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第27話 魔王様ご指名!~ラスボス直前、まさかの戦意喪失?!~


魔王城の巨大な城門が、俺――ユートの絶叫とポンコツスキル『誤変換』の合わせ技によって、なぜか大歓迎ムードでひとりでに開いてから数分。俺たちは、深々とお辞儀をする二体の元・凶悪ガーディアン(現・丁重なるドアマン)に見送られ(?)、城内へと足を踏み入れていた。どこからともなく聞こえてくる歓迎のファンファーレ(たぶん幻聴)の余韻が、まだ耳に残っている気がする。

「…信じられませんわ。魔王城の絶対防衛結界と、あの強力なガーディアンが、まるでテーマパークのアトラクションの入り口のように…」

エルミナは、未だに目の前の状況が飲み込めていない様子で、美しい眉をひそめている。

「僕の計算と理論が、勇者君の存在そのものによって根本から覆されていく…!これは、新たな学問分野『ユートロジー(勇者学)』の確立が必要かもしれないぞ!」

クルトは、興奮で目を白黒させながら、手持ちの端末に何やら猛烈な勢いでメモを打ち込んでいる。あんた、懲りないな本当に。

『S.A.G.E.より報告:対象「魔王城」における『最上級賓客おもてなしウェルカムモード』の直接的効果範囲は、城門周辺及びエントランスホールに限定される模様。ただし、最初のインパクトによる城内警備システムへの心理的影響、及び指揮系統の混乱は未知数。引き続き油断は禁物だ』

「心理的影響って、機械にもあるのかよ…」

S.A.G.E.の分析も、もはや俺の常識では理解不能だ。

城内は、禍々しい紫色のクリスタル照明がぼんやりと照らし出す、どこまでも続くかのような巨大なホールと、複雑に入り組んだ廊下で構成されていた。壁には、見るもおぞましい怪物のレリーフや、拷問器具らしきものが飾られ、空気は重く淀み、邪悪な気配がそこかしこに満ち満ちている。まさに魔王の居城といった雰囲気だ。

時折、魔王軍の鎧を纏った兵士たちとすれ違うが、彼らは俺たち一行の姿を認めると、なぜか一瞬ギョッとした表情を浮かべ、すぐに「失礼しました!」とばかりに踵を返し、どこかへ慌てて走り去ってしまう。まるで、見てはいけないものを見てしまったかのような反応だ。おもてなしモードの余波なのか、それとも単に俺のポンコツオーラに当てられただけなのか…。

罠らしきものも通路のあちこちに仕掛けられてはいるのだが、クルトが「む!あれは古典的な落とし穴の起動スイッチだ!皆、注意しろ!」と指摘した途端、なぜかそのスイッチが勝手に引っ込んだり、天井から巨大な岩が落ちてくるはずのトラップが、代わりに大量の紙吹雪(黒色)を降らせたりと、ことごとく不発に終わる。俺の『絶対安全拒否』スキルが、無意識のうちに広範囲に作用して、この城の悪意そのものをデチューンしているかのようだ。

「ユートお兄ちゃん、あっち!あっちからね、すっごくドキドキするけど、なんだかあったかーい、キラキラの大きな光を感じるの!」

ポヨンちゃん(ニジカ)が、俺の持つ「虹色の涙石」と、自身が持つ「虹色の涙石のかけら」を胸に抱きしめながら、特定の方向を指さした。二つの涙石は、これまで以上に強く、そして美しい虹色の光を放ち、まるで脈打つかのように明滅を繰り返している。

「この気配…そしてポヨンちゃんのこの反応…間違いありませんわ。『聖なる祭壇』、そして魔王ザルヴァークは、この先にいます!」

エルミナの言葉に、一同の顔に緊張が走る。

涙石の導きに従い、いくつもの不気味な部屋や、無力化された(あるいは勝手に自滅した)罠だらけの通路を抜け、俺たちはやがて、ひときわ巨大で、そして比較にならないほど禍々しいオーラを放つ、黒曜石でできた巨大な両開きの扉の前へとたどり着いた。

この扉の奥が、玉座の間らしい。魔王の気配が、扉の隙間からでもビリビリと肌を刺すように感じられる。

その時、扉の前で腕を組み、仁王立ちしていた一体の魔族が、ゆっくりとこちらに顔を向けた。

漆黒のローブ、鋭い爪、そして山羊のようなねじくれた角…見覚えのある姿だ。

「…四天王の、ヴァルギオス!」リリアナさんが警戒の声を上げる。

そう、先日の戦いで、俺の出した闇鍋(魔界風味)のせいで散々な目に遭い、撤退していったはずの「冥府の魔導卿」ヴァルギオスその人だった。数人の屈強そうな側近を従えている。

