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そして、数日後の夜。私とユリはベッドの上にいた。静かな夜の空気の中、二人だけの時間を楽しんでいた。肌に触れるシーツの感触が心地よく、互いの温もりを感じながら、静かに語り合うひとときだった。
ユリは私の肩に軽く腕を回し、私の髪に指を通した。
「次はユフィですね。なんだか回帰前よりも時間が過ぎるのが早い気がします。」
「そうね。この時期って大変だったわよね。」
私はユリの胸に顔を埋めながら、懐かしさに浸った。
ユリは少し微笑みを浮かべながら、私の頬にそっと触れた。
「一時でもメイのことを忘れてしまった自分を後で殺したくなりましたが、あの時…そんなことを考えられないほどメイが魅力的な眼差しを向けてくれていたので、どうにか堪えることができました。」
「ユリ…」私は彼の言葉に胸が熱くなり、彼の顔を見つめた。
ユリは私の頬に優しくキスをし、そのまま耳元で囁いた。
「はぁ…魅力的過ぎる…。どんな姿であっても愛おしいです。」
「そういえば不思議に思ってたことがあるの。」
「ん?なんですか?」
「その、もちろん私はこれ以上ないってくらい幸せなんだけど、私とユリって実際はとても長い時間一緒にいるじゃない?どうして変わらずに…それどころか増してるような気さえするのだけど…。えっと…。」
「俺がどうしてメイに興奮するのかを知りたいのですか?」
う…流石長年寄り添ってくれてる夫ね。
「そう…。」
「俺の予想では…70手前くらいが最後になるかと思うのですが、その時、メイを愛しながら語るとしましょう。」
「70歳!?え!?それまで私を抱き続ける気?」
「はい、そのつもりです。」
「腰が悪くなっちゃうわよ…?」
「鍛えます。なので、メイも鍛えましょう。」
「私も!?しかもその為に!?」
お互いに顔を見合わせて笑ってしまう。彼の真剣な表情と冗談めかした言葉に、心が温かくなる。
「ユリ、本当に…あなたって…狂ってるわね。私はそういうユリも好き。…って私も狂ってるわね。」
ユリは私をぎゅっと抱きしめ、優しく囁いた。
「メイ、アナタがいるからこそ、俺は生きていけるんです。アナタを愛することが、俺の存在理由ですから。」
その言葉に、私の胸はさらに熱くなった。彼の愛がこれほどまでに深いことを、改めて実感した。
「何度言われても嬉しい言葉だわ。」
「俺にはメイしかいないように、メイにも俺しかいません…。もう逃げられませんね。」
なんだか不思議とずっとそう願ってしまう自分がいた。絶対に逃げられない鎖で一生繋がれていたいなんてユリに言ったら、また暴走させてしまうわね。私も60歳になるまで秘密にしておかなきゃね。
こうして、私たちはお互いの愛を再確認しながら、穏やかな夜を過ごした。どれほどの時が流れても、私たちの絆はますます強くなるばかりだった。
―――――――
――――
そしてそこからさらに5年の月日がたった。
私は18歳になり、ユリは28歳になっていた。私たちの家族も成長し、メアルーシュは6歳になり、無事に生まれて来たユフィは4歳になっていた。さらに、新しい家族の一員として次男のユーレイシアが加わった。
ユーレイシアはまだ1歳になったばかりだが、その愛らしい笑顔と純真さで家族全員を魅了していた。家の中は子供たちの笑い声と足音で賑わい、幸せに満ちていた。
そして今日、私は久しぶりに社交の場へ出ることになった。5年間で私はルーに瞬間移動を学び、どこへでも移動できるようになった。
もっと早く習得していれば、もっと早くユリに私がどこにも逃げない意思を、彼が安心できるくらい伝えておけばよかったと後悔していた。私が瞬間移動を学べなかったのは、ユリが自分から逃げていくかもしれないと恐れ、それでルーに厳しく禁止させていたからだと知ったのだ。
