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73p

ゴールドキング領への道は広く美しく整備されており、私たちを歓迎するかのように花々が咲き誇っていた。特にゴールドキング領の誇る薔薇園は見事で、色とりどりの薔薇が風に揺れ、その香りが周囲に漂っていた。ゴールドキング公爵の屋敷に向かう途中、その圧倒的な美しさに私たちはしばし見とれていた。


馬車の中では、ユフィが興奮して窓から顔を出し、「あれ見て、あれ!すごい薔薇がいっぱい!」と叫びながら騒いでいた。彼女の活発な声が車内に響き渡り、そのエネルギーに満ちた様子は愛らしかったが、少し騒がしさもあった。レイは家でミレーヌとゼノに見てもらっている。


ルーは妹をなだめようと、一生懸命にユフィの肩に手を置きながら言った。

「ユフィ、もう少し静かに。レディだからね。」


「でも、おにーちゃん!薔薇いっぱい!見て、あそこにも!」

ユフィは興奮を抑えきれず、窓から外を指さした。


「わかるよ、ユフィ。だけど、落ち着いて見るともっと楽しめるんだよ。ほら、座って落ち着いて。」

ルーは優しく微笑みながら、ユフィの手を取って自分の隣に座らせた。


「うん、わかった。」ユフィは少し落ち着きを取り戻し、ルーに従って席に座り直した。


ユリはその光景を見て、優しく微笑んだ。

「ルーがいてくれて助かりますね。」


「父さんが瞬間移動を止める理由が分かったよ。ゴールドキング領はあまりにも栄え過ぎてる。というか、ただの子供の集まりにどうして領地まで行かないといけないわけ?」


ユリは笑いながら答えた。「言ってることがめちゃくちゃだな。ルー、ゴールドキングといえば壮大な花の庭園だろ?王都のゴールドキング邸はここに比べれば劣るんだ。ここでしか見られない美しい薔薇園があるんだよ。」


「そうか…」ルーは納得したように頷き、外の景色に目を向けた。彼もこの特別な場所に来たことを少し嬉しく感じているようだった。


ふと、ルーはユリの顔を見上げて問いかけた。

「そういえば、父さんって、いつもの仏頂面はやめたわけ?」


ユリは驚いたように目を見開き、次に微笑んだ。

「そう言われてみれば、最近は少し緩んでいるかもしれないな。もう誰かを威嚇する必要がないからな。」


「本当に?いつも真面目で堅い感じだったから、ちょっとびっくりだよ。」

ルーは冗談めかして言いながらも、少し嬉しそうに微笑んだ。


「こんなに幸せなのに、あの顔を維持するのは難しいよ。」ユリはルーの頭を軽く撫でた。


「そうよね。私と出会ってから、何度か顔を緩ませてたわよね。ずっと我慢してたものね。」


ユリは少し照れたように微笑み返し、「確かにそうですね。メイと一緒にいると、どうしても顔がほころんでしまいます。」と答えた。


「全く、すぐにイチャつく。」ルーが呆れたように言った。


「ごめんね、ルー。こればかりはどうしようもないわ。」私は笑いながら答えた。


ユリも笑い、「そうだな。メイがいると、自然とこうなるんだ。」と言い、私の手を優しく握った。


ルーは肩をすくめながらも微笑んで、「まあ、二人が幸せならそれでいいけどね。でも、あんまり見せつけないでよ。」と冗談交じりに言った。


「気をつけるよ、ルー。」ユリは笑いながら答えた。「でも、時々は許してくれ。」


「いいよ、父さん。ちょっとだけならね。」ルーは笑顔で応じた。


ゴールドキング領に到着すると、豪華な門が開かれ、執事たちが礼儀正しく私たちを迎えてくれた。広大な庭園には色とりどりの花が咲き乱れ、特に薔薇園は圧巻だった。澄んだ空と薔薇の香りが一体となった風景は息を呑むほど美しく、まるで夢の中にいるようだった。


「ようこそ、レッドナイト公爵夫妻。そしてメアルーシュ様。ユーフィリア様。」


ゴールドキング公爵が微笑みながら迎えてくれた。彼の姿はライオンのように堂々としており、その威厳とオーラに圧倒される。


「お招きいただきありがとうございます。」ユリが礼儀正しく応じた。


「今日は皆さんに楽しんでいただけるよう、準備を整えております。どうぞごゆっくりお過ごしください。」ゴールドキング公爵は私たちに一礼し、娘を紹介した。「こちらは私の娘、エルレナです。どうか仲良くしてやってください。」


