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《ある時、あなたが図書室で読書をしている最中に暗殺者が襲撃してきたの。私はあなたを守るために、自ら命を捧げましたわ。その結果、あなたは生き延びたけれど…、死にゆく中でアナタに言われた言葉の数々は…。私の愛があなたにとって迷惑でしかなかったことに気づく内容ばかりだったのよ。》
ユリドレの表情には深い驚きと悲しみが浮かんでいた。
「そんな…どうして…」
《そう、私はあなたのために何度も命を捧げました。でも、その度にあなたを苦しめ、あなたの心を傷つけることしかできませんでした。》
私はさらに続け、他の策略や陰謀についても語った。彼の周囲の人々に近づき、彼の興味を引くために様々な手段を使ったこと。彼を手に入れるためにどれだけの努力をしたか、そしてその結果がどれほど醜かったかを話した。
《私の策略の一つに、あなたの友人や側近たちと親しくなり、彼らから情報を集めることがありました。彼らを利用して、あなたに近づこうとしました。しかし、それはすべて無駄に終わり、ただあなたの信頼を失う結果にしかなりませんでした。》
ユリドレは黙って私の話を聞いていたが、その眼差しには怒りと悲しみが交じっていた
「…信じられない。そこまでしてどうして俺なんかを…。お前も知っての通り俺の未来は…暗い。」
《ユリドレ様、私はあなたを愛していたから…。でも、その愛がどれだけ間違っていたか、今になってようやく理解しました。》
数日間にわたって、私はユリドレに全てを語り尽くした。彼の目には深い憂いが浮かび、私の話を聞くたびに彼の心が痛むのが伝わってきた。それでも、私は全てを話し終えなければならなかった。
《ユリドレ様、これが私の全てです。あなたを苦しめ、あなたの人生を台無しにしてしまったことを心から謝ります。ごめんなさい…。》
ユリドレは深く息をつき、私の言葉を受け止めた。
「メイシール、お前がそんなに苦しんできたとは知らなかった。だが、これからどうするつもりだ?」
《もう、あなたを追いかけることはしません。私はただ、あなたに謝りたかった。もう迷惑をかけることはしないから。》
ユリドレはしばらく考え込んだ後、静かに言った。
「待て、もっと未来の話を聞かせろ。俺のことではなく、もっと面白い話をしてくれないか?」
《ですが…。》
「俺を知り尽くしているんだろ?俺が面白いと思いそうな話をもっと教えてくれ!な?追いかける追いかけないは俺が決めることだろ?今はお前の話がいっぱい聞きたいんだ!」
私はユリドレの言葉に驚きと戸惑いを感じた。彼は私の過去の行いを知り、その重みを理解しているはずなのに、まだ私に話を聞きたいと言う。彼の目には好奇心と共に、何か新たな興味が宿っているのが見えた。
ユリドレが一歩近づき、その目を私に向けた。
「メイシール、今までの話は重かった。だが、お前がどれだけの経験をしてきたのか、その詳細を知りたい。お前の記憶には、俺たちの知らない未来が詰まっているんだろ?」
私は深く息を吸い、彼の真剣な眼差しに応えるために覚悟を決めた。
《分かりました、ユリドレ様。あなたが知りたいと思う話をお話しします。》
私はユリドレに未来の出来事や、彼の知らない世界の話を語り始めた。彼の顔に浮かぶ驚きと興味を見ていると、心の中で少しずつ和らいでいくのを感じた。彼が私に対して開かれた態度を見せることが、私にとってどれだけの救いになるのかを実感した。
「未来の王国には、魔法の進化がありました。新しい魔法技術が発展し、人々の生活が劇的に変わったんです。」
ユリドレはその話に耳を傾け、目を輝かせて尋ねた。「どんな技術だ?例えば、どんなことができるようになったんだ?」
《例えば、電話という魔法が普及し、人々が一瞬で遠くの場所の人と会話できるようになりました。それに、薬も進化して、ある程度の病気もすぐに治せるようになったんです。》
