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悪いことは続く

最近寒くなってまいりましたな

 「いらっしゃ~い。坊や、一足先に大人になってみない~?」


 「おいガキ、さっさと帰って寝ろ!こんな時間子供が歩いている時間じゃねーぞ!」


 そういった声の悉くを無視して歩いている訳だが、実に可愛げの無いガキだと自分でも思う今日この頃。野次に声援?をうけて目的地に到着する。


 「おい、支配人に会わせろ。「盲目」が来たと言えば分かるはずだ。」


 「なんだぁ~?このガキ、悪いけどな..お前みたいなガキが来る場所じゃねぇーぞここは!」

 「ボスに合わせろなんて無理に決まってんだろ。さぁ帰った帰った。」


 「はぁー、また新入りかよ...変わりすぎないんだよ」


 すると、目の前のお二人さんがコソコソと話し出す。


 (なんだァー....?、ブツブツ呟いて。なぁこのガキなんか気持ち悪くないか?変な仮面つけてるしよ....)

 (そうだな。それに雰囲気もどちらかと言えば、俺たちみたいな特有の感じがする。しかし、ありゃ前見えてんのか?..)

 (どうする?一端上に報告しにいくか?明らかに店を間違えているとか家出したとかの感じじゃねぇーぞ?)

 (そうしようか。俺が相手をしておくからお前上に確認取ってきてくれ...コイツ確かボスに「盲目」が来たと伝えろとか言ってたな?忘れんなよ?)

 (わーったよ。ほいじゃ後よろしく)

 (あいあい)


 「とりあえず、上に確認に行かせているところだ。お前なんか知らんと言われたら素直に帰んな坊主」


 「随分と良心的じゃ無いか...前にいた奴らとは大違いだ。いや、だからこそ定期的に人が変わる

  のか?」


 「なんだ坊主。前にいた奴を知ってるのか?」


 「知ってるも何も、そいつらは俺に....っと、帰ってきたようだな。」


 (おい!大変だぞ!)

 (なんだそんなに慌てて、また暇つぶしに作ってたトランプタワーを崩されでもしたか?)

 (馬鹿!!確かに崩されてて腹も立ったがそれどころじゃねぇ!上の連中が大騒ぎだ。急いでこの

  ガキを連れてこいとのことだぞ)

 (ハァ??上の連中が大慌てだと?冗談言うんじゃねーよ。骨騎士の連中が攻めてきても「捨て置

  け」とか言って葉巻ふかしてる奴らだぞ??)

 (冗談じゃねーよ!とにかく急げ、ボスが他の面会予定全部切り上げて今から時間作るってんだ。

  ただ事じゃねぇ!)

 (...マジか。分かった。次ぐにお通ししよう)


 「話は済んだようだな」


 「はい、支配人がお会いになるそうです。こちらにどうぞ。」


 「では失礼する」




 ―――店内を進んでいく、脇に並ぶ置物や美術品を眺めればそのすべてがどれも高級品ばかり。相変わらず儲けているようだが前回訪問したときと比べて成長が著しいじゃないか。見栄えだけを気にしているなら違うかもしれんが下手をすれば男爵、子爵くらいの財力は既に保有しているのかもしれんな。



 (なぁ?なんでコイツこんなにも堂々としてられるんだ?いくつかは分からんが、成人してないこ

  とだけは確かだろう?この街住んでる奴なら誰でもここ来りゃビクビクしてるってのによ...)

 (俺に聞くな!藪蛇はごめんだ!!首を突っ込んだ先がギロチンだったなんて嫌なんだよ!。)

 (わ、わりぃ...そうだな余計なことは考えんに限るな!よし、今日仕事が終わったらミリーちゃ

  んに会いに行くことを考えよう。先週行ったときはあんな.....)

 (てめ....!お前だったのかよ先週行ってた奴!!俺会えなかったんだぞ!?お前のせいだったの

  かッ!)

