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進む道

墜星暦5952年春


 人口維持庁…男女比『1:60』のこの世界で国力の源、人口を管理する国家機関。その権限は州を跨ぎ、一部では州政府をも凌ぐ大統領直属組織。その隷下、法執行部門の男性保護局は貴重な男性をあらゆる脅威から保護することを念頭に設立されている。

 普段の護衛から男性に関わるすべての事件、事故の捜査などを警察等の治安組織よりも優先的に行う権限を与えられる精鋭集団である。


 『連邦』保護局の歴史は古い。独立時の憲法にも、星央大陸国家より早くその理念が記され『連邦』政府で初期に成立した組織でもある。そして、慣習的に銀月教会が担ってきた役割を引き継ぎ設立したため、その遺風が各所に残っている。


 組織は各州管区と首都特別管区、監査局と連邦本部で構成され、厚生省、教育省、警察局、軍などの関係機関と連携し高い専門性を活かして男性の保護にあたる。


◆◆◆◆◆◆◆◆


 以上、広報パンフレットより。


 あれから時の過ぎるのは速いもので、濃くも短い半年間の研修…わずか半年で、関連法規から心理学、医学、語学、逮捕術、果てには陸軍レンジャーと合同での山籠りまでこなし、私は訓練校の課程を修了して次へ進もうとしている。


 「——最後に君たちに一言、同僚に捕まるんじゃねぇぞ。『理性と秩序』だ、忘れるな。これをもって貴君たちへの祝いの言葉とさせてもらう。」


 先の戦争で、憲兵隊にいたという校長は冗談めかしつつ正面玄関に掲げられた言葉で締めくくった。


 保護官の証、警棒を受領した私たちは、保護局の紋章『剣を包む翼』が塗装された兵員輸送車で配属先まで送られる。気が早いと思うが、伝統だとか。


 「まあ、ぶっちゃけ先のアレで保護官が足りないから新人でも遊ばせる余裕が無いんでしょ?」


 ルームメイトだった子がそんなことを言った。連邦史上最悪の愚行とも呼ばれる紛争。男性資源の保護のため派遣された保護官は、その多くが彼の地に散った。その穴は大きく、補充が進んでいないのが現状、らしい。


 さて、軍から払い下げの装甲車は、東陽や阿南に輸出してもまだ余るそうで公用車にはやたらと軍用車が多い。鉄板剥き出しの内装と、硬い座席に揺られて首都特別地域を巡る。そして、減っていく同期生を窓から見送ること数時間、ついに私の番がきた。


 「ここか。」


 鞄を背負って降り立ったのは、よく言えば趣きのある、悪く言えば古めかしい、蔦の這う赤茶けたレンガ造りの建物。門柱の黒いプレートには鈍い銀で『男性保護局 首都管区第66分署』の文字。


 「よし。」


 私の今日からの職場だ、今一度、ネクタイを整え制帽を被り直して気合いを入れ、私は扉を開けた。


 

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