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「お前がやったことは、家族全員を危険に晒す行為だ!分かっているのか?」 ユリは荒々しく言葉を続けた。 「ディッケルを助けたこと自体は責めない。しかし、その結果、アジャールが我々を敵視することになる。 俺たちがどれだけ苦労して築き上げたものが一瞬で崩れ去るかもしれないんだぞ!」
ルーは俯き、拳を握りしめていた。 その目には後悔と決意が混じっていた。
「お前の行動一つで、家族全員の命が危険に晒されるんだ。俺たちはお前のことを信じているが、それには責任が伴う。 分かっているのか?」
「はい、父さん… 分かっています。」 ルーは静かに答えたが、その声には決意が感じられた。
ユリは深く息をつき、少しだけ落ち着きを取り戻したようだった。
「ルー、お前の気持ちは理解している。しかし、家族を守るためにはもっと慎重に行動しなければならない。 お前が大事だからこそ、これだけ厳しく言うんだ。」
ルーは頷き、「すみませんでした。これからはもっと気をつけます。」 と答えた。
ユリはルーの肩に手を置き、優しく言った。 「良いか、家族は一番大事だ。お前が何をしても、俺たちはお前を信じている。 だが、その信頼を裏切らないように、これからは一層の注意を払って行動してほしい。」
「はい、父さん。」ルーは真剣な表情で答えた。
その瞬間、ユリの顔に少しだけ微笑みが戻った。
「ふぅ…。さて、では、ディッケルを守りたいというお前の要望を聞こう。ディッケルを王位につかせたいのか?それとも平穏に生きているだけでいいのか?」
「生きているだけでいい。本当に友人だったんだ。」
ユリは考え込むように眉をひそめ、「なら、お前の側近として育てるのはどうだ?」と提案した。
ルーは少し驚いた表情を見せながらも、「それは… 大丈夫なの?」 と尋ねた。
「かなり危険だが将来的には安定するだろうな。その代わり、辛い幼少期を送ることになる。レッドナイト公爵家の訓練は厳しいからな。あの血筋の子供が耐えられるかどうかはわからん。」
「…ディッケルが生きられるなら…今はそれが一番だよね。」
「恐らくな。レッドナイト公爵領には火山が多い。王室側も誰も近づかない。近づこうとするのは、あのいけすかないシルバークイーンの奴らだけだ。」
ルーは再び頷き、「… お願いします。 ディッケルを生かしたいです。」 と強く言った。
ユリはその言葉に少し笑みを浮かべ、「本当に。お前は… 世話の焼ける息子だな。」 と呟いた。 その声には愛情と誇りが混じっていた。
「父さん…。」
「ただし、計画を実行するのは明日だ。今日は一旦お前が責任をもって面倒をみるように。」
「え?…う、うん。わかったよ。」
ユリは私に向かって微笑み、ルーに向けて続けた。
「父さんは今から母さんと大事な用事がある。さっさと行きなさい。」
ルーはユリがメイと二人きりの時間を持ちたいことを察し、少し寂しそうに言った。
「ん?父さん…なんか俺悲しいよ。」
ユリは笑顔で遠くを見るような表情をしながら、「ルー、父さんは察しの良い子供は好きじゃないな。」と軽く脅すように言った。
「うわ。最低だ。」ルーはうんざりした顔で呟いた。
「ん?父さんはディッケルを助けてあげようとしてるのに?」
ユリは笑顔でルーを睨みつけるように見た。
「いえ!父さんは最高です!じゃあ、失礼します!でも母さんの生誕パーティーのこと忘れないでよ!!」
ルーは慌てて敬礼するような仕草をし、急いで部屋を出て行った。
ユリは満足げに頷き、「よろしい。」と言った。
私はその様子を見て微笑みながら、「ユリ、本当にありがとう。」 と感謝の気持ちを込めて言った。
ユリは私を見つめ、その瞳に子犬のようなキラキラとした光を宿して、「さて、メイ。俺はちゃんと無理な願いを聞き入れました。 ご褒美を頂いてもいいですか?」 と言った。
