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38p

時間を少し遡り、水の竜巻の中で俺は突然記憶が戻った。父さんが必死に俺を抱えて守ろうとしてくれていて、何が起きているのかを把握し、魔力の流れを操って、小さな子供がおこした魔力暴走を止めた。竜巻が収まると、父さんは意識を失って倒れていた。その他の子供も無事そうで少し一息ついた。


ミレーヌがよろよろとしながらも俺の側に来てくれた。


「若旦那様、大丈夫ですか?」


「父さん、水を飲んだのか。」


俺は2歳という体だが、懸命に救急措置を施した。父さんは水を吐き出し、呼吸が安定したのでもう大丈夫と確信した。


「若旦那様…」とミレーヌが心配そうに見ていた。


「父さんはとりあえず無事だ。ミレーヌ怪我はないか?」


「・・・え!?メアルーシュ様ですよね?」


「そうだ。事情があって、今は少しややこしいことになっているんだ。」


俺はミレーヌの驚きに気付いたが、今は説明している暇はない。


「とにかく、ここから安全な場所に移動しよう。父さんを運ぶのを手伝ってくれるか?」


ミレーヌは混乱しつつも、俺の指示に従い、ミーレヌは父さんを支えて立ち上がった。俺たちは嵐の後の静寂の中で、次の行動を決めるために慎重に動き始めた。


「メアルーシュ様、本当に大丈夫なんですか?その…お話ししていることも信じられないくらい…」


「ミレーヌ、俺のことを信じてくれ。今はこの状況を乗り越えることが最優先だ。」


ミレーヌは深呼吸をし、力強く頷いた。


「わかりました、坊ちゃま。全力でお手伝いします。」


「ありがとう、ミレーヌ。父さんをしっかり支えてくれ。俺の魔法で一旦王都の屋敷に飛ぶ。」


「え!?と、飛ぶですか?」


「あぁ。ベティ、ソロコッチ、それから…なんだっけ…トリント、ミ…ミ…ミッチェル?」と言うと、サッと俺の前に姿を現した女性が「坊ちゃま、ミシェルです。」と名前を教えてくれた。


「すまん。ミシェル。お前達は船の中の父上と母上と…後、俺の玩具を回収して王都の屋敷に運んでおいてくれ。俺は今からミレーヌと父上と先に王都へ戻る。いいな。」


「はっ!」と複数人の声がした。


ミレーヌは驚いた表情を隠せないまま、俺の指示に従って父さんをしっかりと支えた。俺は深呼吸をして魔法の準備を始めた。


「ミレーヌ、しっかり父さんの体を掴んでて。少し揺れるかもしれないけど、大丈夫だから。」


「メアルーシュ様、本当に飛べるんですか?」


「ああ、信じてくれ。行くぞ。」


俺は集中し、魔力を解放して空間を歪める感覚を感じた。次の瞬間、目の前の景色が一瞬で変わり、俺たちは王都の屋敷の前に立っていた。


「わぁ…。これはもう瞬間移動でございますね。」


ミレーヌは驚きと感動が混ざった表情で呟いた。


「さあ、父さんを屋敷の中に運び込もう。安全な場所で休ませて、治療を始める必要がある。」


ミレーヌは一人でよろけながらも父さんを屋敷の中に運び入れた。屋敷の使用人がすぐに対応してくれ、父さんの治療が始まった。


「メアルーシュ様、大変な状況でしたが、無事に戻ってこれて本当に良かったです。」


ミレーヌは安堵の表情を浮かべて言った。


しばらくすると、父さんが目を覚ましたという報告を受けた。ミレーヌと一緒に部屋に入って様子を見ると、何やらおかしな様子だった。父さんは頭を抱え、困惑した表情を浮かべていた。


