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ユリと私は翌日、私の実家であるブルービショップ家を訪れていました。
「ご両親様、先日は大変失礼な態度をお見せし、誠に申し訳ございませんでした。私たちが勝手に結婚を決めてしまったことも、深くお詫び申し上げます。 貴族としての礼儀として、このような行動は到底許されませんでした。 今後はもっと責任を持ち、適切な振る舞いを心掛けますので、どうかお許しいただけますようお願い申し上げます。」
ユリは深々と頭を下げ、その様子には真摯な謝罪の意が込められていた。 一方で、両親は彼の行動に驚きと戸惑いを隠せず、唖然としてる。
「あ、頭を上げてくれ。我々が先に無礼な計画を立て、あなたを巻き込んでしまったことを謝るべきだ。 此方こそ、すまなかった。 この結婚に関して我々も同意の上だった。」
「ありがとうございます。より良い関係を築いていくために努めます。」
「君はもはや我が家の一員です。どうかゆっくりとくつろいでいってください。 我が家への訪問はいつでも歓迎します。」
そして、ユリの方を見て、さらに歓迎している様子を示した。
ユリは父の言葉に感謝の表情を浮かべ、軽く頭を下げた。
「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。」
その後、お父様とお母様のもてなしで用意された美味しい食事が並ぶテーブルについた。 父と母はユリとの結婚を祝福し、幸せを願いながら笑顔で会話を交わした。 気さくなトーンで、これからの家族の絆を深めるために、今後の計画や思い出話を語り合った。 そして、この家族の新たな一員であるユリが歓迎され、互いに温かい言葉を交わしながら、楽しいひとときを過ごした。
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馬車が揺れる中、私は心地よい布団に包まれ、ユリの膝の上で安心感を覚えていた。 その温かな膝の上で、ユリの優しい手で頭を撫でられていた。
「そういえば、お義兄様の姿がなかったですね。」
「あ、シリルお兄様は王宮騎士志望なので、王都の騎士学校にいると思います。」
「なるほど。では、また今度ご挨拶しないといけませんね。」
こんな風に私の家族を大切に思ってくれるのは、とてもありがたいし嬉しかった。
「あの…このような事を聞くのは心苦しいのですが、ユリのお義母様はどうなりましたか?」
「心配はいりません。父が上手くやってくれてます。」
ユリは私を安心させるかのように、顔のいたるところにキスを落としてくれた。 その優しいキスが、私の心を穏やかにしてくれた。
「もう!人前では少し恥ずかしいです!」
正面に座る使用人は目を瞑って静かに座っていた。
「おい、下がれ。」
「畏まりました。」
馬車が動いたままであるにもかかわらず、使用人は扉を開けて去って行った。
「危ないっ!!」
「大丈夫ですよ。うちの使用人は皆、その手のプロですから。」
(その手の!?どの手!?)
実家から公爵邸に戻ると、夜になっていて、すぐに使用人が食事を部屋に運んできた。
「さて、メイ。今日も沢山食べましょうね。」
もはやお決まりと言わんばかりに私を膝に乗せて、一口試食しながら、食事を食べさせてくれた。
(これに慣れてはいけないわ。絶対ダメよ!あの厳しい王妃教育を思い出すのよ私!!)
