表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/111

63p

パーティーから数日後、グリーンルーク家からのお茶会の招待状が届いた。その手紙を手に取った瞬間、私の胸には不穏な予感が広がった。封筒の装飾や筆跡は上品であったが、その内容がもたらす緊張感は明らかだった。


「ユリ、グリーンルーク家からお茶会の招待が来たわ。」


私は慎重に彼に告げながら、封筒を開けて内容を確認した。


ユリは書斎のデスクから顔を上げ、その目には警戒の色が浮かんでいた。


「…どういうつもりでしょうか…。ここで招待状が届くのはおかしすぎる。」


彼の声には不安と疑念が混じっていた。


私はユリの表情を見て、彼の心中の深い不安を感じ取った。お茶会に何を着ていくかを考えることさえ、今は心から楽しめなかった。心の中に、シリルお兄様との因縁が重くのしかかっていたからだ。


「そうね。」


私は静かに頷きながら、封筒を手の中で軽く撫でた。その手紙には表面的な礼儀が漂っていたが、その裏に隠された意図を見極めるのは容易ではなかった。


――お茶会ということは…私だけの参加ね。私の生誕パーティーでは普通なように見えたけど…。これは行くべきなのかしら…。


ユリは深く息を吸い込み、珍しく落ち込んだ表情で溜息をついた。


「俺はこの招待がどうしても純粋なものとは思えないです。彼らが何を企んでいるのか、俺にはまだ分かりませんが、兄君のことが関係しているのは間違いないです。」


彼の言葉に、私の胸はさらに重くなった。グリーンルーク家の令嬢とシリル兄の過去の因縁が、今もなお私たちの関係に影を落としていることを痛感した。ユリの不安と警戒が、私にも伝染してきた。


ユリの顔が少し青ざめていて、そんなユリを見るのは初めてだった。私は彼の手を握りしめ、その温もりで彼を少しでも安心させようとしたが、その震えを感じて胸が締め付けられた。彼の不安がこれほどまでに深刻だとは思わなかった。

ユリは深く息を吐き出し、その瞳にはいつもの冷静さが欠けていた。


「メイ、正直言って、今回は本当に心配です。グリーンルーク家が何を企んでいるのか、全く見当がつかない。行かせたくない…ですが、もし断ればそれがさらに大きな亀裂を生むかもしれない。例え事故を装ったとしても…厳しい状況になるのは変わりないでしょう。」


ユリは深く息を吐き出し、その瞳にはいつもの冷静さが欠けていた。


私も彼の不安を共有し始めた。ユリがここまで動揺することは滅多にない。それが逆に私の不安を増幅させた。


「…正直言って不安よ。でも、断ることが彼らの敵意をさらに煽る結果になりかねないとも思うの。」


ユリドレは深いため息をつき、額に手を当てて考え込んだ。


「こうならないように、ずっと見張りをつけて、工作員も潜入させて内部を探り続けていたんです。それなのに招待状が届くなんて、俺の知る限りではありえないことです。」


彼の言葉は重く、部屋の空気さえも張り詰めさせる。彼の声には苛立ちと無力感が滲んでいた。私は招待状をもう一度見つめ、疑念を深めた。


「この招待状…主催者が夫人になってるわ。令嬢が主催ではないところも変だわ。親子でお茶会なんて珍し過ぎるもの。」


ユリドレは私の言葉にうなずき、さらに顔を曇らせた。


「全てがおかしいのです。…完全な罠です。」


私は彼の顔を見つめ、何か言葉をかけようとしたが、うまく言葉が見つからなかった。


「ユリ…。」


ユリは深く息を吐き出し、低い声で囁いた。「メイ…行かないでください…。できるならアナタを閉じ込めてしまいたい。」


彼の言葉に驚き、私は彼の顔を見上げた。その瞳には本気の悲しみと恐れが浮かんでいた。「閉じ込められた先の未来は…?」私は小さな声で尋ねた。


「もちろん、死よりも辛い…闇でしかありません。」ユリドレは目を伏せ、唇を引き結んだ。「最初はメイだけで良かったんです…ですが、今ではルーやユフィ…それから…これから生まれてくる子供がいます。大切な人が増えてしまったので…。」


