70p
月日はあっという間に過ぎ去り、季節が巡るたびに、私たちの絆はこれ以上深まりようがないほどの親密さを感じていた。ユリと私は、共に笑い、共に涙を流し、共に困難を乗り越えてきた。二人で作り上げた生活は、日々の小さな幸せの積み重ねだった。
ある日の昼下がり、私たちは庭で穏やかな時間を過ごしていた。風に揺れる木々の音を聞きながら、ユリがふと私に言った。「メイ、気づけばもうルーが生まれて2年が経ったんですね。」
「本当に。あっという間だったわ。」私は微笑みながら、過去の出来事を思い返していた。
「この2年間、無事に過ごせたことが奇跡ですね。」
「そうね。本当に色々あったもの。」
ふとユリは懐中時計をポケットから取り出して時間を確認した。
「そろそろですね。」
「そうね…ルーの鎖が増えてませんように…。」
二人は祈っていた。子供たちを置いてきてしまった人生で、メアルーシュが殺されていないかどうかを。もし、殺されてしまったのなら鎖が1つ追加されてしまうはずだと予想していた。
ちょうど今は、私が家出をして、ユリに殺されかけたところをルーが大声を出して止めてくれた時期だった。その瞬間が再び訪れるかどうか、私たちの心は緊張に包まれていた。
ルーはミレーヌに抱っこされながら、パパとママをずっと繰り返し呟いていた。そして、ついに時間がきた。
「…っ!?‥‥どこ?」突然、ルーの様子がおかしくなった。彼はキョロキョロとあたりを見回し、不安そうな表情を浮かべていた。明らかに何かが変わったことに気付いたのだ。
ミレーヌもすぐに異変に気付いて、急いで私にルーを渡した。
「若奥様、ルー様が…」
私はルーを抱きしめ、彼の顔を覗き込んだ。
「ルー、どうしたの?何が見えるの?」
ルーの目は焦点を定められずに彷徨っていたが、やがて私の顔に視線を固定した。「母さん…父さん…どこ?」
「ここよ、ルー。ママはここにいるわ。」私は彼の手を握りしめ、落ち着かせようと優しく囁いた。
ユリもすぐに駆け寄り、ルーの足首を確認した。その瞬間、ユリの顔が青ざめた。鎖が1つ増えていたのだ。
「メイ…鎖が…」ユリの声は震えていた。
私はルーの足首を見て、言葉を失った。鎖が1つ増えているということは、ルーが過去に何か重大なことを経験した証拠だった。
「ルー…一体何があったの?」私は恐る恐る問いかけた。
ルーは私の顔を見つめ、そしてユリの方に視線を移した。
「父さん…母さん…俺…ごめんなさい…っ、ごめんなさいっ!!」突然泣き出した。
その瞬間、私の胸に鋭い痛みが走った。私もユリも、回帰後の辛さは痛いほど理解できた。ルーがどれほどの苦しみを抱えていたのか、その涙が物語っていた。
「ルー、泣かないで。何も悪くないわ。」
私は彼を強く抱きしめ、背中を優しく撫でた。
ユリもその場に膝をつき、ルーの肩に手を置いた。
「ルー、君は何も悪くない。全部、俺たちが守ってあげられなかったせいだ。」
「でも…俺、怖くて…どうしていいか分からなくて…」
ルーは嗚咽を漏らしながら、必死に言葉を紡いだ。
「ルー、今回は父さんも記憶がある。何があったんだ?」ユリはルーの目を見つめ、静かに語りかけた。
「うっ……守れなかった。…俺がユフィを甘やかして育てたせいだ。」
ルーは涙を拭いながら、苦しそうに話し始めた。
私とユリは顔を見合わせた。
「どういうことだ?」ユリが問いかける。
「ユフィが、稀代の悪女になっちゃって…俺もユフィの願いを全部叶えてあげたくて…結局最後は一家処刑になっちゃった…。」ルーの声は震えていた。
その言葉に、私たちは息を呑んだ。ユフィがそんな道を歩んでしまうとは想像もしていなかった。
「ルー、それは君のせいじゃない。ユフィの性格がどうであれ、彼女を愛し、守りたいと思った君の気持ちは間違っていない。」ユリは静かに言いながら、ルーの肩を優しく叩いた。