そして、驚くべきことに、湯浴みの時間が訪れると、ミレーヌが扉の前に立って、「湯浴みの時間です」と告げたのだ。
「ミレーヌ!?どうして…。」
「ユリドレ様の計らいでお嬢様の専属メイドを務めさせていただくことになりました。」
「ユリ…。」
振り返ってユリドレの顔を見ると、彼がにっこりと微笑んでいるのが見えました。 私もその微笑みに感謝の気持ちを込めて微笑み返した。
ミレーヌに湯浴みを手伝ってもらうのは、とても心地よかった。 彼女の丁寧な仕事ぶりに安心感を覚え、心身ともにリラックスできた。
「お嬢様は素敵な旦那様をお持ちになりましたね。」
「えぇ。そうみたい。でも…。」
「どうされましたか?」
「ミレーヌ、私のために知らない土地で知らない人々と暮らすことになるでしょう?それが心配なの。長年私を支えてくれたあなたがここで居心地良く暮らせるかどうか…。」
「余計な心配でございます。私はお嬢様と一緒であればそれで良いのです。」
「ミレーヌ…。ありがとう。でも無理はしないで。帰りたくなったらいつでも言うのよ。」
湯浴みが終わり、厚手のもこもこした生地のネグリジェを着せられた後、部屋に戻ると、ユリが黒のボディースーツ姿で待っていた。 その姿に驚きを隠せない私。しかし、スタイルが非常に美しい為、大変セクシーに見えた。
「ユリ…?」
「メイ、今から少し仕事に出かけます。一人では危ないので、この部屋のいたるところに護衛を潜ませていますので安心して眠って下さい。それとミレーヌ、俺が戻るまでの間メイの側にいてあげてください。一緒に眠ってしまっても構いません。」
「畏まりました。」
ミレーヌはユリ向かって丁寧に頭を下げた。
「ユリ、気を付けて下さいね。」
ユリは私に近づいてキスをし、微笑みながら頭を撫でてから部屋を出て行った。
「やはり、そういう趣味なのかしら…。」
頬に手をあてて首を傾げるミレーヌ。
「ちょっ、ちょっとミレーヌ!失礼な事言っちゃだめです!私達には色々あったんですよ。ちゃんとした恋愛結婚です。」
私がベッドに入ると、ミレーヌは横に小さな椅子を持ってきて、そこに座り、私の手を握ってくれた。
「ミレーヌ。さっきは恋愛結婚っていったけれど、確かにまだ日が浅いから恋愛結婚と呼ぶにはまだまだだと思うわ。でもね、これからだと思うの。私はきっとユリを沢山好きになる。」
「ふふふ。お嬢様はこんなに小さな体をしていらっしゃいますのに、どうしてそんなに立派な考えを持つようになったのでしょうか。」
「えへへ。」
(何度も回帰してるからですなんて言えない。)
「さぁ、お眠り下さい。夜更かしはお腹の子に触ります。」
「はーい。」
心地よい安心感に包まれ、久しぶりに見知った人が側にいるという安堵感の中で、私はゆっくりと眠りに落ちることができた。
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一方ユリドレはとある邸宅に潜入しようとしていた。
「若様、時間まで後少しですね。」
「あぁ。」
暫らく沈黙が続き、殺伐とした雰囲気に我慢の限界だったのか同じく黒ずくめの仲間が口を開く。
「奥様と順調なようですね。羨ましい限りです。」
「死にたいのか?」
ギロリと視線だけて人を殺せてしまいそうな殺気を放つ。
「し、失礼しました。」
「全部演技だ。鬱陶しい。」
「そ、そうですよね。さ、流石皇帝陛下の忠実なる番犬ですね。」
「ここからは俺一人でいく。お前はこの脱出経路を抑えておけ。」
「はっ!!」
公爵邸よりも規模の小さな城であるが、その警備は非常に堅固で、ユリドレは最初から透明化の力を駆使せざるを得なかった。
ユリドレはこの任務が成功すると確信していたが、決して油断せず、慎重に行動することを心がけていた。
(クソッ。ブルービショップめ。要らぬ先約を俺にかけやがって。)
しばらくして目的の場所へと到着し、任務を遂行するために行動を開始した。 周囲の状況や目標に集中し、慎重に行動しながら目的を達成していった。
潜入がバレた状況に対処するため、ユリドレは冷静さを保ち、周囲の敵対的な状況に対処しなければならなかった。 困難な状況に直面しながらも、彼は機転を利かせて逃走の道を見つけ出し、任務を達成し帰還するための策を練った。
(ハッ。笑えるな。この俺が失敗しかけるとはな。責任をとってもらわないと割にあわないな。そうだろ?メイシール。)
クククと不気味な笑いを堪えながら雪原を一人歩くユリドレだった。
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