ウーガの日常② チキチキ★白王陣クイズ
【竜吞ウーガ】にて
ある日、ウルとリーネが事務業務に従事していた時のこと。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
カリカリカリカリと机に向き合い続ける。文字を書いているのはリーネであり、文字が汚いウルはもっぱら印鑑を押し続けていた。現在、グラドルに出向しているエシェルに代わって、ウルとリーネが作業を続けていた。
続けていたのだが、長時間ひたすら同じ作業を繰り返していたためか、空気が濁っていた。二人の目も濁っていた。
そして、そのうち、不意にリーネが顔を上げた。
「――――――」
「……リーネ?どした」
「白王陣クイーズ!!」
そして、彼女は壊れた。
「……突然どうした?頭おかしくなったか?」
「フッフーと言いなさい」
「なんて?」
「言いなさい」
「疲れてんのか?マジで大丈夫か?ちょっと休むか?」
「言いなさい」
「………………」
「………………」
「………………」
「白王陣クイーズ!!」
「ふっふー」
言った。
「さあ、本日も始まりました、白王陣の知識を高めるために行われるクイズ大会。参加者は【歩ム者】ギルド長ウル選手です」
「いつの間にか参加者になってる。怖い」
「さあ、第一問」
「ゴリゴリ話が進む」
「三代目白王陣の当主はケイグレイ・ヌウ・レイラインでーすーがー」
「まてや」
「なによ」
「「でーすーが」って前提語るな。前提を知らんぞ俺は」
「知らない?」
「知らねえよ」
「本当に?」
「知らんて………………いや、確かにケイグレイっておっさんの名前は知ってるけど」
「5代目は?」
「確かルーラウだろ」
「2代目」
「ゲイナー」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「でーすーがー」
「いつの間に俺はレイライン一族の知識をすり込まれていた……?」
「寝てる間に耳元でささやき続けていた甲斐があったわね」
「犯罪」
「安心なさい、エシェルにも同じ事をしているから」
「安心できる要素どこだ」
「義務教育よ」
「悪質な洗脳だ」
「さて、改めて第一問」
「聞かねえぞ。仕事しろ」
「三代目白王陣の当主ケイグレイには愛人がいました。どんな種族だったでしょうか?」
「だから仕事しろって」
「1,粘魔。2,竜。3,邪教徒。4,人形」
「…………ちょっと気になる問題をお出しするのやめろ!」
「制限時間10秒」
「ちょっと待てよ。え?マジでその中に答えあるの?」
「残り5秒」
「………いやしかし、神官が……んん……」
「さあ答えをどうぞ」
「………………3番?」
「ぶー、正解は4番でしたー」
「無機物……!」
「いくらレイラインが一番低い地位でも、魔物や竜、邪教徒に与するわけないでしょ」
「結果、自分の祖先が無機物を愛人にしていた事実をさらしたんだが大丈夫か???」
「白王陣を活用した、高度な人形だったらしいわ。死んだ恋人を再現したんですって」
「それ、俺が聞いていい話か?」
「本妻にバレて、最後は人形と嫁が力を合わせてケイグレイをボコボコにしたんですって」
「俺は今何を聞かせられてんの?」
「100年近く動いていた人形は、最後、奥さんとケイグレイと同じ、レイライン一族の墓標に納められたんですって」
「これはいい話なの?」
「その後、人形の秘密を探ろうとした墓荒らしとの激闘開始」
「急に雲行きが怪しくなった」
「最終的に墓荒らし達の拠点を当時のレイライン一族の合作白王陣で消し炭にしたわ」
「やべえ話だった」
「めでたしめでたし」
「全部いい話になる魔法の言葉じゃねえぞ。めでたしめでたし」
「ウル選手、残念ながら一問目で敗退です。次回は頑張ってほしいものですね」
「次はねえ」
「それではまた会いましょう。さようならー」
「さようならー」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「…………仕事すっか」
「そうね」
二人は仕事に戻った。