プロローグ※別に読まなくても大丈夫ですん
脊髄が反射をして書いたため何を言っているのか分からないときがございますん。
――――空坂 外道
僕はこの名前が好きでは無かった。
それはそうだろう......だって、どう考えても悪意しか感じないような名前だもの。
小学校の時はそれでよくいじめられた。あまりにも苦しくて暴力も振るわれたりして、それに対抗するためにやり返していたら、いつのまにか喧嘩で僕に勝てる奴はいなくなっていた。
代わりに名前とその素行が噛み合って、いじめられることさえ無くなったけど前よりももっと陰口をたたかれるようになった。
中学校ではそうならないように、勘違いをされないように人間的な魅力を磨こうと思った。困ってる人には積極的に手を差し伸ばしたり、人のことを一部分で判断したりしないように直接関わってみて判断するようにしていた。
でも、僕は勘違いをしてた。
そもそもが間違いだった。
だって、小学校の時でさえ僕は初めから喧嘩をしていたわけじゃ無かった。
初めからこの名前が嫌いな訳じゃ無かった。
人の悪意に限りは無く、同じ集団のなかで優位に立ちたいと思うのは当然なことで
自分が陥れたい奴に汚点があったときにそこを攻めるのは当たり前の事で
自分たちの味方が少なかったら味方が多い方に逃げようとするのは当たり前のことで
結局、僕は小学校の時と全く同じ事を繰り返した。小学校で一緒だった奴らと中学校で関わりたくなくてわざわざ遠い中学校まで自転車をこいで通っていた。だけど、いざ悪意が広がれば昔の話も沸いて出てくることなど一瞬だった。身に覚えのない罪を着せられて、それが事実かどうかは関係なく、そういう話が広がっただけで悪目立ちする。何でもかんでも学校で起こった悪いこと全てに僕が関係しているかどうかを疑い始める馬鹿ばっかり。一番悲しかったことはその噂が流れるまでずっと関わってた人達も僕の事を避け始めたこと。
友情なんて存在しない。
信用なんて存在しない。
僕がやってないと分かっていてもそんなこと彼らにとってはどうでもよかった。ただ、僕の味方をしたら自分も攻撃される。僕と同じ目に遭う。だから切り捨てる。
腹が立った。たまに武道系の部活に入っている奴らが喧嘩を売ってくることもあった。
全員返り討ちにした。
机に落書きがされれば関わってる奴ら調べ上げて同じ事をやり返したし、噂を流してる奴がいたら徹底的に問い詰めたりした。
でも、何より腹が立ったのは悪意を持つ連中よりもそいつらがおとなしくなったときに前と同じようにすり寄ってくる奴らだった。
やれ「あいつらのことは俺もひどいと思っていた」だの
やれ「外道くんごめんね、本当は外道くんが悪い人じゃないって分かってたよ」だの
本当に憎かった。そう思っていたのならなぜ助けてくれない。なぜ側にいてくれない。僕はみんなの側にいたのに.....それが許せなくてひたすら周りとの関係を無視して....
気づいたら僕は一人になってた。
先生達は助けてくれるどころか学校で起こった事件の数だけ僕を呼び出していくつか犯人にされたことだってあった。問題児として扱われて停学処分だって受けた。でも、僕が徹底的に調べ上げて真相を暴けば途端におとなしくなって腫れ物を触るかのように接してきた。悪い意味で学校で有名人だった僕はあまりにも周りが僕と距離を置こうとしていたため、色々な噂が流れ始めた。
目が合っただけで半殺しにされるとか、男だろうと女だろうと容赦ないだとか絡んできた奴ら全員ボコボコにしてたから事実も混ざってて真実味があって、信じられるようになっていた。でも、何より苦しかったのは前よりも「あいつは外道」と言われることが増えたことだった。
名前が原因でいじめられることが嫌で、身を守るために必死で抵抗していたのに今度はそれが原因でさらに名前のことを言われるようになった。
そして、僕は壊れた。
――――そんなに、言うなら外道になってやるよ。
そう思ったのは多分自分を保つための最後の防衛本能だったのだと思う。そう決意してから僕は我慢を止めた。気に入らない奴がいたらボコったし、それがバレそうなときは弱みを調べたりしてそれを使って脅したりしていた。学校ではいじめもしたし、それが原因で自傷行為に走る奴もいたけど知らないの一点張りで通った。そうなるように動いた。そこに生産性も目的も無くただ、気に入らないその一点だけだった。そとみちなんてそんなものだ。今更何を抑える必要があるだろう。
そうやって日々を過ごした。だけど、こんなどうしようもない僕でも手を差し伸べてくれた人がいた。どうしようもない外道でも救ってくれようとする人がいた。自分が外道と呼ばれるのが嫌で、それに抵抗して諦めて、それを認めた時に僕に手を伸ばしてくれる人と出会った。だから思った。きっと僕は本当に外道なんだって。物語で出てくる外道。その外道をも助けようとする優しすぎる主人公。主人公の魅力を上げるために引き立て役にされる外道。そんな物語みたいに僕の人生はきっと外道という名前をつけられたときから決まっていた。どうしようもない外道それが僕に与えられた役目にも似た何かだったのだ。
そりゃそうさ....逃げられるわけがないそういう運命なんだから。
だけど、だけどだ。例え今更でも主人公様の哀れみだったとしてもそれで僕は救われてしまった。
受け入れた方が楽だったから、受け入れてそう振る舞ってきた。
でも、苦しくないのならそっちの方がいいのは当然のことで
散々拒絶したのにそれでも外道に手を差し伸べてくれたのがうれしくないわけが無くて
だから僕はその人のために命を使った。死神がその人の命を持って行かないように代わりに自分の心臓を捧げた。
さぁさぁしばらくまだまだ脊髄が反射しますよぉ~