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新章第6話 湯けむり女神と一つ屋根の下?!~ポンコツ勇者、ドキドキお色気(当社比)ハプニング祭り~


「だからお前は黙ってろって言ってるだろぉぉぉぉぉ!!副作用も怖すぎるわ!」

俺――ユートの絶叫は、故郷・米子の自室の押し入れの中に開いた虹色のゲートに吸い込まれ、次の瞬間、俺たちは見慣れた(そしてあまり見慣れたくなかった)ミクストピア大陸の、どこかの森の中に立っていた。

数日ぶり(体感的には数ヶ月ぶり)の異世界の空気は、やっぱりどこか埃っぽくて、そして血生臭い。

「ふぅ…どうやら、無事にミクストピア大陸へ帰還できたようですわね。ユート様の部屋の押し入れが、まさかこれほど安定した次元ゲートの役割を果たすとは…クルト、後で詳細なデータを」

エルミナが冷静に状況を分析する横で、クルトは「素晴らしい!あの押し入れの特異点としてのポテンシャル!僕の理論では…!」と早くも興奮気味だ。

バルガスは「おーし!帰ってきたからには、まずは美味い肉と酒だな!」と腹を鳴らし、リリアナさんは「ユート様、ミクストピアの空気はお体に合いますか?ご無理なさらないでくださいね」と俺を気遣ってくれる。ポヨンちゃん(ニジカ)は「ミクストピアの森だー!お花さんいるかなー?」と元気に駆け回っている。

『S.A.G.E.より業務連絡(再開):マスター、異世界への再派遣、誠にお疲れ様である。今回の出張手当として申請しておいたS.A.G.E.特選『超強力・即効性胃腸薬(ミクストピアの古代薬草「ココロオレンズ」配合・ただし副作用で一時的に頭頂部が虹色に発光し、幸運値が-50される可能性あり)』は、残念ながら時空転送の際にロストした模様だ。引き続き、マスター自身の力で胃痛と戦ってくれたまえ』

「お前、本当に役に立たないな!あと副作用がデメリットしかないだろ!」

ひとまず俺たちは、一番近くにあるという「湯けむり村」という、名前からしていかにもな村を目指すことにした。古代兵器の暴走を止めるという壮大な任務を前に、まずは情報収集と休息が必要だ。特に俺の精神的な休息が。

「湯けむり村」は、その名の通り、村のあちこちから温泉の湯気が立ち上る、のどかで小さな村だった。宿屋の人の良さそうなおかみさんに案内されたのは、幸運にも(あるいは不運にも)露天風呂付きの離れ。ただし、一部屋しかなかった。…え?一部屋?

「申し訳ありませんねぇ、旅の方々。今は湯治客が多くて、一部屋しか空いてなくて…。でも、この離れは広いですし、家族風呂みたいに使っていただければと」

おかみさんは人の良さそうな笑顔でそう言うが、俺の顔は引きつっていた。

エルミナ、リリアナさん、ポヨンちゃん、そして俺。…クルトとバルガスは?

「ああ、そちらの屈強な旦那衆は、さっき村の男たちと意気投合して、酒盛りしながら共同浴場の方へ行っちまったよ。今日は泊まっていくそうだ」

…マジか。俺、この美女(と美幼女)たちと、一つ屋根の下、しかも露天風呂付きの部屋で一夜を過ごすってことか!?

『S.A.G.E.より状況分析:マスター、これは俗に言う「お約束のハーレム展開」のフラグが立ったと見て間違いないだろう。ただし、君のポンコツ体質とマイナス補正のかかった幸運値を考慮すると、甘い展開よりも過酷な試練が待ち受けている可能性の方が99.8%と算出される。健闘を祈る』

「頼むから黙っててくれ、本当に!」

夕食後(山の幸が美味しかった)、交代で露天風呂に入ることに。もちろん俺が最後だ。

月明かりの下、岩風呂に一人浸かり、「ふぅ…やっと落ち着ける…」と息をついた瞬間。

「ユート様、お背中、流しましょうか?」

湯けむりの向こうから、タオル一枚の(ように見えた)リリアナさんが、ニコニコしながら現れたのだ!