その瞬間、私は驚きと共に笑いがこみ上げてきた。 あの仏頂面で眼力だけで人を殺してしまいそうな殺気も今は跡形もなく、ただ… 私を欲し、求める可愛い夫が目の前にいた。
「一応確認しておくけど、仕事は大丈夫なの?」
「はい。明日戻らなくても問題はありません。」
「なら、断る理由はないわね。」
私がそう言うと、ユリは得意げな笑みを浮かべて私を横抱きし、ベッドへと運んでくれた。彼の腕の中で感じる温もりと安心感に包まれながら、私は静かに彼に身を任せた。
ユリは私をそっとベッドに降ろしてくれた。
「もう…理性が保ちません…他には何もないですか?」
「えぇ…。私、寂しかった。毎日一緒にいて片時も離れていなかったのに、たった数週間一緒にいれないだけで、ずっと不安で、凄く胸が痛くて、夜眠るのも辛くて…。ユリもこんな気持ちになればいいのにくらいに思っちゃうほど…ユリが欲しかった。」
ユリはその言葉に目を見開いて驚き、すぐに顔を赤らめて切なそうな笑みを浮かべる。
「俺はもうずっと、その気持ちを患ってる。」
その言葉に、私の心は揺れ動いた。ユリの切ない表情が私の胸に深く刺さり、彼の愛情がどれほど深いものかを感じ取ることができた。
「ユリ…」
私は彼に手を伸ばし、頬に触れた。彼の温もりが私の指先に伝わり、安心感が広がっていく。
ユリは私の手に自分の手を絡めて、その目には愛しさが溢れていた。
「メイ、アナタがいないと俺は何もできない。アナタの存在が、俺にとっての全てです。」
「ねぇ、そろそろ…もう我慢しないで…。乱れるユリが見たい。」
ユリはそっと私を抱きしめ、優しく囁いた。
「ははっ…困ったな。今日はもう止まりません…からね…メイ。」
「うん…私が望んでる。」私は彼の胸に顔を埋め、彼の鼓動を感じながら答えた。
ユリは私の顔を見つめ、その目には強い情熱が宿っていた。
「じゃあ、今日はメイの望むままに…」
彼の言葉が終わる前に、私は彼の唇を奪った。ユリの体が少し震え、私たちの間にある熱が一気に高まった。
ユリの手が私の背中を撫で、私の体を引き寄せる。
「メイ…」ユリの声が低く、熱を帯びていた。「もう、本当に止められない…」
「うん…それがいいの。」私は彼の耳元で囁き、彼の首に腕を回した。
彼の唇が私の首筋に触れ、そのままゆっくりと下がっていく。私の心臓は早鐘のように打ち始め、全身に熱が広がっていくのを感じた。
「メイ…メイ…メイ…ハァ…ハァ…」ユリの声が低く、切なさが込められていた。彼の手は優しくも強く、私の体を包み込むように抱きしめてくれた。
「ユリ…」私は彼の名前を囁きながら、彼の肩に手を回し、さらに近くに引き寄せた。彼の温もりが私の心を満たし、安心感と幸福感が溢れ出していく。
ユリは私の顔を見つめ、その顔は狂気に染まり恍惚とした笑みを浮かべていた。
「俺のメイ…ハァ…ハァ…メイ…あぁ…メイ…。」
「んっ…。ユリっ…もっと…。」
その言葉に応えるように、ユリは私をさらに強く抱きしめた。彼の唇が再び私の唇に触れ、その瞬間、私たちの間に溢れる感情が一つになった。彼のキスは熱く、情熱的で、私の全てを包み込むようだった。
――ユリ…私ね。最近のユリの抱き方が好き。歳をとるごとに、段々と激しさを増していく感じが好き。私の幼い体に負担をかけないように、沢山気を使ってくれてたってわかる。
「愛してるって言葉じゃ、もう追いつかないわ…。」
そう呟いても、ユリは完全に暴走状態に入っており、ただひたすら私の名前を呼び続けながら、その手の動きが大胆になっていくのを感じた。ユリの呼吸が近づき、唇が重なると、私の体は自然と彼の動きに応えていった。
その夜、私たちは何度も何度も執拗に、心と体を重ねた。ユリの愛情が私を包み込み、私もまた彼に全てを委ねた。ユリの腕の中で感じる安心感と愛情が、私を包み込んでくれた。互いの欲を深く苦満たして、私たちは穏やかな夜を過ごした。
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