「でも、俺がもっとしっかりしていれば…こんなことにはならなかったかもしれない。それに…母さんと父さんが必死に守って生まれた弟も無駄な死を…」ルーは悔しさを滲ませながら言った。
「ルー、今回の人生ではアナタ一人に全部を背負わせるつもりはないわ。」私は強い決意を込めて言った。
「あぁ、その通りだ。俺たちはそのための準備をしてきた。そしてこれからもだ。もう誰も俺たちを邪魔する輩はいないはずだ。」ユリも同意し、力強く頷いた。
ルーは驚いた表情で私たちを見つめた。
「…え?二人は…どれくらい前からここに来たの?」
「だいたい14年ほど前だな。」
「ルー、私の回帰地点が変わったおかげで、多くの人の命が救われてるわ。そしてディッケルも生まれてるの。」
ルーの表情に少しずつ理解と安堵の色が広がっていった。
「本当に…そうなんだね…。ありがとう、父さん、母さん。」
「ごめんなさいね…。でも、またルーと会えて嬉しいわ。本当に置いていってしまってごめんなさい…。」
「自分勝手な父さんでごめんな…ルー。」
ルーは涙を浮かべながらも、少しずつ微笑みを取り戻していった。
「本当だよ…。でも、ありがとう、父さん、母さん。」
――――――――
―――――
それからルーが加わり、私たちの生活はさらに賑やかになった。ユリは相変わらず忙しい日々を過ごしていたが、ルーとの時間を大切にし、彼との絆を深めていた。
ある日、ルーがユリに相談を持ちかけた。
「父さん、透明化を教えて欲しいんだけど…。その…タトゥーはあるのに、全く使えないんだ。透明化してる人を見ることはできるけど。」
ユリは少し驚いた表情で答えた。「え?誰にも教わらなかったのか?ゼノにも。」
ルーは首を振った。
「うん。ユフィが口うるさいゼノを嫌がるから領地へ行ってもらってて、中々会えなかったんだ。」
ユリは珍しく開いた口が塞がらないくらいに驚いていた。
「いったいどうやったらゼノにそんな仕打ちができるんだ。」と溜息をついた。
近くにいたゼノはその会話を聞いても表情一つ変えずにユリの側に控えていた。
「ゼノ、この先追い出されても追い出されるな。いいな?」ユリは真剣な表情でゼノに指示を出した。
「…?承知致しました。」ゼノは少し困惑した表情を浮かべながらも、きちんと答えた。
「良いだろう。透明化自体は簡単だ。簡単過ぎて思いつかなかったんだろうな。ルーは賢いからな。」ユリは微笑みながら説明を始めた。
「?それってどういう意味?」ルーは首をかしげた。
「火は出せるな?それと同じ要領で魔力をタトゥーのある位置に出すように力を込めろ。ただ、それだけだ。」
「へ?…力を…。」ルーは戸惑いながらも、ユリの言葉に従って集中した。
ルーが魔力をタトゥーの位置に集中させると、タトゥーが輝き始め、その光がルーの体全体に広がった。すると、ルーの皮膚が徐々に透明になっていった。しかし、髪の毛と服はそのまま残っており、不思議な光景が広がった。
「はっ…ははっ。ゼノ、鏡を見せてやれ。面白すぎる。」ユリは笑いながらゼノに指示した。
ゼノは無言で鏡を持ってきて、ルーの前に差し出した。ルーは鏡に映った自分の姿を見て、驚きと笑いを抑えきれなかった。
「わぁ…これ、なんだか変だね。でも、すごい!本当に透明になった!」
ルーは興奮しながら自分の姿を見つめた。
ユリは微笑みながら言った。
「そうだ。髪の毛や服も透明にするには、さらに魔力をコントロールする必要がある。でも、ルーならきっとできる。」
「うん、やってみる!」
こうして、ルーは透明化の術を学び、少しずつその能力を完全にマスターしていった。
書いてて気づいたのですが、キャラの年齢が私の頭の中の処理が追い付いておらず、ちゃんと歳をとれてない箇所がありそうです。なんとかみつけだしてそのうち訂正します;
ここまで読んで下さってありがとうございます!
お手数かけますが、イイネやブクマをいただけたら幸いです。モチベに繋がります( *´艸`)