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ゴールドキング公爵領の豪華ホテルに到着すると、その壮麗さに圧倒される。 天井は高く、クリスタルのシャンデリアが輝き、豪華なカーペットが敷かれた広々としたロビーには、高級家具や芸術作品が美しく配置されている。
受付に進むと、上品な制服を着たコンシェルジュが私たちを迎えてくれた。 「ユリドレ様、メイシール様、お待ちしておりました。スイートルームをご用意しておりますので、どうぞご案内いたします。」
エレベーターに乗り込み、最上階へ向かう間も、その豪華さに感嘆を禁じ得ない。 エレベーターのドアが開くと、目の前にはまるで王宮の一室のようなスイートルームが広がっていた。 広々としたリビングルーム、大きな窓から見える美しい景色、豪華なベッドルームとバスルーム。 どれも最高級の設備が整っている。
「ユリ、こんな素敵な場所に泊まれるなんて夢みたいだわ!」
「メイにふさわしい場所を選びました。」
その後、私たちは部屋のテラスに出て、美しい景色を眺めながらお茶を楽しんだ。 緑豊かな庭園、遠くに見える山々、そして輝く湖が一望できる。 ユリが淹れてくれたお茶は香り高く、まるで贅沢な時間が流れているかのようだった。
「ユリはお茶も淹れれるのね。とっても美味しいわ。」
「メイの為に特訓したんです。お口にあってよかったです。」
「ユリはまだ味覚が戻らないの?」
ユリは一瞬考えるような素振りを見せた後、静かに答えた。
「いえ、今はメイが口にして、美味しいと感じているものは俺も美味しいと感じるようになりました。それにしても、俺に味覚がないことをいつ気付いたのですか?」
「なんとなく、ほら、ユリって最初の一口目は絶対に毒見してくれるでしょ?その時の表情と、私が食べた後に食べてる時の表情に少しだけ違いがあるの。」
ユリは驚いたように目を見開いた。
「では、1つ追加します。メイのことを考えなら淹れる茶や、食事は味を感じることができるようになりました。」
私はその言葉を聞いて、胸が温かくなった。
「嬉しい。ユリの人生が少しでも豊かななものになればいいなーって。」
「メイと一緒にいることが、俺にとって一番の幸せです。あなたがいるだけで、俺の世界は豊かになります。」
その言葉に、私の心はさらに温かくなった。 でも、本当にユリはどうして私をここまで愛してくれるのだろうかと不思議に思ってしまう。恋愛というよりは私を崇拝しているような?一目惚れでここまで崇拝しないわよね。しかも私出会った頃は12歳だったし。14歳になっても未だつるぺた幼女。
「ユリ、私を好きになったきっかけは?」
この質問をすると、いつも少し固まるのよね~。ほら、固まった。
「何度も言ってますが、徐々に惹かれました。アナタという人柄に。色々な要素を考えても俺達は運命です。そしてなんと言っても、メイは俺を選んでくださいました。それが全てです。」
な~んか、引っかかるけど、だめよ私。掘り起こしちゃだめ。やっと死なない人生を歩めそうなのに。だめだめ!!
「メイは…、メイは俺のどこが好きですか?」
「どこ…か。正直最初は顔だったわ。でも今は、私のことが大好きでたまらなさそうなユリが好き。私を思って狂ったことしちゃうとこも、私中心なところも今は全部大好き。」
「聞くんじゃ…なかったな。」
ユリは一瞬、顔に影を落としたかと思うと、突然立ち上がり、私をそっと抱き上げてベッドに運んだ。
「あ…、言い過ぎちゃったかしら。まだホテルを堪能したかったのだけど…。」
「いつだって、俺のタガを外すのはアナタです。」
彼の動きは慎重で優しく、その腕の中で私は安心感を覚えた。彼の言葉には愛情が溢れていた。ユリの優しい言葉とその温もりに包まれながら甘い時間を過ごした。
翌日、とうとうゴールドキング公爵の生誕パーティーが始まった。 私とユリは黒色ベースに赤色の刺繍が入った豪華なドレスとタキシードを身にまとい、会場へと向かった。
会場に入ると、ゴールドキング公爵の豪華な邸宅は、煌びやかな装飾と華やかな照明に包まれ、まるで夢の中にいるような雰囲気だった。 各界の名士たちが集まり、談笑しながら美しい音楽に耳を傾けている。
「メイ、こういう場に慣れているところが少し悲しいのですが…。」
「え!?えっと、もちろん緊張してるわ。けど、ユリが側にいてくれてるから安心してるだけよ。あと、いつもの外の顔を保ってて!後、口調もね!」
(そんなことで拗ねないで~~~!!)