 (・・・・・そろそろ、着きそうだな!)

 (ごまかしてんじゃねぇ!お前あれだけ彼女いるから興味ないとか言ってた癖に会いに行ってるの

  かッ!?色んな意味で許せん奴だ!。お前みたいなのは机の角で小指ぶつけて死ねばいいんだ

  ァ!!)


 前を行く二人の会話が聞こえてくるが、なるほど確かにこいつらなら門番としては上手くやるだろうな。初めて会った子供に注意しているあたり良心的で真面目だしな。


 (つ、着いたぞ!?)

 (テメェ、まだ話は終わってねぇぞ!覚えておけよ!!)


  「・・・・!こ、こちらが支配人の部屋でございます。お帰りの時は先ほど通ってきた道を戻ってお帰り下さい、ではごゆっくりどうぞ」


 そういって頭を下げる門番二人。職務中に言い合いを始めるとはいかがなものかと思うが、人選としては悪くないと思う。実に愉快な二人組だった。


 ――――さて、久しぶりのご対面と行こうじゃ無いか。


 ドアを開け中に入る。


 そして、


 「まったく、アポを取って欲しいと何度も言ってるじゃないか。突然の訪問は勘弁してくれよ今日だってまとまりかけた商談を蹴っちゃったんだよ?」


 そう言って、シクシクシクと袖で顔を覆い尽くす人物


 「知らんな、俺が最優先だ。」


 「相変わらずだね盲目君」


 「そっちこそ知らぬ間に随分と大きくなってるじゃ無いか。マシロ」


 「へっへー、凄いでしょ!君を驚かすために僕頑張ったんだよ?褒めて褒めて!」


 そう言って座っていた席を立ち、俺の元に駆け寄ってくる性別不明の人物。フードを被り、童顔で真っ白の髪の毛を持ち、身長は150cmくらいか?顔立ちは整っており、庇護欲を誘うらしい。らしい、というのはこの店の連中の言っていることであり、何も知らない一般人の前を歩くと高確率で攫われそうになるらしい。コイツを見ると思わず家に持ち帰って飼いたくなるようだ。もはや人とすら思われていないのでは?着ている服がいつもダボダボで袖が足りていないのは謎でしょうがない。丈に合った服を選べよと言っても「これがいいんだよ!」と元気いっぱいに反論してくる小動物。


 「いや大きくなりすぎだろ。あまり急激に成長させぎると「監視」に眼つけられるぞ?」


 「分かってるよ!、だから今の状態がギリギリかな?」


 「お前綱渡りが本当に好きだよな。」


 「何ー?命知らずみたいこと言わないでくれるぅ?ちゃんとあちらさんの人だって僕たちの世話になってんだから。ちょっとの事じゃ大丈夫だよー」


 「はぁ!?いつの間にそんなところまで行ったんだよ!!」


 「へっへへ~!!ようやく君の驚くところが見れたぁ、世は満足じゃぁー」


 いや、本当に驚いた。近いうちに中枢に食い込めるだろうとは思っていたが、急成長しすぎだろ。こんなちっこいガキが、いや...俺もガキだが、本当に人は見た目に寄らんな。


 「む...今何か失礼なこと考えたでしょ!」


 「いや、全然?」

 

 大嘘である。


 「むむ....怪しいぞー!」



 「そ、そろそろ本題に入っていいか?」


 「嫌だ。」


 「はぁ?」


 「よくやったーって僕のこと褒め倒すまで褒めてくれないと話聞かない!」


 「てめぇ!、子供かよ!」


 「君だって成人してない~、僕とい っ し ょ ☆」


 「知らん!!話を聞け!!」


 胸ぐら引っ掴まえて聞かせてやろうとするも、スルリと回避して椅子のほうに向かって走り出すマシロ


 「待ちやがれ!ガキ!!お前の尻ペンペンしてやる!!!」


 「や~ん、えっち」


 「お前女じゃないんだろ?俺が前に聞いたときお前は俺にそう言ったよなぁ?だから問題無い!例えお前が嘘をついて女だったとしても本人が男と名乗っているから男と同じように扱ってやる。!感謝しろ!!」


 「ぼ、暴論だよぉぉ!やばいやばい!ガチの人の眼だ、誰か助けてぇぇぇぇ襲われるぅぅぅぅ!!」


 「残念だったな!!誰も来ない!!」


 「ッ!!......きゃぁッ」


 ようやく捉えた。それにしてもお前本当に女じゃないよな?


