!エクスカリバァァァァッシュ!」と、ひときわ大きな光るキノコ(どうやらそれが聖剣に見えるらしい)に抱きついていた。
「…サンプルA及びサンプルBの精神汚染は継続中。行動の予測は困難。まずは、我々二名の生存を最優先事項とします」
フレアが冷静に状況を分析する。
「クルトさん、あなたの発明品の中で、最も信頼性が高く、かつ現在の状況打開に繋がりそうなものは何です?食料生成機は…最終手段として保留します」
フレアの言葉に、クルトは少しだけ落ち込んだ表情を見せたが、すぐに気を取り直し、いくつかの発明品を取り出した。
「ふむ…ならば、この『超広帯域・異次元生物反応探知レーダー(試作品・ただし時々ただの石ころに反応し、存在しないUMAの影を追う)』か、あるいは『万能カмуイフ(試作品・切れ味は抜群だが、なぜか使用者の髪型をランダムで奇抜なものに変える副作用あり)』あたりが有望かもしれん!」
フレアは深いため息をつき、その二つの発明品をじっと見つめた。
「…レーダーの方を起動してください。ただし、半径50メートル以内に限定。石ころやUMAに反応した場合、即座に停止します。ナイフは…私が持ちます。あなたの髪型がこれ以上奇抜になるのは、精神衛生上よろしくありません」
「むう…僕の芸術的センスが…」
クルトがレーダーを起動すると、画面には無数の微弱な反応と、いくつかの強い反応が表示された。その中で、ひときわ大きく、ゆっくりと移動する反応が一つ、彼らのいる場所から北東方向に確認された。
「この反応…大型生物…?それとも…何か別の…?」
フレアの理知的な瞳が、レーダーの示す一点を鋭く見つめていた。
ユートピア村(仮称)。
ルルナの差し出した「虹色ニンジン」を食べた黒狼が群れを率いて森へ帰った後、村には安堵と興奮が入り混じった空気が流れていた。
「ルルナちゃん、お手柄じゃ!あのニンジンは、まさに奇跡のニンジンじゃな!」イモグラーンが興奮気味に語る。
「いえ…私なんて…きっと、精霊様が助けてくださったんです…」ルルナは頬を染めて俯く。
バルガスとリリアナは、村の被害状況を確認しつつも、今回の出来事に首を傾げていた。
「しかし、あの狼たち…ただの獣ではなかったような気がする。妙に統率が取れていたし、何より、あの黒狼には知性のようなものを感じた…」
「はい…。それに、西の森から、以前とは違う…少し嫌な気配を感じるのです。念のため、明日、数名で斥候を出してみませんか?」
リリアナの提案に、バルガスも頷く。
ルルナは、自分の部屋に戻ると、窓辺に座り、再び南南東の空を見つめた。先ほど感じた、ポヨンちゃんへと繋がるような微かな光の感応。それは、今もなお、細く、しかし確かに感じ取れるような気がした。
「(ユート様…ポヨンちゃん…どうか、ご無事で…)」
彼女の祈りは、距離を超えて、ポンコツ勇者の元へと届いているのだろうか。
そして、再び洞窟最深部。
「歪みの欠片」から迸ったエネルギーの奔流は、洞窟全体を激しく揺るがし、守護獣も黒装束たちも、そして俺やフェン、解放された狼たちをも巻き込んで、凄まじい光と音と共に炸裂した!
「うわああああああああああアルうううううううう!!!」
俺は、ポヨンちゃんを強く抱きしめたまま、意識を手放した――。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
俺が次に目を覚ました時、そこは…洞窟ではなかったアル。
鼻をくすぐる、甘い花の香りと、柔らかな草の感触。そして、どこまでも広がる青い空…。
「こ、ここは…どこアルか…?」
俺は呆然と呟いた。周囲には、同じように意識を取り戻したらしいフェンと、数匹の銀狼、そしてぐったりとしているが息はあるポヨンちゃんの姿があった。黒装束や守護獣の姿は見えない。
そして、俺たちの目の前には、信じられない光景が広がっていた。
宙に浮かぶ、巨大な島々。そこから流れ落ちる、天の川のような滝。そして、七色に輝く巨大な樹木…。
明らかに、俺たちが今までいた世界とは異なる、幻想的すぎる光景だった。
「な、なんだアルか…ここは……天国…アルか…?」
『S.A.G.E.より状況報告:マスター、及び同行者各位。「歪みの欠片」のエネルギー暴走により、ランダムな異次元空間へ強制転移した可能性99.9%。おめでとうございますアル。これであなた方は、正真正銘の『異世界転移者』ですアル。なお、ここは天国ではなく、おそらくもっと面倒くさい場所アル』
「(全然おめでたくないアルううううううううううう!!)」
俺の胃痛は、もはや異次元レベルに達していた。
ポンコツ勇者、スキルとヤケクソが重なり異次元転移!フレア理性モードでサバイバルなるか!?村の斥候隊が見るものは!?次回、新天地(地獄かもしれない)での冒険が始まるアル!