「ひゃあああ!?り、リリアナさん!?な、なんで!?」

「あら、いけませんでしたか?先ほどエルミナ様とポヨンちゃんが上がられたので、次はユート様の番かと。たまにはこうして、ゆっくりお話しするのも良いかと思いまして」

リリアナさんは、普段の生真面目な騎士の顔ではなく、どこか艶っぽい、柔らかな表情を浮かべている。鍛え上げられたその体は、鎧の上からでは分からなかった、驚くほど女性的で…その…ムチムチとした健康的な魅力に満ち溢れていた。特に、湯気に濡れた肌と、タオルからこぼれ落ちそうな豊かな双丘が…いかんいかん!

俺はパニックになり、慌てて湯船から飛び出そうとして、見事に足を滑らせ、リリアナさんを巻き込んで盛大に転倒!

「きゃあっ!」「うわっ!」

結果、俺はリリアナさんの柔らかくも弾力のあるお尻の上に顔をうずめるという、最低最悪の(しかしある意味最高かもしれない)体勢になってしまった。リリアナさんの、石鹸と温泉の混じった甘い匂いが鼻腔をくすぐる。

「だ、大丈夫ですか、ユート様!?」

顔を真っ赤にしたリリアナさんに助け起こされ、俺は「す、すいません!死にます!」と謝罪しながら、這うようにして風呂から脱出した。心臓がバクバクうるさい。

部屋に戻ると、そこには浴衣姿のエルミナとポヨンちゃんがいた。

ポヨンちゃんは、風呂上がりで火照った頬で「ユートお兄ちゃん、くすぐっちゃうぞー!」と無邪気に俺にじゃれついてくる。その小さな指が脇腹をくすぐり、俺は「ひゃははは!やめろポヨンちゃん!」と畳の上を転げ回る。

その拍子に、近くで書物を読んでいたエルミナの上に、またしても倒れ込んでしまった!

「うわっ!す、すいませんエルミナ様!」

俺の顔は、エルミナの美しい銀髪に埋もれる形になった。彼女の髪からは、薬草と古書のような、どこか知的で落ち着く、それでいて微かに甘い香りが漂ってきて、俺は思わずクラクラしてしまった。

「…勇者様、少々…いえ、かなり近いですわ。それに、あなたの体重は、見た目以上に…重いです」

エルミナは冷静な声でそう言うが、その白い首筋がほんのりと赤く染まっているのを、俺は見逃さなかった。

リリアナさんも濡れた髪を拭きながら部屋に戻ってきて、「ユート様、お召し物が濡れていますわ。風邪を召しますよ」と心配そうに俺に近づき、新しい浴衣を渡してくれようとする。その際、彼女の湯上がり姿の、しなやかで引き締まったお尻のラインが、月明かりに照らされて妙に艶めかしく見えてしまい、俺は再び心臓が跳ね上がるのを感じた。

『S.A.G.E.より感情分析:マスターの心拍数、血圧、アドレナリン分泌量、全てが危険水域に到達。いわゆる「ドキドキが止まらない」状態と診断する。ポンコツながらも、一応は健全な男性機能が残っているようで何よりだ。ただし、このままでは鼻血を出して気絶する可能性も否定できない』

「お前は本当にデリカシーというものがないな!」

そんな俺の精神的限界などお構いなしに、エルミナが険しい顔で口を開いた。

「…先ほどの温泉ですが、ただのお湯ではないようですわ。湯けむりに紛れて、微弱ながら、しかし確実に、古代の魔導エネルギーの残滓を感じました。この湯けむり村の地下…あるいは、この村の近くに見えるあの険しい山に、何か古代遺跡に関連するものが眠っているのかもしれません」

その言葉に、俺の脳裏には「休息終了」の四文字が、極太ゴシック体で表示された。

「ええっ!?やっと休めると思ったのに…!やっぱり俺に平穏な日常なんて訪れるはずがないのか…!」

ポンコツ勇者の胃痛は、せっかく温泉で少し癒えたかと思いきや、即座に再発の兆しを見せるのであった。

次回、湯けむり村の地下に眠る謎!ポンコツ勇者、今度は温泉ダンジョン(お色気ハプニング付き?)に挑むのか!?それとも、ただの温泉巡りで終わるのか!?(たぶん前者)


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