 「さて.....覚悟は出来ているな?マ シ ロ?」


 目の前でカタカタと震え出すが、もう遅い。


 「そう言えば、褒め倒して欲しいとか言っていたな?」


 そして、


 「よくやったなぁぁ?エライぞマシロォ。」


 そう言いながら、頭を強く強くこする。髪の毛が抜けるくらい撫でるように見せかけて擦る。


 「痛い痛いごめんなさいごめんなさいっ話聞くから!、話聞くから許してぇぇぇ」


 「えぇ?確か褒めて、倒して欲しいんだよなぁ?」


 さらに、そのまま机にマシロのからだを押しつけて上半身だけ倒す。


 「よしよしマシロ、よくやったぞ?あぁよくやったとも!」


 そう言って、なんどもなんども頭を撫でて顔を近づけて褒め称える。


 「勘弁してよぉ。もう許してぇ」


 そう言いながら、どんどん顔が赤くなってくるマシロ。


 「話を聞く気になったか?」


 「聞く、何でも言うこと聞くからぁ....」


 そういって、何度も上下に頭を動かすマシロ


 「いいだろう。」


 マシロを解放してやる。と、その瞬間サーッと走って壁の隅っこまで行く小動物。壁に顔を向けて震えている。何だ?もしかして俺の口が臭かったか?そう言えば、許してと言っていたな。毎日飯を食った後に歯は磨いているはずだが...思わず壁の隅っこまで言って俺に背中を向けたくなるほどの臭い。激臭だな。そうか、俺は口が臭かったのか。仮面をつけていても呼吸をするための穴はある。そこから、漏れ出ていたのだろう。俺は、ポケットに忍ばせていた口当てを取り出して、三角状におり口に当てて後頭部で結びつける。すまんな。


 「ハァ、ハァ、ハァ...]


 マシロの動悸が上がっているが、なるほどよく見ればただの壁かと思ったが足下のところに通気口があるな。新鮮な空気を取り込もうと必死になっているらしい。それほどまでに匂いがきつかったのか、磨く回数を増やすとしよう。今一日5回だから2回増やして一日7回だな。


 「ごめん、落ち着いた...って、どうしたの?その布」


 さすがに本人に言うのは憚られるだろう。分かるぞ、大丈夫だ。俺はお前の気持ちがよく分かっている。俺に気を遣っていることもな、コイツとは長い付き合いだが人に気を使えることが出来る奴というのは分かっている。


 「なに、気にする必要は無い。」


 無難だな。


 「そうぅ?まぁ、いいや....」


 「どうした、疲れたのか。大変だなそれじゃあ本題だ。」


 「思ってもいない前置きはいらないよ」


 「で?何さ話って」


 「あの女のすぐ近くに佩眼している奴がいた。知っていたな?」


 「.....!!」


 「お前がそのことを知らない筈がない。少なくとも、この領地に限ればお前が見落とすなどあり得ない。」


 「何故言わなかった?」


 「何のことか僕にはさっぱ..」


 「それで通ると思うなよ。いくら佩眼が貴族に多くて、一般人には起こりにくいとは言え一つの領地に二人しかいないなど考えられない。付き合いだからお前からそう言われれば事実は別としてそれに従って行動するつもりでいた。」


