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14p

私はふかふかのソファーに座り、頭の中を整理していた。


―――何かが引っかかっていた。ここへ来て最初に回帰した日。どうして【ユリ】という言葉を合図にユリは全てを理解することができたのだろう。ユリにはまだ隠していることがある気がしてならない。


けれど彼の愛は恐らく本物だった。今までの人生で彼ほど私を求めた人はいなかったからだ。あの難産で殺してくれとお願いし、斬られた後、何の感情もなければ死体にキスなんかしないはずだ。


けれど、どうして3回目の人生では、お父様と一緒にレッドナイト公爵家の人間に殺されたのかしら。ユリの欲しがるものを先取りしていた。けれど、その時点ではユリは私のことを知っていたに違いない。鉱山を購入した時点で、私を監視していたと言っていた。


なら、これは1つの仮説にしか過ぎないけれど、本当は回帰条件を知っていて、わざと回帰させなければいけない状況に…まって、それだと、私は…ユリによって…殺された?


でも、難産で死にそうだった時、彼は私に回帰条件を聞いてきた。どこかに彼の嘘がある。嘘があったとしても、私を愛している、もしくは愛しようとしているのは確かで、嘘を暴く必要があるのかどうか悩んでしまう。


隠したいことは誰にだってあるものだ。私もそうだ。王妃であったことや、レオルと結婚したことの全てをユリに打ち明けたら彼は彼らを殺してしまうだろうと思って言えずにいる。元王妃だったことは、もうバレてしまっているみたいだけど、どう過ごしていたかの話は死んでもしたくない。


あともう1つは、彼は狩猟大会で死ぬ予定だけれど、あの話を聞いた後では死んだことにされていた…が真実なような気がする。情報ギルドは彼が死んだ後も運営されていたのを覚えている。つまり、彼は情報ギルドの長になったということね。


それに私はの回帰地点はもう彼との結婚後に何故か設定されている。正しい道…なのかな。神様は私に見て見ぬふりをしろということでしょうか。もう浮気されて殺されるは嫌だ。その点、ユリは異常なほど私を愛してくれそうな気がしないこともない。


愛が冷めないといいけど。


アジャールやレオルが一度は私を愛して微笑んでくれた顔が瞼の裏に浮かんだ。


「はぁ…。」


私が深い溜息をつくと、ミレーヌはすぐに去って行ったかと思えば、また戻ってきて、温かいミルクを持ってきてくれた。


「お嬢様、ユリドレ様がいらっしゃらなくて、お寂しいのですね。」


そう言われて、飲みかけたミルクを吐いてしまった。


「ゴホッ!!ゴホッ!!」


「あぁ…やはりそうですよね。ここへ来てから片時も離れず、ユリドレ様の腕の中で過ごしていらっしゃったんですものね。」


ミレーヌは頬に手をあてて困ったような顔をしていた。


ここで違うと否定すれば、どこかに潜んでいるスパイに変な情報を与えてしまうかもしれないという考えが頭をよぎり、何も言うことができなかった。


ユリはアジャール王子に剣術の稽古をつけるために王城に出向いていた。ゴールドキング公爵家のパーティーの日までしばらく帰ってこないとのことだ。


静かな一日、心にゆとりが生まれる。ユリの魅力に振り回されず、自分の思考にゆっくりと浸れる日はそうそうない。


それにしても陛下がレッドナイト公爵家を煩わしく思っていらっしゃるとは思わなかったわ。だって、最初の人生ではそんな素振り…いえ、最初の人生の時は私はただの12歳の子供だったんだわ。ということは、嫁いた時点では、既に問題が解決したみたいね。レオルとの人生の時に、ある程度レッドナイト公爵家を調べたけれど、それは情報ギルドで得たもの。つまりユリドレ・レッドナイトにアナタの家今どうなってるの?って聞いているようなもので、細かい情報を教えてくれるわけがなかった。


となると…やはりユリドレ自体が煩わしいのかしら。


まぁ、確かに…透明人間になれるって、恐ろしすぎるわ。私は何もしらずに実家の自分の部屋で2年もユリと過ごしてたのよね。気配すら感じたことなかったわ。彼は私を見てどう思ってたのかしら。

二度目の人生は途中までレッドナイト公爵家と縁を持とうと奔走してた…じゃあ、二度目の人生の時もどこかでユリは私を監視してたのかな…。どういう気持ちでレオルと恋愛していく私を見てたんだろう…。


