闇夜
脊椎反射脊脊椎反射椎反射脊椎反射脊椎反射脊椎反射脊椎反射脊椎反射
叩き出されてしまった。
まったく、今日はマシロのところで泊まらせてもらおうと思っていたためにかなりショックだ。寝るところがない。あの調子じゃ、一晩明かして今日と同じように行ってもまた叩き出されるだろう。
それにしても....
「焦ってる.....か....」
俺は焦っているのだろうか。まだ、具体的な行動は何も始めていないにも関わらず、身辺でトラブルを起こしまくっている。自分では今までとは大して何も変わっていないつもりでいるが、忌々しい記憶を取り戻してその日のうちに関わっている人間ほぼ全てとトラブルを起こすというのは確かに俺に何か変化があったのかもしれんな。
何より、
「マシロ、泣かしちまったなぁ」
元々泣き虫だったあいつだが、俺が原因で泣かせてしまったのは初めてかもしれん。何だろうな、マシロのことが頭から離れないでずっと渦を巻いている。こういうのを罪悪感というのだろうか。次行くときは、あいつのわがままの一つや二つくらい聞いてやるか。あるいは、あいつの好きなものでも買っていってやるか。
正直初めからあいつが俺を騙していただなんて考えていない。あいつが、俺にあの女の近くに別の佩眼者がいて、ましてそいつが俺の邪魔をしてこようとする存在であるならば報告してこないはずがない。だとすると、この件かなり厄介なことになるな。屋敷から離れて、さらにあいつの元からも離れておくのはかえって正解だったかもしれんな。
まぁ、いい。ようやく本腰を入れて、動き始めることが出来るというものだ。領主主街からも離れて、そうだな。街外れの山に行こうじゃ無いか。
奴は...まだ、生きているかな?
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深夜。
黑衣を纏った二人組が闇の中を蠢いていた。
「首尾は?」
「万事順調。」
「そうか...」
「......」
「不満か?」
「まだ、成人もしていないような子供・・・」
「だが、例の組織の首領だ」
「本当に?」
「現時点では間違いない」
「.....」
「言いたいことは分かる。だが、佩眼者が減るのはよろしくない。最近色々ときな臭いからな」
「それに、うちだけではなくよそからも集まってきている。どのみちこのままでは彼は死ぬだろう。」
「......」
「ほれ、向こうを見てみろ。」
指示された方を見てみれば、同業者の姿。4から5人でターゲットである少年の後をつけている。
「ねぇ....」
「そんなに嫌か?」
「....コクリ」
「お前が何を考えているかは分かっている。だが、もう少ししたらそんな考えも無くなるさ。」
「......あ!」
「よく見ておくんだ」
次の瞬間。少年に向けて一本のナイフが飛んでいった。しかし、あれは.....
少年はまったく反応を見せる気配がない。やっぱり、何かの間違いだ。このままじゃ彼は死んじゃう。
慌てて飛び出そうとするもその手を止められる。視線を向ければ、彼は問題無いという風に首を横に振る。
ドサリ
何かが倒れた音がして視線を戻してみると、
.....ッ!!
少年の服を着た案山子が倒れていた。そして、案の定突き刺さっていた3本のナイフ。
「.....!! 影手裏剣!」
ありえない。あんな技術を持った集団に狙われるなんて....
