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爆走する仔馬1



「爆走というスキルは…」


医者は苦い顔をした。

パパは混乱しつつ、真っ直ぐ医者を見つめている。


「このスキルは…例が少なく、一概には言えませんが…、魔力消費量が多く、直線でしか発揮されません。その名のように“爆走”するので、調節が難しいと言われています。しかも、身体への負担が他のスキルと比べ、かなり大きいです。その分、故障がしやすいと思われます。」


「つまり、競走馬には向かないと…。」

ため息が溢れる。


「いいえ、希望はあります。身体が丈夫であれば問題ありません。マリアナの血を受け継いでいますから、他のウマよりは強靭な身体にはなるはずです。もとより、このスキルは使い方次第では十分他の競走馬に引けをとりません。」


ドクターはそう言ったが、私もパパもこれからの道が決して簡単ではない事を理解した。


コスパの悪い、レアスキルをどう走りに利用するか。これがまず最初の大きな課題になりそうだ。


「ところで、もうメープルは魔力を身体に流ましたか。」

何だそれは?


「あっ。」

えっ?    


「忘れてた。」


ちょっとパパぁ〜?


「気づいて良かったです。」

「ありがとうございます、先生。

スキルどころか、魔力も使えなくなるところでした。あははっ。」    


あははっっじゃないんですよパパ。

私の馬生が掛かってるのに!


「ではここでやっていきますか?」

「ああ、やっちゃってください。」


軽いな。本当に大丈夫なのか。

医者は立ち上がって、棚から筒のようなものを持ってきた。


(チクッ。)

ハンコ注射みたいに先っぽに針がついていた。それは躊躇なく私の胸に刺された。

「ヒィエエッー!」

ウマに生まれてから今までで一番大きな声をだあげた。


(グサッ。)のレベルだ。

痛い、痛すぎる。

例えるなら、足がつった時のあの激痛といったところだろうか。

なのに、なかなか抜こうともしない。

いつまで続くんだこれ。


(ホワッ)

すると、突然刺された胸の辺りから白い光がこぼれはじめた。

何だろうこの光は……どこかで見たような。


(ググッ)

医者は力を加え、針がさらに深く刺さる。

「ヒェエエッ……!?」


死を覚悟した。けれど、何かがおかしい。

痛くない……?

確かに刺さっている。

しかしさっきの激痛が嘘のように、ピリッともしない。

困惑しているうちに、白い光は枝分かれしながら、全身を覆い始めた。


「おお、すごい魔力量だ。」

「人間に匹敵しそうなくらいです。」

二人は興味深いように見つめてくる。

この光が魔力なのか。


光は尻尾の先に到達すると、徐々に消えていった。


「はい。終わりですね。

次回は一カ月後なので、はい。」

「はい、ありがとうございました。」


針を抜いた瞬間は程々に痛かった。


ミア、機嫌直してくれてるかな。

手綱を引かれ、またトボトボ歩きはじめた。


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