「父さん、大丈夫?」と声をかけると、父さんは混乱した様子で答えた。


「父さん?誰のことを言っている?」


その言葉に胸が締め付けられるような感覚が広がった。


「若旦那様、大丈夫でしょうか?」とミレーヌが心配そうに声をかけると、父さんはさらに困惑した表情で言った。


「お前たちは誰なんだ…。」


「父さん、俺だよ。メアルーシュだ。」


「メアルーシュ…聞いたことがあるような、ないような…」


俺は必死に説明しようとしたが、父さんの目はどこか遠くを見ているようだった。


「若旦那様、落ち着いてください。ここは王都のレッドナイト公爵邸です。私はミレーヌ、こちらは坊ちゃまのメアルーシュ様です。」


「レッドナイト公爵邸…ミレーヌ…メアルーシュ…」


父さんは混乱したまま、頭を抱えていた。


俺は小さな手で父さんの手を握り、落ち着かせようとした。


「父さん、落ち着いて。ここにいるのは家族だよ。何があったか覚えてる?」


父さんは目を閉じ、深呼吸をした。


「頭が痛い…何も思い出せない…」


父さんは微かに頷き、ベッドに横たわった。


「ミレーヌ、父さんの様子があまりにもおかしい。記憶喪失かもしれない。」


「そうですね、メアルーシュ様。お医者様を呼んで詳しく診てもらったほうが良いでしょう。」


すぐに専属医が駆けつけてくれて、父さんを診てくれた。診察の結果、父さんは12歳前後の記憶しか持っていないらしい。医師は冷静に説明を始めた。


「若旦那様の記憶喪失は、おそらく魔力の乱れによるものでしょう。このようなケースでは、通常一ヶ月もすれば自然に記憶が戻ることが多いです。」


「そうですか…」俺はほっと胸を撫で下ろしたが、それでも不安は消えなかった。


一ヶ月もすれば落ち着くと言われても、その間に何か問題が起きないか心配だな。


「坊ちゃま心配なさらないでください。若旦那様には安静と適切な治療が必要です。そのためには、周りのサポートが重要です。」専属医は安心させるように微笑んだ。


「ありがとうございます、先生。」


「しかし…坊ちゃまの方が大丈夫ですかな?言動があまりにも…2歳児とは思えないのですが…。」


「あ、いや!!とーさんの真似しただけー。えへへー…。」


あまりにも恥ずかしい。死にたい。


「では、若旦那様の安静を保つためにも、できる限り穏やかな時間を過ごさせてあげてください。」


医師が部屋を去った後、父さんはまだ少し混乱した様子だったが、安静にすることで少しずつ落ち着きを取り戻していた。


「父さん、安心して。俺たちがいるから、大丈夫だよ。」


「…本当に俺の子供なのか?」


「え?うん。そうだけど?」


「信じられん。2歳といったな?…。」


「じゃあ、ブルービショップの血が入ってるっていえば信じてもらえる?」


「ブルービショップだと?…あぁ、なら納得だ。」


「ミレーヌ、ちょっと父さんと秘密の話をするから、外に出てて、それから回りも席を外して。」


ミレーヌは少し戸惑ったが、すぐに理解して頷いた。


「わかりました、メアルーシュ様。何かあればすぐにお呼びください。」


ミレーヌが部屋を出て行き、他の使用人たちも部屋から退いた。俺は父さんのベッドの近くに座り、真剣な表情で彼を見つめた。


「父さん、混乱してるだろうけど、時間がないからよく聞いてほしい、ここはざっくり10年後の世界だ。そして父さんはメイシール・ブルービショップと結婚して俺を授かった。ここまでいい?」


「ま、待て、メイシール・ブルービショップだと?お前と同じ歳くらいの赤ちゃんだぞ?10年たっても精々12歳か…14歳といったところか?」


「うん。母さんは12歳で俺を身籠って、13歳になる手前で俺を産んだんだよ。だから俺は2歳だし。父さんは今24歳。」


「待て、なら…。いや、待ってください。俺が12歳と…子供を作ったのですか?」


―ん?なんで口調が変わったんだろ?


「そうだよ。どういう経緯だったかは流石に知らないけど、あ、でも父さん几帳面だから、領地の隠し部屋へいけばわかるかも?」


「あの部屋のことを知っているということは嘘ではないようですね。俺は間違えなくメイシール・ブルービショップと結婚しているのですね?」


「うん。ほら、俺の髪色も瞳もおかしなことになってるだろ?これが証拠だよ。紋章もみる?」


「いえ、信じます。」


「さっきから、その気持ち悪い口調は何なの…?何か思い出したの?」


「いえ、全然。ただ、俺の女神でもあるメイシール様との子供なのでしょう?なら、気安くはなしかけられるはずがありません。」


正直ドン引きだ。12歳の父さんって、もう既に何か出来上がってるじゃん。嫌だなぁ、こんな父さん。これと血が繋がっているのか…。


「メアルーシュ、メアルーシュ。」


「ん?、何?考え事してた。」


「ここはどこですか?」


「王都にあるレッドナイト公爵家だよ。」


「王都…。メイシール様は無事なのですか?俺がこんな状態になっているということはメイシール様も…。」


「母さんか、正直無事かはまだわからない。後でテレパシーを送ってみるよ。」


「お願いします…。あぁ、そんな…また俺が君を苦しめるなんて…。」


父さんは頭を抱え、悔しそうに唸った。俺はその姿を見て、何とか彼を安心させたいと思った。


「ちょっと部屋で連絡をとってみるから、父さんはゆっくり休んでて。」


「はい…。」

読んで下さってありがとうございます!

お手数かけますが、イイネやブクマをいただけたら幸いです。モチベに繋がります( *´艸`)

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