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一か月後、王都のレッドナイト公爵邸でゴールドキング公爵家を招いた茶会が開かれた。ペリドットがふんだんに使われた華やかな装飾が、邸内を美しく彩っていた。緑色の石が輝き、庭園の美しい花々と調和して、優雅な雰囲気を醸し出していた。


茶会の準備が整い、レッドナイト公爵夫妻とその子供たちはゲストを迎えるために玄関ホールに立っていた。玄関が開かれ、ゴールドキング公爵家の家族が姿を現した。


ゴールドキング公爵夫人は完成された人形のような佇まいで、まるで絵画から抜け出してきたかのようだった。彼女の銀色の髪が優雅に揺れ、その髪色から彼女がシルバークイーン家出身であることが一目でわかった。


「ようこそ、レッドナイト公爵家へ。」ユリドレが静かに挨拶を交わすと、ゴールドキング公爵も微笑みながら応じた。


「お招きいただき、感謝いたします。今日はメアルーシュ様とエルレナのための特別なお茶会ですね。」


メアルーシュとエルレナも一緒に挨拶をし、二人の間には緊張感が漂っていた。しかし、エルレナはメアルーシュの存在に心強さを感じているようだった。


「どうぞ、お入りください。」メイが優雅に手を差し出し、ゴールドキング家の家族を邸内に案内した。


茶会が始まると、庭園の美しい景色を眺めながら、大人たちは様々な会話を交わしていた。ペリドットの輝きがテーブルを照らし、穏やかな時間が流れていた。しかし、その穏やかさの裏で、エルレナは心の中で恐怖と戦っていた。彼女は脅えを必死で隠し、心を殺すようにして平静を保とうとしていた。


メアルーシュはエルレナを見て、名前を呟いた。「エルレナ…。」


「この子ったら、ずっとこの調子で、よほどエルレナさんを気に入ってしまっているのね。」とメイシールは微笑んで言った。


ゴールドキング公爵は、メアルーシュがまだ魔法にかかっていると信じ込み、ニヤリと微笑んだ。


エルレナの心は、名前を呼ばれるたびに乱れ、彼女の表情には緊張が浮かんでいた。「エルレナ…。」メアルーシュが再び名前を呼ぶと、エルレナは瞬間的に体をこわばらせた。その様子を見て、メイシールは心配そうに彼を見つめた。「どうしちゃったのかしら。」


「ハハハ、うちの娘が彼をすっかり骨抜きにしてしまったようだな。この調子では、公爵の仕事に支障が出るかもしれませんな。」


「確かに、エルレナの影響力は素晴らしいですね。」ユリドレは慎重に言葉を選びながら返答した。彼の目はメアルーシュの様子を鋭く観察していた。


「メアルーシュ様、エルレナと一緒に過ごす時間を増やしていただけると嬉しいですな。二人がもっと親しくなることを願っています。将来的に、二人が共に歩むことができるなら、それはとても素晴らしいことです。」


ユリドレはその言葉に対し、冷静に応じた。

「なるほど、二人が親しくなるのは良いことです。ですが、我々としても、彼らの自由な意思を尊重したいと思います。」


「もちろん、お互いの自由な意思は大切です。しかし、私たち家族としても、未来の安定を見据えていきたいと考えております。エルレナとメアルーシュが共に歩むことが確約されれば、両家にとって大きな安心となります。特に、メアルーシュ様が我が家に婿養子として迎え入れられれば、両家の絆はさらに強固なものとなるでしょう。どうでしょう、公爵、ここで一つ確約をいただければ、これ以上心強いことはありません。」ゴールドキング公爵は微笑みながら言った。


ユリドレは一瞬、表情を硬くしたが、すぐに冷静さを取り戻し、慎重な声で答えた。

「確かに、お互いの家が強固な絆で結ばれることは素晴らしいことです。しかし、息子の未来を決めるのは彼自身の意思です。我々が決めることではありません。」


ユリドレはメアルーシュに目を向け、彼の反応を待った。メアルーシュはまた「エルレナ…。」と呟いた。


その瞬間、エルレナの虚ろで儚げな眼に光が差し込み、意志を持って向かいに座るメアルーシュに手をかざした。彼女は静かに魔法を解く行動を始めた。


それを見たゴールドキング公爵は驚きと怒りが入り混じった声で叫んだ。


「何を!?」



メアルーシュはゆっくりと立ち上がり、冷静な声で言った。「婿養子ではなく、エルレナは我が家の嫁として迎えたいです。」


その言葉が放たれた瞬間、会場の空気が一瞬にして凍りついた。ユリドレはすかさず落ち着いた声で続けた。「公爵、これは二人の強い意思です。彼らの選択を尊重し、我々も良好な関係を築くことを望みます。」


