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After The White




「グスンンンン…アアア…ウウイイイ…」

「おい、いくら悲しいからって鼻水で「粉雪」を奏でるな。

名曲が汚れる。」

「ごめん…」

一ノ上 墓星は教室で好きな女に振られた友人、水腹を慰めていた。

「大丈夫ですよ、木上先輩はかっこいいです。」

彼の後輩、春華も慰める。

何があったのかと言うと、非常に簡単な話である。

バレンタインという悪習のなか、彼は同じ部活の好きな女子からもらえなかったのだ。

そこでホワイトデーに一方的にチョコを渡し、告白したら、約一週間立った今日になって返事が来たと言うことだ。

まずその時点でこいつの友人を辞めたくなるが、長い付き合いや腐れ縁というものはコーンスープの缶の底に残った最後の一粒のコーンのように面倒なもので、なかなか終わらない。

ちなみに彼がもらったのはクッキーである。

これがまた面倒で、春華曰くホワイトデーの時のみ「あなたとは友達でいましょう」という意味らしい。

なんでそんな意味になったのか見当が全くつかない。

一ノ上からすれば、割れやすいクッキーを完全な状態で渡すことは簡単ではないのだから、むしろ逆の意味になりそうだという主張が適切に思えた。

さてこのバカは「友達」だの「断られた」だの「嫌われた」だの「振られた」の類義語を網羅する勢いで嘆いているが、一ノ上からすればそれよりむしろ一緒についてきていたメッセージカードのほうが気になった。

以下、その全文を書き写す。


 「53+57+23+2.71828+39+8+92。」


「何でしょうね、これ?」

「知らん。」

水原がこんな意味のわからない文章を書くやつを好きになるとはな。

「まあ、鼻水で粉雪歌い出す人ですし…」

人の心を読むな。

「でもすごいですよね。私なんてトルコ行進曲が限界です。」

黙れ。お前の方がすごい。

「…もういいよ。」

水原が立ち上がった。

「…僕は振られたんだ。こんな時だからこそ、強く生きなくちゃ。

科学部に行ってくるよ!」

「…水原さん…強く生きて…」

なぜ春華まで涙ぐむ?

「…ん?あいつ同じ部活の人に告ったんだよな?」

「ええ。」

「え?何あいつ、今振られたばっかなのにその相手と部活すんの?」

「そう見たいですね…」

まじか、と一ノ上は思った。

なるほどその勇気には敬礼を示さなければなるまい。

自分なら退部しているだろう。

「…あれ?」

一ノ上はふと思い出し、目の前の文章を見つめ直した。

「…そうか、そう言うことか…」

彼はようやくこれが意味することを知った。



「…ということがありました。」

春華は喫茶店で、1人の女性と話している。

彼女の先輩にして小説家兼現役大学生、天野 装。

彼女の友人の姉の友達である。

「なるほど、元素番号ね。laだけど?」

「はい。でもなんかそこも可愛いとか言ってました。」

「そして自然対数か…」

「ええ。一ノ上もそれが決めてになったと言っていました。」

「…いいわね。私も高校時代、謎解きしたわ…その時の先輩と一緒にね。」

「ねえ、もし他にあったら教えてちょうだい。」

「わかりました。」

そう言って、2人はまた会う約束をして別れた。




読んでくださってありがとうございました。

これからももう少し推理を出題します。

次は知識のいらないギミックを用意しますね。

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