ユリは人を殺せそうな殺気を放った目をして仏頂面になった。その切り替わりがとても可笑しく、笑いが込み上げて来てしまう。
(だめよ。笑っちゃ。絶対笑っちゃだめよ。)
笑を堪えるのにプルプルと震えていると、何を勘違いしたのかユリは私が本当に緊張していると思い、私の手をしっかりと握り締めた。
「おい、今夜の主役を見つけたぞ。」
ユリが視線を向けた先には、ゴールドキング公爵が立っていた。 彼は堂々とした姿勢で、周囲の人々と談笑していた。 公爵は私たちに気づくと、微笑んでこちらに歩み寄ってきた。
「レッドナイト公爵、そしてその美しい夫人、ようこそおいでくださいました。」
公爵は優雅にお辞儀をし、私たちを歓迎してくれた。
実はユリは先日、正式に公爵位を継承していた。なので今は正真正銘、レッドナイト公爵なのだ。そして私は公爵夫人。ちなみに、突然事後報告だけされて、その時の私は開いた口が塞がらなかった。
「公爵、お招きいただきありがとうございます。生誕祭、おめでとうございます。」 私は丁寧にお辞儀を返した。
「ありがとうございます。お二人のご参加を心より嬉しく思います。 どうぞ、楽しんでください。」
ゴールドキング公爵って、なんだかライオンみたいな人ね。金髪の髪の毛に紫色の瞳、ユリの3倍はでかい体。流石のユリも負けてしまうのでは?
その後、私たちは会場内を歩き回り、様々な人々と挨拶を交わした。 各テーブルには豪華な料理が並び、ワインやシャンパンが振る舞われていた。
私たちは社交の場で様々な人々と話し、情報交換を行った。 ユリは常に私のそばにいて、必要な時には助け舟を出してくれる。 そのおかげで、私は安心して会話に集中することができた。
パーティーが進むにつれ、音楽が一層盛り上がり、ダンスの時間がやってきた。 ユリが手を差し出し、私をダンスフロアへと誘った。
「メイ、一曲踊りませんか?」
「喜んで。」
ユリと手を取り合い、華やかなダンスフロアで優雅に踊り始めた。 その瞬間、まるで私たちだけの世界が広がっているかのように感じた。
ユリと踊り終えた後、私たちは再びゴールドキング公爵の元へと向かった。 彼は大勢の来賓に囲まれていたが、私たちが近づくとすぐに気づき、温かく微笑んで迎えてくれた。
「レッドナイト公爵、そしてメイシール夫人、再びお会いできて光栄です。」
「公爵、お誕生日おめでとうございます。こんな素晴らしいパーティーに招待していただき、感謝いたします。」
「ありがとうございます、メイシール夫人。お二人の存在が、この場をさらに華やかにしてくれます。」
公爵は優雅に頭を下げた。
「ゴールドキング公爵、この素晴らしい邸宅とパーティーには感服いたします。どれほどの準備が必要だったのか、想像もつきません。」 ユリが言葉を添えた。
「いやいや、これは私だけの力ではありません。多くの者たちが協力してくれたおかげです。 それにしても、レッドナイト公爵、お二人の衣装は本当に素晴らしいですね。 黒と赤の組み合わせが実に見事です。」 公爵は私たちの衣装に目を向けて称賛した。
「ありがとうございます、公爵。これは特別な日だからこそ、妻と相談して選んだものです。」 ユリが誇らしげに答えた。
「少々お聞きしたいのですが…。」
「はい。」
ゴールドキング公爵は微笑みながら、しかし目には鋭い興味を宿して尋ねた。
「お二人のご結婚は政略結婚ですか? それとも恋愛結婚なのでしょうか?」
ゴールドキング公爵の質問に、一瞬、会場の喧騒が遠ざかるような感覚を覚えた。 しかし、私は落ち着きを取り戻し、穏やかな笑顔を浮かべて答えた。
「公爵、確かに私たちの結婚には政治的な要素も含まれていました。 しかし、それは私たちの間にある愛情を減じるものではありません。 私と妻はお互いを深く理解し、尊敬し、愛しています。」
「おっしゃる通り、私たちの結婚には家同士の関係強化の目的もありましたが、それが全てではありません。私とユリドレは共に過ごす時間を重ねる中で、真の絆を築いてきました。 私はユリドレのパートナーであり、心から愛する存在ですわ。」
公爵は少し驚いた表情を見せたが、すぐににこやかに笑った。
「なるほど、お二人の愛情が伝わってきました。 失礼な質問をしてしまい、申し訳ありません。 お二人の絆がこれほど強いことを知り、私も安心しました。」
「いえ、お気になさらずに。 公爵には率直にお答えしたいと思いましたので。」
「公爵にご理解いただけて嬉しいです。私たちはこれからも共に歩んでいきます。」
「それは素晴らしいことです。お二人の幸せを心から願っています。」
公爵は再び頭を下げ、他の来賓たちの元へと向かった。
ユリと私は公爵の後ろ姿を見送りながら、再び手を取り合った。
「メイ、うまく答えましたね。」ユリが小声で褒めてくれた。
「ユリがそばにいてくれるから、うまくいったのよ。」私は微笑み返した。
その後、私たちは美しい夜の中で、パーティーを楽しみながら過ごした。
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