ユリドレの表情には、満足げな笑みが浮かんでいた。それに対し、ゴールドキング公爵は一瞬言葉を失い、顔色が変わるのがはっきりと分かった。彼の表情には、心底やられたという色が浮かんでいた。


ユリドレはその瞬間を逃さず、とどめをさすように言った。


「公爵、エルレナ様が我が家の一員になることは、両家の絆をさらに強固にするでしょう。未来のために、この決断が最善です。」


その一言が、まるで最後の一撃のように響き、ゴールドキング公爵は完全に言葉を失った。


ユリドレの言葉がまるで最後の一撃のように響き、ゴールドキング公爵は完全に言葉を失った。その瞬間、怒りに満ちたゴールドキング公爵はテーブルをバンッと叩き、激しい衝撃でテーブルが割れてしまった。


「何を考えているのか、貴様ら!」公爵は怒りを抑えきれずに叫んだ。


ユリドレは冷静なまま微笑みを崩さずに言った。

「公爵、感情的になる必要はありません。レッドナイト公爵家の嫡男として、メアルーシュが選んだことです。彼の選択を尊重していただきたい。」


その言葉は公爵の怒りをさらに煽るかのように響き、彼は拳を握り締めた。「もう我慢ならん!!生かしておけんな!!」と叫び、雷を呼んでユリに攻撃しようとした。


ユリドレは瞬時に指示を飛ばした。

「ルー、お母さんとエルレナ様を守れ。ゼノ、白魔石を使って公爵邸に結界を張れ。」


ルーはすぐに行動に移り、メイシールとエルレナの前に立ちふさがった。彼の表情は真剣で、決意に満ちていた。その瞳には冷静さと鋭さが宿っていた。


「安心して、母さん。エルレナ、ここからは俺が守るよ。」ルーはしっかりとした声で言い、両腕を広げて二人を覆うように立った。彼の小さな体が大きな盾となり、周囲の緊張感をさらに高めた。


メイシールは優しくエルレナの肩に手を置き、穏やかな声で言った。

「エルレナ様、そんなこと言わないでください。あなたは何も悪くないです。大丈夫、私たちがいますから。何があっても、あなたを守りますよ。」


エルレナは涙をこらえながら、メイシールの言葉に少しずつ安心を感じ始めた。

「でも…私がいなければ…」


「いいえ、エルレナ。あなたは強い子よ。だって、ルーにかかっている魔法を解いたじゃない。」メイシールはエルレナの手をしっかりと握り、優しい微笑みを浮かべた。


エルレナはメイシールの温かい言葉に涙を流しながら、少しずつ心を落ち着けていった。

「ありがとうございます…レッドナイト公爵夫人…」


一方、ユリドレは冷静なまま戦闘態勢に入った。「公爵、この戦いは避けられないようだな。」


「お前に息子を渡すくらいなら、俺の手で消してやる!」ゴールドキング公爵の怒声が響き渡り、彼の手から雷が放たれた。


ユリドレはすばやく反応して雷を避けたが、次の瞬間、ゴールドキング公爵の強烈なパンチが彼の腹部に直撃し、ユリドレは吹き飛ばされた。しかし、彼はすぐに体勢を立て直し、再び公爵に向き合った。


「公爵、これ以上の争いは無益です。どうか、冷静になってください。」ユリドレは説得を試みたが、公爵の怒りは収まらなかった。


「これで終わりではない!」ゴールドキング公爵の顔が怒りと憎しみに歪み、雷を再び呼び寄せる。その手から放たれた雷光が、まるで生き物のようにユリドレに向かって奔った。


ユリドレは瞬時に反応し、足を踏み込んで一歩横に避けた。その動きは流れるようでありながら、確実に公爵の攻撃をかわしていた。雷光が地面に直撃し、爆発音とともに砂煙が舞い上がる。

読んで下さってありがとうございます!

お手数かけますが、イイネやブクマをいただけたら幸いです。モチベに繋がります( *´艸`)

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