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グリーンルーク辺境伯夫人主催のお茶会当日が訪れた。朝早く、私たちはユリドレと共に馬車に乗り込み、グリーンルーク領へと向かった。緊張と不安が胸に広がる中、ユリドレとゼノは黒いボディースーツを着用し、透明化の能力を使って私の側で護衛に徹してくれることになった。


馬車の中で、私は手を握りしめ、心を落ち着けようとした。「ユリ、大丈夫よね?」不安が募る私の声が震えていた。


隣に座るユリが私を抱き上げ、膝の上に乗せた。その温もりが私の不安を少しずつ和らげていく。「メイ、今は俺の温もりだけ感じてください…。お腹の子にも触れます。」彼の手が優しく私のお腹に触れ、その温もりが心に染み渡った。


もうすぐ臨月がくる。もう少しなのに…。ダメ、今はユリの温もりだけを感じないと…。私は彼の胸に顔を埋め、心を落ち着けるように深呼吸をした。


ルーとユフィは狙われやすい王都の家ではなく、公爵領でシリルお兄様の側にいてもらうことにした。あそこは要塞のようになっていて、一番安心だ。


馬車がグリーンルーク領に到着すると、美しい庭園と壮麗な邸宅が迎えてくれたが、その美しさの裏に潜む不安を感じずにはいられなかった。使用人たちが私たちを案内し、グリーンルーク家の当主と夫人が笑顔で迎えてくれた。


「ようこそ、レッドナイト公爵夫人。お越しいただき光栄です。」辺境伯夫人は上品な微笑みを浮かべていた。


「招待ありがとうございます。こちらこそ、お招きいただき光栄です。」私は微笑みを返しながら、心の中で警戒心を強めた。


お茶会が始まり、庭園の一角に設けられた美しいテーブルには、見たことのない顔ぶれが揃っていた。分家の人々やあまり見かけない人たちばかりで、余計に不安が募った。


《母さん!!こっちにグリーンルーク家らしき女の人が攻めてきた!!母さん気を付けて!!!》


突然、ルーのテレパシーが頭に響いた。


《ルー!?でも、今、目の前に令嬢はいるわ!!》

《父さんにもテレパシーで伝えるね!》


「メイ、あっちで能力を使ったということは、恐らく目の前のご令嬢は偽物な可能性が高いです。」ユリの声が再び耳元に響く。


《そんな…でも、そんなことって可能なの?異国の技術がないと無理じゃない?》


「俺もこれは予想外です…。」



「レッドナイト公爵夫人、今日はお越しいただきありがとうございます。」グリーンルーク家の令嬢が微笑みながら声をかけてきたが、その瞳には冷たい光が宿っていた。


「こちらこそ、招待していただき光栄です。」私は微笑みを返しながらも、心の中で警戒を強めた。


お茶会が進む中、形式的な会話が交わされ、和やかな雰囲気が漂っていたが、その裏に緊張が張り詰めているのを感じた。私の周囲には透明化したユリとゼノが密かに護衛をしてくれている。


ふと、私の視線がグリーンルーク家の令嬢に向いた。彼女は微笑みながらも、その目には鋭い観察力が宿っていた。彼女の視線が私に向けられた瞬間、私は背筋が凍るような感覚を覚えた。


「夫人、最近のご様子はいかがですか?」辺境伯夫人が微笑みながら尋ねてきた。


「おかげさまで順調です。」私は微笑みを返しながらも、その背後に潜む意図を探ろうとした。


ユリの声が再び耳元に響く。「夫人は何も知らないようです。ルーは今のところ撃退に成功しています。」


《良かった…。でも、あのご令嬢はいったい…。》


私はユリとゼノの存在に支えられながら、お茶会の進行を見守った。緊張感が漂う中で、私たちは一瞬たりとも警戒を怠らなかった。


お茶会が進むにつれ、形式的な話題から徐々に個人的な話題へと移っていった。辺境伯夫人が私に向かって微笑みながら言った。


「レッドナイト公爵夫人、ご家族の皆様もお元気でいらっしゃいますか?」


「ええ、おかげさまで皆元気に過ごしております。」


私は微笑みを返しながら答えたが、内心では警戒を強めていた。


「それは何よりです、先日のパーティーはとても素敵でしたね。」


「ありがとうございます。皆さんに楽しんでいただけて嬉しいです。」


周囲の会話が続く中で、私はふと目の前の令嬢に目をやった。彼女は相変わらず冷たい瞳で微笑んでいた。その微笑みの裏に隠された真意を知るために、私はさらに警戒を強めた。


