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六章『剣師(ソードマスター)』⑨

9




「まったく自己評価が低すぎるのも考えものですよ」


「はあ、ごめんなさい」


ため息をついて呆れるネクに小さく頭を下げる。


「それで? これからどうするんですか」


「どうって?」


一応申し訳なさそうにしていたオレはネクからの予想外の質問に聞き返す。


「レオくんはこれからどこに仲間を探しに行くんですかと聞いてるんです」


「え、ってことは魔王討伐に協力してくれるのか!?」


「それはまだわかりません」


ガクッ!


期待に声を上擦らせた直後にかわされてオレは思わず、ずっこけそうになる。


「じゃあなんのための仲間探しなんだよっ!」


「わたしが協力するかどうかは集まった仲間次第ですね」


仲間次第って、強力な仲間なら良いってことなのか? 


でもネクの強さを考えると彼女が納得する強さの仲間って条件相当きびしくない?


「まあ旅に出てくれる気になっただけでも良しとするか」


自分の成長という課題もあることだし、急いでばかりもいられない旅だ。


そこは少しずつ考えていこう。


「それと女の子は絶対仲間にしないでくださいね」


「いやそれは無理だよ」


ネクの言葉をオレはすぐに小さく笑って返した。


「はっ!? まさかレオくんはわたしというものがありながら、女の子ばかりのパーティーを作ろうとしてるんですか!!」


「いやいや違うって!」


なぜか急に殺意のオーラを纏い出すネクの言いがかりを首を振って否定する。


「本当ですか? もしそんなことになったら消しますよ。女の方を」


「いやこわいから!」


深淵のような瞳で見つめてくるネクにドン引きしつつ、オレは目を逸らしながら自分の考えを伝えることにした。


「でもちゃんと言っといたほうがいいかもな」


「言うって、なにをですか?」


「実は一人目の仲間の目星はもうついてるんだ」


少し間をおいて言ったその言葉にネクの表情が暗黒になりそうな勢いでさらに曇る。


「……まさか、それが女の子ってことじゃないですよね?」


「まあ〜〜〜〜そう、なんだよね!」


やましいことなど何一つないはずなのに話の流れが最悪に噛み合ってしまった結果。


オレはネクの問いかけにすごく言いづらい気持ちで頷いた。


それを聞いたネクはもちろんキレていて、口の端をピクピクさせながら目を細めて問い詰めてくる。


「レオく〜ん? 今の会話の流れからよく過去に目をつけていた女の話なんて出来ましたねぇ〜」


「ええ!? なにそれ、誤解だよっ!」


「なにが誤解なんですか! 蘇ってからこの村にしか滞在してないのにそれ以外にレオくんが目星をつける冒険者の女なんかいるわけないでしょう!」


「いや正確には冒険者なのかは分からないけど頼りになりそうだと思って」


「冒険者でもない女を魔王討伐パーティーに加えるつもりなんですか!?」


ネクの驚きは当然なのだが、正直オレが最初に仲間の候補にするなら彼女以外あり得ないと思っている。


最初は否定するかもしれないけれど、ネクも絶対納得してくれると信じてる。というかしてくれないと困る。


「断られるかもしれないけど、できれば……」


「なんですかその女! レオくんがそこまでしてパーティーに加えたい女とか許せません! 居場所を教えてください。今すぐ八つ裂きにしに行きますから!!」


「そう言われても、もう居るからなぁ」


そう言われてオレは、憤るネクの方を見た。


「へ、後ろに!?」


ネクがオレの視線に気付き、咄嗟に背後を振り返る。


「……」


もちろん、そこには背の低い木造の家が建っているだけで人影なんてありはしない。


「最初に仲間になってほしい人は一人しかいないよ」


「あ、そういうことでしたか」


やっと気づいてくれたネクがしおらしくなって長いスカートを握って弄ぶ。


「最初はネクじゃないと、オレ戦えないよ。オレたちは運命共同体なんだからさ」


自分を死霊術ネクロマンシーで蘇らせたネクとの連携無くして、今のオレが十分に戦うのは厳しいだろう。


だから最初にパーティーメンバーになってもらうならネク以外にはあり得ない。


「えっと、でもわたしはレオくんに痛い思いをしてほしくて蘇ってもらった訳じゃないんです」


「なら、いつかネクが心配しなくてもいいくらい強くなるよ。だからこれからもオレと一緒に戦ってくれないか?」


「これからも一緒……でも、う〜ん」


そんな、あと一息で頷いてくれそうなネクにオレはもう一度念を押して頼み込む。


「頼むよ。勝利の女神に背中を預けられるなんて、そんな贅沢なこと他にないだろ」


「勝利の女神? わたしがですか?」


「そうだよ。昨夜の戦いだってネクがいなかったら絶対に勝ててなかったし」


意外そうにするネクにオレは頷いた。


シスターというのもあって、背後で祈る姿は勝利を願う聖女という風に見えてもなんらおかしくはない。


「……わかりました」


「本当? やった!」


「レオくんと一生添い遂げることを誓います!」


「返事がすごい大事になってる!?」


一体のどこで会話の掛け違いが起きたのか、オレには解読できなかった。


けどまあいいか。ネクの死霊術ネクロマンシーで蘇ってる限り一緒にいるのは変わらないんだし……いいのか?