考えていくうちに、とんでもなく恐ろしい想像が頭をよぎる。彼らの浮気すら…ユリに仕組まれたものだったのでは?という説だ。流石にそれはないかと自分で自分に言い聞かせる。そこまでユリも暇じゃないだろうし、この考えはやめましょう。でも、ふと過ってしまう瞬間がある。全て、ユリの手中だったなら私はどうする…?と…。だめ、だめよ。私はユリとしか結婚しても上手くいかない体なのよ。考えないようにしよ。


「気を紛らわす為に、書類処理をするわ。」


私はミルクの入ったコップをテーブルに置いて、ソファーから立ち上がり、書類の積まれた席に座って書類処理を始めた。机の上には山積みにされた書類があり、その中から1つずつ取り出し、処理していく。時折、目を休めるために窓の外を眺めたり、深呼吸をしたりしながら、静かに作業を進めていく。


「やはり…お寂しいのですね。」


「‥‥。」




――――――――――

――――――


一方で、ユリドレはアジャール王子に剣術の稽古をつけていた。

王子は剣を扱う様子に不慣れで、技を身につけることが難しいようだった。ユリドレは王子に対し、厳しく稽古を課していた。王子はユリの指示に従い、必死に剣を振り回していた。


「ユリドレ。どうだ!?」

「お上手です。殿下。」


ユリドレは内心で王子を見下しながらも、その気持ちを表には出さず、冷静な態度を保っていた。彼の目には殺意のようなものが宿っていたが、それを王子は気にも留めなかった。


「殿下、今日はここまでにしましょう。」

「えー!消化不良だよぉー!」

「近々、ゴールドキング公爵家でパーティーが開かれます。お怪我をされては大変です。」

「メイシールもくるのか?」

「公爵家で開かれるパーティーとなれば、参加せざるを得ないでしょうね。」

「じゃあさ!じゃあさ!ダンスに誘ってもいいか?」

「妻は妊娠中ですので、厳しいかと思います。」

「ちぇっ。どうせ政略結婚ってやつだろう?父上に頼んでどうにかならないかなぁ。」

「殿下、我々の結婚は政略結婚ではありません。私がメイシール嬢に見初めていただいたのです。先程も言いましたが、もう私の子が腹にいます。諦めてください。」

「あれもだめ、これもだめかよ!!けち!!」

「殿下、一度、城へ向かわれてはどうですか?気分を変えるのです。しかし、どうしてもまだ体を動かし足りないようでしたら、私がここいれば相手致しますよ。」

「うーん…そこまでいうなら一度城へ戻るか。」


王子は走って王城へと帰っていった。中庭に取り残されたユリドレは木刀をギュッと握り潰して捨てた。


「おやおや?ここにおられましたか。何をしていらっしゃるのですか?」と、飄々とした様子で現れた騎士が問いかけた。彼は王宮騎士でありながら、レッドナイト公爵家に潜入している一人だった。


「お前か。見ての通り殿下に剣術の稽古をつけていた。」

「ふーん、そうですか。そういえば、メイシール様とは順調なようですねぇ、メイド達から聞きましたよ~。ベッドメイクを1日に3回…でしたっけ?」


「その名を出すな。虫唾が走る。気分が悪い、俺も一度戻る。夕刻までここにいろ。殿下が戻ってきたら適当に相手をしてやってくれ。」


ユリドレは自然な動きで素早く剣帯を外して、剣ごとスパイ騎士に渡した。


「はいはーい。」


なんで剣?と思いながらもスパイ騎士はそれを受け取った。


そして、ユリドレはメイシールの名を出されて機嫌が悪くなったようなふりをして、王城の方へと足早に移動した。


「おーこわいこわい。そんなに煩わしいなら、俺がもらっちゃいますよ。」


取り残されたスパイ騎士のもとへ、王子が走ってきた。


「おーい!!あれ?ユリドレは?」

「あー、先程王城へ戻られました。」

「えー!!訓練に付き合ってくれるんじゃなかったのかよ。」

「私でよければお相手しましょうか?」

「お!いいのか!?」

「良いですよ~。」


王子は目を輝かせてスパイ騎士を見上げた。スパイ騎士は子供の相手なんて楽勝だくらいに思って、草むらに落ちている木刀を拾うとバキバキに折れていたので、仕方なく先程渡された真剣を引き抜いた。


「王子、私が使う木刀はバキバキなので、王子の木刀を貸してください。そのかわり、真剣を使ってみませんか?」

「真剣?いいのか?」

「はい。」


スパイ騎士はアジャール王子に真剣を渡した。かわりに木刀受け取って構えた。

読んで下さってありがとうございます!

お手数かけますが、イイネやブクマをいただけたら幸いです。モチベに繋がります( *´艸`)

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