「(またあんたかよ!しかも、まだあの鍋のこと根に持ってそうな顔してるし!)」俺は思わず身構えた。

ヴァルギオスは、俺たちの姿を認めると、その赤い瞳を大きく見開き、次の瞬間、顔面蒼白になり、明らかに狼狽え始めた。

「き、貴様らか!な、なぜこんなところまで…いや、それよりも、あの勇者!その手には何を持っている!?ま、まさか…また鍋か!?新しい鍋料理でも召喚するつもりか!?」

どうやら、前回の闇鍋事件が、彼の中で相当なトラウマになっているらしい。

「よう、鍋奉行!今度はどんな美味いもん食わせてくれるんだ?俺は腹ペコだぜ!」

バルガスが、悪気なく(しかし確実に相手のトラウマを抉る形で)挑発する。

ヴァルギオスは、バルガスの言葉にビクッと肩を震わせ、俺の顔と、俺が(涙石を持っている)手を交互に見比べると、何かを察したかのように青ざめた。

「…い、いや、待て。我が魔導の真髄を以てしても、貴様のような『規格外のバグ』が引き起こすカオス現象には対処しきれん…!これは罠だ!魔王様は、貴様のような『混沌の権化』の処理は、ご自身で直接なさると仰せであった!そうだ、そうに違いない!」

ヴァルギオスは一人で何やら納得すると、側近たちに向かって叫んだ。

「通せ!この者たちを魔王様の御前へ!我々は手出し無用!これは魔王様直々の御命令だ!(たぶん!)」

そして、ヴァルギオスとその側近たちは、まるで逃げるように、慌てて扉の脇へと道を開けたのだ。

「「「「「ええええええええええっ!?」」」」」

俺たちは、あまりの展開に、もはや驚く気力すら失いかけていた。

『S.A.G.E.より報告:対象ヴァルギオス、過去の戦闘データ(主に闇鍋召喚による精神的ショック)に基づき、マスターとの再戦を極度のトラウマにより回避する行動パターンを選択。その学習能力の高さと危機回避能力は、四天王の名に恥じぬものと評価できる(戦闘能力以外は)』

拍子抜けするやら、安堵するやら、複雑な気持ちのまま、俺たちはついに玉座の間へと続く最後の扉を開けた。

扉の先は、想像を絶するほど広大なドーム状の空間だった。高い天井には、まるで生きているかのように禍々しい赤い星々が怪しく明滅し、床にはおびただしい数の人間の骸骨が、まるで絨毯のように敷き詰められている。空気は凍えるように冷たく、魂そのものを圧し潰すかのような、絶望的なまでの邪気が満ち満ちていた。

そして、広間の最奥。無数の髑髏を積み上げて作られた、黒曜石の巨大な玉座に、一体の存在が静かに腰かけていた。

漆黒の翼、頭頂部から天を突くように伸びるねじくれた山羊の角、そして、あらゆる光を吸い込むかのような深淵の瞳。その姿は、まさしく絶望と恐怖の化身、魔王ザルヴァーク。

魔王ザルヴァークが、ゆっくりと顔を上げた。その深淵の瞳が、俺たち一人一人を、まるでゴミでも選別するかのように、冷ややかに見据える。

「ククク…ようやく辿り着いたか、世界の法則を乱す矮小なる虫ケラどもよ。そして…最も忌むべき、名も知らぬ世界の『バグ』よ」

その声は低く、地を這うようで、聞く者の精神を直接削り取り、凍てつかせるかのようだ。魔王の視線が、俺の上でピタリと止まった。

「特に貴様だ。その存在そのものが、我が計画に対する最大のノイズであり、この世界の調和を乱す異物。実に不快極まりない。貴様がこの世界に紛れ込んだことこそが、唯一にして最大の計算外だったわ」

エルミナが一歩前に出て、毅然と叫ぶ。

「魔王ザルヴァーク!あなたのその邪悪な野望も、今日この場所で終わりを告げます!我々は二つの虹色の涙石を聖なる祭壇に奉じ、世界の歪んだ律動を正し、あなたという存在そのものを、この世界から完全に消滅させます!」

魔王は、エルミナの言葉を鼻で笑った。

「律動を正すだと?ククク…愚かの上にも程があるというものだ。この世界の歪みこそが、新たなる宇宙の調和の始まりなのだ。そして、貴様らのような不純物こそが、その調和を乱す異物として排除されるべきなのだ」

魔王ザルヴァークが、ゆっくりと玉座から立ち上がる。その瞬間、凄まじい魔力の嵐が玉座の間全体を吹き荒れ、俺たちは立っていることすら困難になるほどの強烈な圧力を感じた。

「まずは、その最も不快な『バグ』の発生源である貴様から、この世界より完全にデリートしてくれよう。異世界の勇者(笑)とやら」

魔王の細長い、黒曜石のような指先が、的確に俺に向けられた。その指先に、世界の終わりを告げるかのような、絶大にして凝縮された破壊のエネルギーが、漆黒の光を放ちながら渦巻き始める。

次回、ついに最終決戦開始!ポンコツ勇者VS絶望の魔王!世界の運命、そしてユートの故郷(鳥取含む)への道は、果たして開かれるのか!?


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