私は窓の外を見ながら、その思いに浸った。ユリの愛が私を守るためのものであったことを理解していたが、その結果として招いた死に、少しだけ胸が痛んだ。
ユリが近づいてきて、私の肩に手を置いた。
「メイ、お願いできますか?」
「えぇ、行きましょう。」
瞬間移動のために、私とユリは手を取り合った。次の瞬間、私たちはもともと領地に運ばせてあった豪華な馬車の中に移動していた。馬車の中は落ち着いた雰囲気で、シルクのクッションが並び、柔らかな光が差し込んでいた。
「良いアイデアでしょう?」
「そうね。」
馬車が目的地に到着すると、窓から広がる風景が私の目に飛び込んできた。淡水に囲まれた美しい土地が広がり、青い空と澄んだ水面が一体となって、まるで夢のような光景だった。
「ここは本当に美しい場所ね。」私は感嘆の声を漏らした。
「そうだね。シルバークイーン領はいつ来ても驚かされる。」ユリは窓の外を見ながら頷いた。
馬車が止まり、私たちはゆっくりと外に出た。シルバークイーン家の執事が迎えに来ており、彼は私たちに礼儀正しく挨拶をした。
「レッドナイト公爵ご夫妻、ようこそお越しくださいました。」執事は深くお辞儀をして迎えてくれた。
「ありがとうございます。お招きに感謝します。」ユリが礼儀正しく返事をし、私も微笑みながら頷いた。
執事に案内され、私たちは船上パーティーの会場へ向かった。そこには広大な淡水に囲まれたシルバークイーン領の美しい景色が広がっていた。澄み切った空が水面に映り込み、一体となった風景はまるで絵画の中に迷い込んだかのようだった。淡い光が水面に反射し、キラキラと輝く様は幻想的で、息を呑むほどの美しさだった。
「メイ、この景色を一緒に眺められることに、シルバークイーン家には感謝しないとね。」ユリは私の手を優しく握り、穏やかな笑顔を浮かべた。
「本当に美しいわ。まるで夢の中にいるみたい。」
私は彼の手をしっかりと握り返し、目の前の景色に心を奪われた。水面には緑豊かな木々が映り込み、その中を優雅に泳ぐ白鳥の姿が見えた。静かな波がさざなみを立て、まるで絵筆で描かれたような風景が広がっていた。
船上パーティーの会場は豪華で華やかな装飾が施され、煌びやかなシャンデリアが輝いていた。ゲストたちが集まり、談笑している様子が見える。久しぶりの社交の場に、少し緊張しながらも、ユリの支えが私を力強く支えてくれているのを感じた。
シルバークイーン侯爵夫妻が私たちに気付き、笑顔で迎えてくれた。
「メイ、ユリ!お久しぶりね。お元気そうで何よりですわ。」
「久しぶりね。お招きいただいてありがとうございます。」
私は彼女の手を取り、感謝の気持ちを伝えた。
「こうしてまた一緒に時間を過ごせるなんて、本当に嬉しいわ。」
侯爵夫人は目を輝かせながら言った。
「こちらこそ、長い間ご無沙汰してしまってごめんなさい。妊娠が続いていて、なかなか外出が難しかったんです。」私は微笑みながら説明した。
「そんなこと気にしないで、メイ。無事に元気なお子さんたちが生まれてくることが一番大事なんだから。」侯爵夫人は優しく笑って、私の手を軽く握った。「今日は一緒に楽しみましょう。」
「俺たちもだよ。シルバークイーン領の美しさはいつ来ても驚かされる。」ユリも微笑んで答えた。
しばらくシルバークイーン侯爵夫妻との会話は尽きることなく、再会の喜びを分かち合った。
その後、私たちは会場を歩きながら、他のゲストたちとも挨拶を交わしていった。シルバークイーン侯爵家の船上パーティーは華やかで、貴族たちの笑顔と笑い声があちこちで聞こえてきた。
その時、遠くからゴールドキング公爵がこちらに歩いてくるのが見えた。彼はまるでライオンのように堂々としていて、図体も大きく、その圧倒的なオーラに思わず息を呑んだ。
「レッドナイト公爵ご夫妻、お久しぶりです。」ゴールドキング公爵は重厚な声で丁寧に頭を下げた。
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