「確か、投げたナイフの死角で次のナイフが見えなくなるってやつだったか?」
「...コクリ」
「しかし、となるとかなりやばい連中も関わって来てることになるな。」
「それに、連中。あのガキの危険性をちゃんと認識してるみたいだ。」
「どういうこと?」
「はぁーそうか...お前はいまだにあのガキが無害だって考えてるんだったな...」
「いいか、まずその考えを外せ。あのガキがやばいやつだから、あんな危ない集団が関わって来てんだ。」
「普通に考えてみろ、いくら真夜中とはいえ向かう先も山の方だがまだ街道だ。」
「......」
「相手が簡単な相手だったら通りすがりに殺ればいいんだよ。」
「......!!」
「その方が、簡単だし確実だ。万が一、人違いでも中止することが出来る。その後の処理もしやすいしな、後は分かるだろう?」
つまり、あの危険な集団が接近して殺害することを恐れたということ。....それに、さっき投げられたナイフは刀身が黒く塗られていて普通じゃまず目視は無理。
「ようやく気づいたようだな。今回の仕事の相手はお前が思っているような可哀想なガキじゃない。あんな危ない連中に狙われても生き残ることの出来るガキだ。」
「........」
「連中の技術だって恐ろしい。だが、あのガキだって異常だ。あの案山子、黒い服を着せていたな。あれで、大きさを正確に測ることがしづらくなっている。」
「ませすぎているとは言え、成人前のガキが思いつくようなことじゃない。」
辺りは完全に静まりかえっていて他の生物の鳴き声さえ聞こえない。不気味だ。
案山子を中心にその周囲から目を離すことが出来ない。
———ヒュッ。 風を切る音がした。
次の瞬間
ドサリ
木の上から何かが落ちてきた。
落ちてきたものは素早く体制を立て直し、音がした方へ向けてナイフを投げる。
———ヒュン。
しかし、また風を切る音がして別の木から落下物。落ちてきた者は今度は腕を押さえている。よく見れば、落ちてきた者の腕にナイフが刺さっていた。そして、そのまま蹲った。
別の木から慌てて違う仲間が飛び出してきてその者のところに向かう。しかし、その瞬間
別の方角から飛んできたナイフが助けようとしていた者の背中に刺さった。
「おい!!逃げるぞ!!」
突然強引に私の腕が引っ張られた。
「....どうしたの?」
「いいから、早くしろッ!走れ!!」
言われるがままに走り出す。
「待って......!」
「待ってたら死ぬ!死にたくなければ走れッ!」
「いきなり...どうしたの!」
「さっきは....よく見ておけ...とか言ってたじゃん!」
「状況が変わった!いいから走れ。さもないと....!!?」
刹那飛来してきたナイフがちょうど通り過ぎようとしていた木に突き刺さる。その高さはちょうど頭の中心くらいの位置
「ッ....!!」
「早くしろッ!!ここは奴の庭だ!ここじゃどう頑張っても奴には勝てん!!せめて、街まで避難するぞ急げッ!」
そこからはジグザグに動いた。時々飛んでくるナイフを避けるためだった。そのナイフの中には最初、影手裏剣を使っていた暗殺集団のナイフもあった。
どこから、ナイフが飛んでくるか分からないためとにかくジグザグに進路を変えて狙いを絞らせないようにする。
しかし、いつ気づいた?それに.....とても執拗にこちらを追ってくる。それに、厄介なことはこちらの動きを見切り始められたこと。危うくかすりそうになることもあったが、かすってはいけない。
脳裏に浮かぶは、暗殺集団の一人にナイフが刺さったとき。何故、あの刺さった人物はその場で蹲ったのか.....?普通はその場では無く別の場所に退避してからだ。まして彼らはプロの集団。
————動けなかったんだ。多分、暗殺集団と同じようにあのナイフにも毒が塗ってある。あれに触れてはいけない!
「いいか!!街が見えてきた。中に入ったらすぐに合流地点に向かう!!」
「はぁはぁはぁ....コクリ」
「ふぅー、さすがにこの辺まで来ればナイフは飛んでこんか。だが、足は止めるな!急いで街の中に入るぞ」
「..了解]
そして、門をくぐり街の中に入る。早足で合流地点である、この街で活動する拠点に向かう。受付を済まし、周囲の警戒を済ましてから部屋の中に入る。
「今回は危なかったな....」
後から入ってきた彼の表情は普段からは想像も出来ないほどに青ざめていた。その表情により、自分が本当に危険な状態だったことを知る。
「「......」」
お互いに無言が続き、呼吸を整える。
「....どういうこと」
「.....」
「さっきの続き...正直まだ飲み込めてない。」
「....いつもは、姿をくらますだけなんだよ...」
「.....」
「確かに奴は異常で、実力が底知れないことも分かっている...だが、いつもは極力こちらとは関わる気が無いつもりかは知らんがどの暗殺もひらりひらりと交わして姿を消すだけだった。」
「だが、今回は違った。助けに来ようとしている人間がいることを見越して反撃したんだろう。明らかに攻撃に殺意が乗っていた。」
「それに、ここら一帯。いや、この領地自体が奴の庭だ。だから、俺たちも巻き込まれるかも知れないと思った。嫌な予感がしたから、退散したがどうやら正解だったみたいだな」
「いよいよ、奴がこちらを目障りと思ったのかもしれん。ただ、間違いなく言えることは俺たちはあの場にいたら死んでいた。」
死んでいた。その言葉に冷や汗をかいてくる。
「任務は暗殺とのことだが、少なくともこの領地の中では絶対に無理だ。」
「監視に留める...。だが、バレるだろうな。最悪は完全撤退するぞ」
「...分かった...」
「そうだ...あいつの素性をまだ教えていなかったな。」
「コクリ」
「あいつの名はフェラート・リンデブルズ。ここらを仕切るリンデブルズ伯爵家の跡取りで例の組織の首領だ」
これが、私とフェラート・リンデブルズの初邂逅となった。
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ついでに、誤字矛盾あったら教えてクレメンス