 「だが、問題が起きた。あの女が逃げ出した、その際に俺の把握していなかったもう一人があの女のことを助けて二人とも逃亡した。」


 「.....」


 「かなりの人間がその逃亡に関わっていた。俺がここに来た理由はな.....」


 「お前がそれに関わっているかも知れないという疑いが生まれたからだ。」


 「ッ..!僕の事を疑うの?、今までずっと一緒に頑張ってきた僕の事をッ!!」


 「だからおかしいと思ったことがあってもお前に従ってきた。いいか?偶然が2つまでだったらお前のことを信じてやる。だがな、3つは駄目だ。それもお前が一番得意な情報の分野で身近にあったものを見逃している。何か言いたいことはあるか?」


 「っ...」


 「実を言うと、俺は今機嫌が悪い。この件を処理したのは今日の昼だ、それも消化不良で、な。」


 「別に取るに足らん者どもに邪魔をされるのは構わん。が、後ろから邪魔をされるのは別だ。」


 「ッ.....僕はッ!.....」


 「言えんのはすまんが、訳あって佩眼している人間がさらに必要になった。3年以内に目的を達成しなければいけない。」


 「俺はお前の考えを優先するつもりだが、佩眼者に関してはもう邪魔は許さん。答えろ、この領地に佩眼しているものは何人いる?」


 「........」


 「マシロ」





 「何人だ?」




 

 「......ッ.....確認してるだけでも34人.....」


 「はぁ...」


 「でも聞いてよ!、僕は君につらい道を進んで欲しくないんだ。だから、せめて君が心を痛めずに済むように....と思って」


 「マシロ.....お前の気持ちはありがたいがな、もう遅いんだよ.....。」


 「お前も知っているだろう?、今の時点で俺の名は広まっている。勿論悪い意味でだ、それにすでに色々なところから恨みを買っている。」


 「でもッ!...」


 「でも、決めたんだ。例えどんなに恨まれようとも俺は前に進む。佩眼しなければならないんだ。強くならなければいけない。例え、その結果破滅することになったとしても...!!」



 「――っっ――なんでッ!?どうしてそうなったの!?前に会ったときはそうじゃ無かったじゃん!!確かに佩眼してる人を探してたけどわざわざ積極的に人を傷つけるようなことをしようとしなかった!!」


 「前回会ったときからなにがあったのさッ!!、前の君は確かに必死で佩眼者を探してた。だけど!迷ってた!!僕の言ってることがおかしいと思っても、それに素直に従ってくれるくらいにはッ!!」


 「なのに!....なのに今の君はッ.....僕はッ!!」


 「僕は.....寂しいよ......」


 「今の君は、いなくなっちゃう人の眼をしてる.....遠くに行っちゃって、もう会えなくなっちゃう人の眼を....」


 「..............」


 「ねぇ....何があったの?、何をそんなに焦っているの?.....」


 「それにきっかけがあったのはかなり最近だよね.....?、零眼(アリア)が逃げ出す前...君が佩眼者をもっと見つけようと決心したのは何故...?」


 「.........」


 「ぼくにも、言えないことなの.....?」


 寂しそうに聞いてくるマシロ、別に言えないことじゃない。

 しかし、俺が今から進もうとしているのは人の道ではなく、今でさえ名は広まっていないものの危険な立場にいるコイツに同じ道を歩ませるなどどうして出来るだろうか。


 だから......


「ああ、悪いがな」


「ッッッ.....!もう帰ってよ、今の君の顔なんて見たくないッ!」


「マシロ.....」


「早く出てってよ!!どうせ君も僕から離れていくんだ!!」


ああぁーまったく、


「早くぅぅッ!」


涙を流しながら訴えてくるマシロ。泣かせてしまったか....本当にあの記憶を思い出してから良いことがない。

俺はきびすを返し、早足でドアまで向かう。去り際に


「うそつき....」


と、マシロが呟いていたのが聞こえた。


良いと思ったら、星といいねとブックマーク登録お願いします何卒何卒!!

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