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三章『頂を目指す日々』②

2




生き返ってから初となる中型モンスターとの戦闘を終えて村に着くと、門の前でキョロキョロと周りを見回している怪しげな行動をした男の姿があった。


門番は休憩中のようで近くに姿は見当たらない。


男は何も持っていない所を見ると、この村の人間のようだけど……


「なにしてるんだ、あの人」


「さあ。待ち合わせの相手でも待っているんじゃないですか」


「こんな時間から? 待ち合わせなら門の内側ですればいいのに」


オレたちが帰ってきたのは日も落ちかけた夕暮れ時。


夜は視界が悪く魔物の行動も活発化するので出歩くのが危険なことは子供でも知っている常識だ。


「あの様子、もしかすると他の人には見られたくない相手なのかも知れませんねぇ?」


「あーなるほど」


ネクに言われ、オレは夜にも平気で外を出歩く人種の心当たりに行き着いた。


たしかに盗賊や山賊といったならず者の類なら、この時間に訪れてもおかしくはない。ということは、この人はなにか後ろめたい取引でもしようとしているのだろうか。


この場は素通りすることにして、オレは村の住人と思われる男の顔をしっかりと目の記憶しておいた。


それはそうと、さっきからネクはどうして彼の方を見てニヤニヤしているんだろう。なにか面白いことでもあったのか?


「そんなことよりレオくん早く行きましょう。お腹が空いているでしょう?」


「はあ、またネクの世話になるのか」


村の中に入るなり、ご飯屋に向かおうとするネクの問いかけに所持金の無いオレは憂鬱な気持ちになる。


「そんなこと気にしないでください」


「いやぁ、でもさ」


「わたしがわたしの意思で連れ回しているんですから、このくらい当然ですよ!」


「それならネクだけ食べればいいじゃないか」


「またそんなこと言って、店内に二人で入って一人だけでご飯をいただいてたら不審に思われてしまいますよ」


「そうなんだけどさあ〜」


ネクの言っていることの意味は分かる。けど、どうしても今の自分が情けなくてオレは素直に首を縦に振ることができない。


「そんなに気になるなら、明日村の掲示板にちょうどいい依頼がないか見に行ってみますか?」


そんなオレを見かねたネクがしてくれた提案に、オレは彼女が言い終わるや否やすぐさま乗っかる。


「それだ! それで報酬金が貰えば、少しでもネクに返せるよ!」


「わたしはそんなこと気にしてないんですけどね。レオくんがそっちの方がいいならそうしましょう」


「これからずっとネクにおんぶに抱っこじゃ情けないからね」


「その方がわたし的には好都合なんですけどねゴニョゴニョ」


「よし、明日は絶対に依頼をしに行こう!!」


「なんかすっごいやる気なのが気になりますが、まあいいです。じゃあこの話はここまで! 夕食を食べに行きましょう」


「うん!」


その後、ネクは入った店の一番高い、都から取り寄せているという特上ステーキを注文していた。


その事にオレが気づいたのは、そのステーキでお腹をいっぱいに満たし、会計の時に目玉が飛び出そうな値段を目にした時のことだった……


これはネクへのお返しは相当な働きでなくては返せそうにないな……ははっ。


翌日。


オレはネクのバックパックを背負って宿屋の階段を駆け降りてカウンターの前を歩いていた。


「ネク、早く酒場に掲示板を見に行こう!」


「起きたばかりで元気ですね、お兄ちゃんは」


おおお、お兄ちゃん!? 


振り返った瞬間。今まで歳の近い女の子に呼ばれたこともない呼称に思わず全身がむず痒い気持ちになる!


あっいやそうだった。この村でのオレたちは兄妹という設定なんだった。


でもオレたちって見た目とか髪の色とか全然違うけど、なぜか村の人たちは何も言ってこないけど本当に大丈夫なんだろうか?


ネクが兄妹って言うと、なぜか大人はみんな苦笑いを浮かべて励ましてくるんだよな。


「いや今はそんなことどうでもよくて!」


「? どうしたんですか、お兄ちゃん。朝から変ですよ?」


めっちゃ連呼するじゃん! 二人の時はいつも名前で呼んでるのに!


「ほら、急がないと条件の良いヤツはすぐ無くなっちゃうかもしれないじゃん!」


「いえ、それならたぶん大丈夫ですよ」


「?」


「だって、この街」


ネクがなにか言おうとしたが、その前に横から別の声がオレの耳に届いた。


「おい、にいちゃん。高え報酬の依頼がしたいのかい?」


「え」


声の主は宿屋のカウンターの向こう側。


モーニングコーヒーを片手に新聞紙を読みながら、脚が弓形に曲がっている椅子を揺らす愛想のない店主だった。


「なら掲示板にも貼っていないが良い依頼があるぞ。とびきりの報酬が手に入る依頼がな」


「とびきりの……報酬?」


「気になりますね」


そんなこれ以上なく期待させるような言い回しに、オレは少し興味を惹かれた。


「……聞きたいか?」


「ああ、聞かせてくれ!」


「なら、これは男の中の男。真の漢にしか頼めない依頼だ。にいちゃん、ちょっとこっち来い」


「あら、女のわたしには内緒の話ですか」


「まあな」


振り向くオレに笑いかけるネクの表情を見て、オレは一人だけで店主の方へ近づいていく。


カウンターの前に立ったオレはネクには聞こえない抑えた声で店主に話しかける。


「なあ、店主。よく分からないけど依頼をしに行くのはこの二人なんだけど」


「構わん。宝をにいちゃんが無事にここまで運んでくればな」


「宝? それが報酬ってこと」


「そうだ。ここから北に数キロ歩いた場所にある洞窟の最奥。そこにある忘れられた財宝を持ち帰ってきたら、にいちゃんに分け前をやろう」


「洞窟か。たしかに危険そうな依頼だな」


洞窟のお宝か。俄然胡散臭さが増してきた気がする。


「ああ、だから真の漢にしか頼めんのだ。どうだやるか?」


まあけどネクへのお返しを考えると並の依頼じゃあまり意味がない気がするし、ここはやってみるとしよう。


「受けるのは良いけど、最後に一つ聞きたい」


「ん、なんだ言ってみろ」


「それって、盗賊とか誰かの物とかじゃないよな?」


「ああ、誓ってそういう曰くつきの品じゃねえ……それだけは確かだ」


「よかった。それなら受けるよ、その依頼」


まあ少し怪しいけど、少し骨がある方が経験値にもなるだろうしさ。


オレは宿屋の男店主との話を終えてネクの元に戻る。


「話は済みましたか?」


「うん」


「頼んだぞにいちゃん。分け前はたんまりやるからよ!」


「そりゃ楽しみだ。行こうネク」


「はい! レオくんが行くというならどこへでもお供しますよ」


「え、じゃあ魔王城でも?」


「それはまだ保留です」


「……。それじゃあとりあえず、お宝のある洞窟に出発だ!」


宿屋を出たオレとネクは北門から村を出て、宝のあるという洞窟に向かった。

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