エルレナは金髪で紫色の瞳を持ち、とてもお淑やかで清楚な7歳の少女だった。彼女は優雅にお辞儀をし、美しい微笑みを浮かべて挨拶した。

「メアルーシュ様、今日はご一緒できて嬉しいです。どうぞお楽しみください。」


ルーは少し冷めた表情で応じた。

「エルレナさん、よろしくお願いします。」その態度は落ち着いており、余裕すら感じさせた。


「どうぞ、庭園の方へ。」

ゴールドキング公爵が案内し、私たちは美しい薔薇園の中を歩き始めた。


《おかしいな…公爵自ら出迎えなんて…。》ルーのテレパシーが私の心に届く。


《確かに。ルー気を付けてね。》


《気をつけておくよ。》


エルレナはルーの隣で、優雅に歩きながら話しかけた。

「メアルーシュ様、薔薇の花がお好きですか?」


「ええ、好きです。こんなにたくさんの薔薇を見るのは初めてです。」ルーは無表情のまま答えた。


エルレナは微笑み、「この庭園は父が特に力を入れている場所なんです。楽しんでいただけて嬉しいです。」と話した。


ルーは淡々とした口調で、「そうですか。それは素晴らしいことですね。」と返した。


私たちが庭園を歩く間、ユリが私に小声で囁いた。

「ルーが警戒しているのも無理はない。公爵が直接迎えに来るのは確かに異常だ。」


「ええ。何か計画があるのかもしれないわ。」


会場にはたくさんの子供たちが集まり、笑顔と歓声が飛び交っていた。色とりどりの服に身を包んだ子供たちは、庭園のあちこちで遊びまわり、楽しそうにおしゃべりをしている。


しかし、エルレナはルーから離れようとせず、常にその隣に寄り添っていた。7歳にしては饒舌であり、相当な教育を受けているのが見て取れる。


「メアルーシュ様、こちらの薔薇は特別な品種でして、父が特にお気に入りなんです。」エルレナは微笑みながら話し続けた。「お手入れも毎日欠かさず行われているんですよ。」


ルーは冷静な表情で応じた。

「そうなんですね。お手入れが行き届いているのがよくわかります。」


私は少し離れた場所で二人の様子を見守りながら、ユリに囁いた。

「エルレナさん、ルーから離れないわね。彼女、本当に賢そう。」


ユリは小さく頷いた。「ええ。あの年齢であれだけの会話ができるのは相当な教育の賜物ですね。ですが、それが逆に不自然さを感じさせますね。」


「彼女がルーに特別な興味を持っているのかしら。」私は少し心配そうに言った。


「かもしれない。でも、ルーも冷静に対処しているようだ。」ユリは私を安心させるように微笑んだ。


その時、ゴールドキング公爵が再び私たちに近づいてきた。

「どうです、楽しんでいただけていますか?」


「ええ、とても素晴らしい庭園です。」私は礼儀正しく答えた。


「それは何よりです。メアルーシュ様、エルレナと仲良くしてくださってありがとうございます。」公爵は優雅に一礼した。


「いえ、おかげさまで楽しい時間を過ごしています。」ルーは冷静なまま答えた。


エルレナは微笑みを浮かべ、「メアルーシュ様、他にもたくさんの素晴らしい場所があるので、ぜひご一緒にご案内させてください。」と言い、ルーの手を取った。


ルーは少し驚いた様子を見せたが、そのままエルレナに導かれていった。


「ルー、大丈夫かしら。」私は心配そうにユリに尋ねた。


「まぁ、ルーは大人ですから大丈夫ですよ。俺たちも見守りながら、少し楽しむとしましょう。」


その後、ゴールドキング公爵は再び私たちのもとに戻ってきた。彼の笑顔は温かく、しかしその背後には何かを秘めているような雰囲気が漂っていた。

読んで下さってありがとうございます!

お手数かけますが、イイネやブクマをいただけたら幸いです。モチベに繋がります( *´艸`)

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