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灰の英雄の凱旋④ 


 都市民達は羨ましい。ただ祈るだけで、生きることが保証されるのだから。


 こんなセリフは名無しの冒険者や、商人達からなんども耳にしたことのある定番の愚痴だった。そしてその愚痴や不満は、決して的外れなものではないと、エクスタインは知っている。

 そう話す彼ら冒険者達や商人らの中に、酷い怪我を負ってる者は多かった。指の一部が欠けていたり、顔に惨い傷跡が残っていたりだ。外で魔物達に襲われたのだと言う。別に珍しいことではないというように。

 商売道具の武具類は摩耗して、それでも何度も整えて、磨いて、大事に大事に使っているのが傍目に観察するだけでよく分かった。研ぐ余地も残っていないような剣を我が身以上に扱っている戦士のことをエクスタインは印象深く覚えている。

 それほどの苦労を重ねているにもかかわらず、彼らの格好の多くはみすぼらしい。汚らわしいとすら言っても良い。都市民達は名無しと分かると彼らには近付かない。遠目に見て嘲笑うばかりだ。彼らは都市に滞在するだけの費用を稼ぐだけでも手一杯で、それが適わなかった場合は都市を出なければならないか、都市が定めた過酷な労役に駆り出される場合もある。

 間違いなく、彼らの多くは、生まれの体質、精霊との繋がりの薄さそれのみが理由で都市民達であれば背負わなくて良い苦労を背負っている。都市民達が羨ましい。彼らがそういうのは理解できる。


 だから名無し達に「貴方たちが羨ましい」などと

 そんな恥知らずで無神経な事をエクスタインは口にしない。


 エクスタインの父は、中央工房で働く職人の一人だ。

 各都市に売る魔道機械の生産工場に勤務する男だ。別に、特に優れた能力があるわけでも無い。昔は独立していて、腕は立つ職人だったらしいのだが、中央工房に自身のギルドも技術も何もかも、強引に接収されてからは全くやる気を損なってしまったらしい。エクスタインが見る彼の背中はしょぼくれていて、疲れ果てていた。

 母親はそんな彼に見切りを付けたのか、家に寄りつくことはなくなった。たまに戻っては来るが、父親との会話をエクスタインは見たことが無い。余所の若い男と話しているのを見たよ。と、全くもって親切な近所のオバサマが彼に教えてくれた事があったが、興味は無かった。

 祖母が一人居るが、中央工房との闘争にやぶれてすっかり落ちぶれた父親を見るのが悲しすぎたのか、彼がそうなってから、ぼおっとすることが多くなってしまった。家に戻って、放置され汚れてしまった祖母を綺麗にしてやるのが、幼かった頃のエクスタインの仕事だった。父親は、彼はそうしているのに、一人家で酒を飲んで興味もない様子だった。


 彼の家庭は終わっていた。 

 では交友関係はどうだったかと言えば、さて此方もろくでもない。


 ――みんな見ろよ、マケイヌが二足歩行であるいてるぞ。ちゃんと四つん這いにならなきゃだめじゃないか


 そう言って殴られて、転かされて、蹴られた事は珍しくなかった。

 中央工房は大罪都市エンヴィーのほぼ全域を支配している。全ての都市民の職人達は、あるいは職人に限らずとも、中央工房の関係者と言っても良い。それがどういうことかというと、幼少期からヒエラルキーが決定してしまっていると言うことだ。

 それは神殿の官位以上に露骨だった。

 神殿の官位は、王が定めた制度であるが故に役割がハッキリとしていて、故に必要以上の差別は存在しない。あるのは区別と、役割の分断だ。無用な諍い、暴力によるマウントなど、とる必要が無いのだ。

 だが、都市民の間にそんな正しい区分は存在しない。ことさら、中央工房内における上下関係は曖昧で、陰湿だった。そしてタチが悪いことに伝統でもあった。親の地位が、権力が、子供のヒエラルキーに直結する。親が偉い立場なら子供の世界でも偉くて、親が弱い立場なら子供の世界でも弱い。


 だから、エクスタインの立場は一言で言って最悪だった。彼は弱者だった。


 幼少期、都市民なら誰もが入る学習塾で、彼は虐められていた。と、言うよりも奴隷のような扱いだった。気の向くままに暴力を振るわれ、いたぶられて、面白半分で心身を傷つけられた。