「夫人、先日のパーティーで感じたのですが、お子様方もとても素晴らしいですね。」

「ありがとうございます。彼らは私たちの誇りです。」

「特に、メアルーシュ様は非常に才能があるとお聞きしました。どのように育てられたのでしょうか?」

「ルーは自分の力で成長しました。私たちは彼を支えるだけです。」


その瞬間、耳元でユリの声が響いた。「メイ、令嬢が何かを企んでいるかもしれない。注意して。」

私は軽く頷き、周囲の様子をさらに観察した。緊張が高まる中、私は内心の不安を抑えながら会話を続けた。


「それは素晴らしいことですね。ところで、ご主人様もお元気でいらっしゃいますか?」


「ええ、ユリドレも元気にしております。」私は微笑みを返しながら答えたが、心の中では彼の安全を祈っていた。


やがて、お茶会が終わりに近づいた。辺境伯夫人が私に向かって微笑みながら言った。「今日はお越しいただき、本当にありがとうございました。またお会いできることを楽しみにしております。」


「こちらこそ、招待していただきありがとうございました。」私は丁寧に礼を述べながら、内心では早くこの場を離れたいと思っていた。


馬車に乗り込み、レッドナイト領へと戻る準備をしていた。 その時、突然金属がぶつかる音が聞こえた。 驚いて振り返っても、何も見えなかった。


「若奥様、奇襲を受けています!!」急に聞こえたゼノの緊迫した声が私の心臓を鷲掴みにした。


「ここで!?どうして!?」 私の声は震えていた。 状況の把握が追いつかず、混乱と恐怖が入り混じる。


「私にも見えません!ですが、何かがいます…。」 ゼノの声も緊張で張り詰めていた。


「ゼノ!!!風で逃げろ!!」 ユリの叫ぶ声が私の耳に届いた。 瞬間、ゼノが私を横抱きにして風の力を使おうとしたが、次の瞬間、背後から何かに叩かれて膝をついてしまった。


「ゼノ!」私は叫びながら、必死にゼノの肩を支えた。 彼の顔は苦痛に歪んでいた。


「若奥様、何とか逃げないと…!」ゼノは息を切らしながら言った。


ユリはすぐに私たちの前に現れ、透明化を解除した。 彼の顔には緊張と怒りが浮かんでいた。


「メイ!…クソッ!!」


その時、私たちの前に姿を現したのは、白髪の長い髪をした黒いボディースーツを纏った女性だった。 ユリの母親だった。


「想像していなかったでしょう?できるはずもないわよねぇ?まさか…この私が関与しているなんてねぇ?ユリドレ。」 彼女の声には冷たい嘲笑が込められていた。


「お義母様!?そんなっ!」


「記憶を取り戻されたのですね…。」


「そうよ… よくもやってくれたわね… ユリ。」 彼女の目には怒りと復讐心が燃え盛っていた。


「俺がやったわけではありません。父上がやったことです。」


「言い訳は聞きたくないわ、ユリ。あなたも共犯者よ。」 ユリの母親の目には冷たい決意が宿っていた。


「母上、話し合いましょう。今ここで戦うのは得策ではありません。」


しかし、彼女の表情は変わらなかった。


「人避けはしてあるわ。ユリドレ随分幸せそうじゃない…。ふふふ…母さんがあなたの大切なものを壊してあげる。あなただけ幸せになるだなんて許されるはずがないですもの。そうでしょう?」 彼女は手を上げ、攻撃の準備を始めた。


その瞬間、激しい金属音が鳴り響いた。 剣が交わる音が空気を裂き、緊張感が一気に高まった。 ユリドレはすぐに剣を抜き、ユリの母親のを受け止めた。 火花が散り、戦闘が始まった。


「メイ、下がってください!」ユリドレが叫び、私を守るように前に出た。 彼の顔には緊張が浮かんでいた。


母親の攻撃は素早く、容赦なかった。 ユリドレは必死にその一撃一撃を受け止め、反撃の機会を窺った。 彼の動きは鋭く、だがユリの母親の攻撃は予想以上に強力だった。


激しい金属音が続く中、ゼノも戦闘に加わった。 彼の風の力で、敵の動きを封じ込めるように使われた。 しかし、お義母様はその風さえも利用し、攻撃を続けた。


「ゼノ、後ろから来る!」ユリドレが警告の声を上げ、ゼノは即座に反応し、攻撃を受け止めた。


ユリが一瞬私に目を向けたが、その隙を突いてユリの母親の攻撃が彼を狙った。 ユリドレは辛うじてその攻撃を避けたが、肩に浅い傷を負った。


「ユリ!」私は叫びながら、心配と恐怖で胸がいっぱいになった。 戦場の緊張感が私の心を締め付け、目の前の光景が信じられなかった。

読んで下さってありがとうございます!

お手数かけますが、イイネやブクマをいただけたら幸いです。モチベに繋がります( *´艸`)

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