ユリドレは目を輝かせながら聞いていたが、ふと真剣な表情に戻った。
「その魔法技術がどうやって発展したのか、詳しく教えてくれ。」
私は彼の興味に応えるため、さらに詳細な話を続けた。未来の王国の発展や、新しい魔法技術の誕生、それによって変わった社会の様子を描写した。ユリドレの目には、その話に引き込まれるような好奇心と興奮が浮かんでいた。
「お前の話は興味深いな。だが、それだけじゃないだろ?もっと詳しく、もっと深く知りたいんだ。俺がその未来を感じられるように話してくれ。」
私は彼の求めるままに、さらに深い話を続けた。未来の大きな出来事、特殊能力の使い方が変わっていく過程、そしてその中で生まれた伝説や失敗。ユリドレはその話を聞きながら、時折驚き、時折笑顔を見せていた。
話を続けるうちに、私の心も少しずつ軽くなっていった。ユリドレが私の話に興味を持ち、理解しようとする姿勢が私にとって大きな慰めとなった。彼との対話を通じて、私の心の傷も少しずつ癒されていくのを感じた。
「なぁ、メイシール。技術の発展で、結局は人が楽をするためのものだったんだな。いるものといらないものがたくさんだ。」ユリドレは考え深げに言った。
《そう言われてみればそうね…。って、なんだかユリドレ様とお喋りしてる感じがしないわ。アナタはユリドレ様じゃなくて…ユリね。》
ユリドレは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
「は?なんだそれ。ならメイシールはババアだな。」
《なっ!?私は今赤ちゃんよ!?》
「俺への敬意がもうないじゃん。赤ちゃんのくせに俺を子供に見やがって!」
《いいわよ!ババアでも。なら、あなたが私に敬語を使いなさい!》
「ハッ!良いですよ。メイシール様。」ユリはわざとらしく敬語を使い、にやりと笑った。
それからというもの、ユリドレ様をユリと呼ぶようになり、ユリは私にわざとらしく敬語を使うようになったが、自然とそれが板についていた。彼の態度はどこか柔らかくなり、私たちの関係も少しずつ変わっていった。
ある日、私はユリに未来の農業技術について話していた。彼はその話を聞きながら、真剣な表情で頷いていた。
「なるほど、その技術で食糧不足が解決できるのですね。」
《そうなの。技術の発展で、多くの人々が助かるようになったわ。》
ユリは目を輝かせ、「それは素晴らしいことです。しかし、その技術が悪用されることもあるのでしょうか?」と尋ねた。
《もちろん。そのリスクもあるわ。でも、私たちがそれを防ぐために努力すれば、より良い未来が築けるはずよ。》
ユリは私の言葉に深く頷き、「メイシール様のお言葉には力があります。私たちが共に未来を築くために、もっと教えていただけますか。」と熱心に言った。
《なんだか敬語は気持ち悪いわ。前みたいに砕けて頂戴?》
「嫌です。」
《どうして!?》
「最初は意地悪のつもりでしたが、今はアナタに敬意を表していますから。」
《はい?…ならせめて名前だけでも軽く読んでちょうだい?…そうね…メイ…とか。一度呼ばれてみたかったの。》
ユリは少し考えた後、静かに頷いた。
「わかりました。メイ。」
その瞬間、私は心が温かくなるのを感じた。ユリが私の名前を親しげに呼んでくれることで、私たちの関係が一歩進んだように思えた。彼の目には柔らかな光が宿り、私に対する敬意と親しみが感じられた。
「ありがとう、ユリ。」私は微笑みながら答えた。
ユリは優しく微笑み返し、「これからも、いろいろなことを教えてください。メイの話は本当に興味深いですから。」と言った。
私たちはこうして、一年間にわたって語り続けた。毎晩、ユリは私の部屋にやって来て、私の話に耳を傾けた。未来の技術、社会の変革、人々の生き方。どの話題もユリの興味を引き、彼との対話は深まっていった。
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