 彼らのあまりの残虐さに、何故このような真似を笑いながら出来るのか不思議でならなかったが、恐らく彼らにとって自分はヒトではなかったのだろうというのが、今思い返してわかる結論だ。彼らにとって自分は、何をしたところ心の咎めることの無い人形か何かとかわらないのだ。


 そんなわけで、彼にとって大罪都市エンヴィーは地獄と言うほか無かった。


 救いは無かった。幼い頃既に彼はこの世界に絶望して、その瞳は淀みきっていた。何もかも諦めていた。いっそ死んでしまった方が良いかもしれない。そんな風に思う日も珍しくは無かった。

 だからその日も、殴られて、蹴られて、服を剥がされる。いつもの日常だった。 その内大通りに投げ出されて笑われるかも知れない。誰も助けてくれやしないいつも通りの日常。


 その筈だった。


 ――ウル

 ――アカネだよー


 その地獄を、より鮮烈な暴力で平然と砕いた兄妹の姿は、今もエクスタインの瞼に強烈なまでに焼き付いていた。





              ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

              ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

              ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 大罪都市プラウディア 真なるバベル凱旋式


 突如乱入し、あらんかぎりの醜態をさらした挙げ句に気を失ったドローナは天陽騎士達に確保され、凱旋式は終わりを迎えた。

 プラウディアでそれなりの力を保有していた運命の神官捕縛、そして彼女にまつわる大量の不正腐敗。関連していた者達の一斉逮捕。それらがウルの凱旋式の熱狂の裏で行われ、速やかに処理が進んでいった。

 プラウディアやその周辺の衛星都市に根深く蔓延っていた腐敗の温床を根こそぎに焼き払うべく、お祭り騒ぎの裏で、尋常ならざる速度で捕縛は進行していた。


「……やれやれ」


 バベルに存在するとても大きな来賓室のソファーに、ウルはだらしなく腰をかけて深々と溜息をついた。疲労している理由は明確である。凱旋式で死ぬほど緊張した上、そこに闖入者の相手までさせられたからだ。


「おい、大丈夫か!ウル」


 すると、ガザが心配そうに駆け寄り、その少し後ろからレイも近付いてくる。


「レイ、アンタはもう大丈夫なのか」

「……心配、かけた」


 レイは頷く。ドローナのあまりにも酷い言葉の数々に随分と心を痛めていたようだったが、その様子を見るといくらか持ち直しているらしい。


「それよりも貴方……大丈夫なの?」

「平気だよ。しっかしひっでえ女だったな。とんでもねえや」


 ウルがそう応じると、レイは酷く不審げな顔でウルを見る。顔を近づけて、まるで何処かに異常があるかのように観察してきた。


「どしたよ?」

「さっきのは……?」


 問われ、彼女が言いたいことが理解できた。「あのセリフか」と、ウルは納得する。


「アナと地下牢で、もし牢屋から出たら、嵌めてきた連中に何言ってやるか、決めてたんだよ。アイツの代わりの伝言だ」

「……迫真すぎねえ?」


 ガザはウルの顔をムニムニと引っ張った。


「やめい」

「いや、だってよお……」

「アイツが乗り移ったように見えたかよ」


 ガザはこくこくと頷いた。ガザだけでなく、隣のレイまで頷きだす。レイまでそう言うのだから、よっぽど迫真だったらしい。ウルとしては本当に、地下牢で失敗作の酒で飲み会をしていた時、ペリィや彼女と笑いながら決めたセリフをそのまま言っただけなのだが、傍から見れば全然そうは見えなかったようだ。


「……ま、別にいいか」


 自分の中に彼女の残滓が残っているのだとしたら、それは別に不愉快な事ではなかったので、ウルはそのまま受け入れた。


「でも、じゃあ、運命云々ってのは?」

「出鱈目」


 ウルは自身の目に触れる。昏翠の瞳は、ウル自身の魔眼とアナスタシアの聖眼が入り交じり、別種に変貌を遂げている。相手の運命を見取る力を有していない。


「さんざ運命の力を利用して好きにしてたヤツなんだ。さぞや”効く”だろうと思ってな」


 あそこまで効果覿面とは思わなかったけどな。と、ウルは笑った。




              ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「…………でたらめか」


 そして、そんなウルの会話を少し距離をとって聞いていたディズは、小さく呟いた。


《むに?ちがうん?》


 アカネが首をかしげる。ディズは肩をすくめた。


「ウルの今の魔眼は、人類の殆どが到達できていない最高硬度だ」


 その効力は、相手を運命レベルで掌握し、その動きを封じる凶眼。

 ウルはその対象を拘束する為に利用しているが、はっきり言ってそれは全く上手な使い方ではない。ウルが使い慣れていないためだろう。


 あの魔眼の本質はそうではない。


 瞳に映した対象の運命を、支配する力だ。有する魔力密度が高ければ、ある程度抵抗は可能であろう、が、そういった抵抗を持たない者が、()()()()()()()()()()()()()()が、モロにその力を受ければ――――