「これで正式にパーティーも組んだことだし、とりあえず次の街に向かうかぁ」


無事に最初の目標が片付いたオレはほっと一息つく。


そんな安心するオレにネクが思い出したように口を開いた。


「あ、そういえば言い忘れてたんですか」


「?」


「レオくんの体は死んでしまうたびにレベルがリセットしてしまうんです」


「え、つまり……?」


ネクからさらっと告げられる衝撃発言に時が止まった。


「昨日、宿屋で蘇らせたので現在のレオくんのレベルは1です」


「……マジですか?」


「残念ながら」


今、これからの旅の道中。


オレは嫌でもレベリングをし続けなければいけないことが確定した。


「まあいいか。やることは変わらないんだし」


また一からの冒険に覚悟を決めてネクへ手を差し出す。


「じゃあ改めてよろしく」


「ええ、末永くよろしくお願いします」


ネクがぎゅっと握りしめて少し大袈裟な返事に応えてくれた。


その温もりを感じた時にオレはネクと最初に会った時と同じように少し懐かしいような感覚になってしまう。


「もしかして君はやっぱり……」


「ん?」


「いやなんでもない! 忘れてくれ」


けど金の髪と青い瞳で見つめてくる彼女にすごく失礼かもしれないと思い止まり、口を閉じてその疑念を胸の中に押し込んだ。


確かめるのはまだ少し先でも遅くないだろう。


「よくわかりませんが、レオくんの聞きたいことならいつでも聞いてくださいね。なんでも答えますので」


「ああ、オレが死んでるうちに変わった事もあるだろうから頼らせてもらうよ」


「はい。胸のサイズでもほくろの位置でも最初に洗う場所でも全部答えますから、ね」


「いや聞かないし、オレにされる質問の想定がだいぶ最低なんだけど!」


「……ふむ、つもりレオくんは聞きたくはないと。答えは教えてもらうだけではつまらないという意味ですねわかります」


「オレはネクがなに言ってるのかがわからないよ……頼むから会話しよう?」


もはやいつも通りになってきたネクのおかしな言動に頭を抱えながら。


オレはこの子の言ってることを分かりたいような、全く分かりたくないような葛藤に頭を悩ませる。


「そういえば、レオくんはどこに向かってるんですか? 今は北門の方に向かってますけど魔王城を目指すなら南門から出た方がいいんじゃ」


「ああ。ちゃんと旅を始める前にまずは一回、自分の故郷に寄ろうと持ってさ」



「──え」



笑顔で言うオレを見て、どうしてかネクは凍りついたように固まって言葉を失う。


「ネク、大丈夫?」


血の気が引いたような顔にオレは心配になって声をかける。


「え、ええ大丈夫です。すぐに魔王城に行くと思っていたので意外だっただけで」


「そうだよね。呑気って思われるかもしれないけどさ」


「いえ、そんなことは……」


「魔王との戦いに勝っていたら真っ先に帰りたい思ってたから今のうちに寄っておきたくて」


「でも、レオくんは亡くなってるので村の中に行くのは難しいと思いますよ」


「あっ、そっか」


「はい。こればっかりはごめんなさい」


「いや大丈夫! 遠くから平和そうなのを一目見るだけでも十分だから」


「そうですね」


いつもと変わらぬ笑顔を向けてくれるネクと並んで、オレは北門から村に別れを告げ。馬車の出ている近くの街を目指して出発する。


向かう先は、オレの故郷。


新たなる仲間との出会いを求めて、オレは二度目の冒険の一歩を踏み出した。


♦︎


──いるんだよ、本物の天才って奴は。



その言葉を頭で反芻するネクは隣を歩くレオの横顔を眺めながら肩をすくめた。


(あなたはその中に含まれていないと思っているのかもしれないですが、むしろあなただけなんですよ……)


トライデン大陸のギルドに置かれた石碑には歴代勇者の名と、魔王城で命を落とした前勇者パーティーのレベルとジョブが記載されている。


勇者、レベル43、上級ジョブ『魔法剣士』サン・ロック。


レベル43、上級ジョブ『大魔法使い』(ルナ・ハインツ)


レベル43、上級ジョブ『賢者』(ゴードン・グランベル)


レベル43、下級ジョブ『剣士』(レオ・ウィング)


(この世で勇者以外に生き様がジョブとして扱われる『伝説職レジェンドジョブ』を持つ者なんて)


この世界で勇者に次ぐ、唯一の剣師ソードマスターという後に伝説職レジェンドジョブと呼ばれる偉業を成した剣士は──ネクの視線に気づくと、そんなことはつゆ知らずに優しく笑いかけてくる。


その笑顔にもう一度会うために生きてきたネクはそれだけで胸を余すことなく満たす。



だから、これからどんな苦難があろうと乗り越えられると信じきっていた。

【RESULT】


冒険者、レオ・ウィング。

ジョブ、剣士。伝説職レジェンドジョブ剣師ソードマスター

装備、駆け出し冒険者の軽装。金装飾の片手剣。

レベル12→→→レベル1


元魔王軍幹部、ネク・セイント。

職業、ネクロマンサー、元シスター。

装備、修道服と冒険者用のブーツとバックパック。

レベル???

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