彼の声が震え、彼の心の重さが私にも伝わってきた。「ユリはどうするべきだと思う?」私は彼の目を見つめ、彼の決意を問いかけた。


ユリドレはしばらく黙っていたが、深い呼吸をしてから答えた。


「行くしかありません…。俺が全力で守ります。ゼノをつけるべきかどうかも悩んでいます。少なくともルーにはユフィを守ってもらわないといけないので留守番をさせるしかないでしょう。ミレーヌとゼノを分けたいです。後の護衛は全てつけるつもりです。」


彼の言葉に重みがあり、彼の決意が揺るぎないことを感じた。


「そうね…。ルーの瞬間移動の疲れ具合をみた感じ、人数が増えれば増えるほど魔力消費が激しいみたいだから、待機してもらってた方がいいわね。」


私は彼の計画に賛同しながらも、心の中で不安が広がっていくのを感じた。


ユリは頷きながら、再び深い溜息をついた。


「はい。…最悪のことばかり考えなければいけないなんて…情けないですね。」彼の声には悔しさと無力感が滲んでいた。彼の表情には、私を守りきれないかもしれないという恐れが浮かんでいた。


私は彼の顔を見つめ、深い悲しみと不安が胸に押し寄せた。


「ユリ、私…あなたと一緒なら…例え死んでも悔いは…悔いは…。」


言葉が詰まり、胸の奥からこみ上げてくる感情を抑えることができなかった。


私の目からポロポロと涙が溢れてきた。ユリは驚いた表情で私を見つめ、そっと私の頬に手を伸ばし、優しく涙を拭ってくれた。


「メイ…」


涙が止まらない。死んだらお腹の子はどうなるの?ユリや子供たちを置いていってしまったらどうしよう?そんな考えが頭を巡り、恐怖が私を支配し始めた。


「ユリ、私…」声が震え、涙声になってしまう。「もし私がいなくなったら、あなたや子供たちをどうすればいいのか分からないわ。お腹の子も…」


ユリは私をしっかりと抱きしめ、その温もりで私を包み込んだ。


「メイ、そんなことは考えなくていいです。メイも、子供たちも、俺が必ず守ります。どんなことがあっても、メイを失うことだけは絶対にしない。」


彼の力強い抱擁と決意に満ちた声が、少しずつ私の不安を和らげてくれた。


「ユリを信じてるわ…。」私は彼の胸にしがみつきながら、涙を拭い、深呼吸をした。


ユリは私の背中を優しく撫で、その手の動きに微かな震えが感じられた。彼の顔には不安と決意が交錯し、無理に作った笑顔が浮かんでいた。


その後、ユリは会議室へ行き、直属の部下たちを集めて茶会の対策会議を開くことにした。部屋に集まったのは、ユリの信頼する数名の部下たちだった。彼らは全員真剣な表情で、ユリの指示を待っていた。


「皆、集まったな。」ユリは深く息を吐き出し、真剣な表情で部下たちを見渡した。「グリーンルーク家からの茶会の招待が届いた。これは単なる社交の場ではなく、何か裏があると考えている。」


部屋の空気が一瞬で緊張に包まれた。部下たちはユリの言葉に集中し、彼の次の言葉を待っていた。


「今回の茶会は非常に危険だ。メイは必ず参加しなければならない。もちろん俺も能力を使って潜入しメイの側にいるが、最大限の警戒を。各自、以下の任務に従って行動してもらう。」


ユリは指示書を取り出し、一人一人に詳細な任務を伝え始めた。


「ゼノは俺と同じくメイの護衛を担当してくれ。常に彼女の側にいて、何かあれば即座に対応してほしい。ベティも頼む。他は周囲を頼む。」


ゼノとベティは無言で頷き、ユリの指示を受け取った。他の部下達も頷いた。


「ミレーヌ、君はルーの側に。」


ミレーヌは真剣な表情で頷いた。


「ルーにはユフィの護衛を頼む。彼の瞬間移動能力があれば、何かあったときに即座に対応できるだろう。」


ユリの言葉に、部下たちはそれぞれ自分の任務を理解し、心の中で覚悟を決めた。


「皆、今回の任務は非常に重要だ。失敗は許さん。頼んだぞ。」ユリは部下たちの顔を見渡した。


部下たちは一斉に応え、部屋を出ていった。ユリはその背中を静かに見送った。

皆さん、ここから辛いでしょうが、一緒に乗り越えましょう。書いてて一番辛いかも…。

読んで下さってありがとうございます!

お手数かけますが、イイネやブクマをいただけたら幸いです。モチベに繋がります( *´艸`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