()()()()()()()()()


 ウルが――――アナスタシアが――――告げたように、彼女は地獄を見るだろう。

 幸いなど一切訪れることの無い、地獄を。


《でも、しょーがないわよ?》

「アカネ?」


 複雑な表情のデイズに対して、アカネはその内心を読んだようにつげた。

 いつもの幼い表情とは違う。冷たい、あるいは達観した目つきだった。


《“かいこんのひかりをえるまで”よ。はんせいすればいいのよ》

「……うん」

《それもできないなら、しかたがないわ》


 アカネは優しい。しかし、すべてに対して慈悲深いわけではない。過ちを犯して、多くのヒトを傷つけて、それでもなお反省もできないような者に、彼女は慈悲を与えない。見た目より、口調よりも、彼女の中身はずっと大人だった。


《だから、きにしなくていいのよ?》

「ん、ありがとう、アカネ。ウルの所へいっておいで」


 此方の事を気にしての事だったのだろう。ディズは微笑み彼女をなでると、ふにふに、と笑ったあと、気が済んだのか、ひらりと空中で一転して、そのままウルへと突撃した。




              ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





《おりゃあー!にーたん元気だったかー!!》

「ごっぱあ!?アカネか!」


 ウルは顔面に突撃をかましてきた妹をいつものように引き剥がした。アカネはニコニコと楽しそうに笑う。プラウディアにたどり着くまであまりに慌ただしく、ろくに再会の挨拶もできなかった。


「いつも通りめちゃくちゃ死にかけたよ妹。久しぶりだ」


 しかし、こうしてちゃんと顔を合わせると、大人びて――――


《んもー!!いつものことねってなるのだめなのよ!!》

「返す言葉もない」


 る、訳でもなかった。

 ぷんすこぷんと怒る妹は半年前と変わりない。愛らしい妹だ。


《おめめのいろもかわっとるしー、みぎてもますますへんになっとるしー!》

「……くちゃい?」


 ウルは恐る恐る右手を上げる。黒睡帯を巻いて、外に晒さぬよう隠している右手を前に、アカネは近づくと、少し不思議そうに首を傾げた。


《ありゃ?くちゃないな?》

「なんでかしらんが、それは良かった。もっと臭いって言われたら心臓止まってたわ」

《よろいはくちゃいで?》

「死んだ」


 黒炎砂漠攻略からずっと装着していたから仕方ないといえば仕方ない。見学してくる都市民達に示すために、汚れに対しての浄化魔術も使っていなかったのも祟った。死んでうなだれるウルにシズクがそっと浄化魔術をかけて汚れを払ってくれた。


「……ま、アカネは元気そうで何より。半年じゃそんなに変わらないか」

「いや、君が言う?」


 と、ディズもやってきた。彼女は呆れたような、感心したような表情で、ウルの顔をのぞき込む。


「まさか、本当に、ラースを破壊するとはね……しかもこの速度で」

「お膳立ては整ってたよ。俺はおいしいところもらっただけだ」


 ウルがそう言うと、なぜか背後からガザが無言で頭を指でつつき始めた。

 ディズは苦笑する。


「謙遜も限度を超えるとただの嫌みだよ?」

「悪かったよ……正直、何一つピンと来ていないんだ」

「此処まで大騒ぎが起きても……?」

「心底困ったことに」


 ウルの目標はラースに残っていた黒炎を消し去ることで、その目標もウルが出来る唯一の焦牢を脱出する手段だったからだ。途中で、仲間の呪いを払うためという別の理由も増えはしたが、始まりは得られるか分からない恩赦を得るために砂漠を突っ切っただけだ。

 

「超克とかも意味が分からん。あれってなんだったんだ」

「んー……」


 問いかけに対してディズは答えなかった。ウルの右手をそっと握って確かめるように触れるばかりだった。少しこそばゆかった。


「遠からず説明はあると思うけど、気にしなくても良いよ……今は」

「不穏……」

「こればっかりはもう本当にどうしようもないから諦めて」

「そっかあ……」


 ディズがそう言うという事は不可避なのだろう。ウルは諦めて、考えないようにした。最後にシズクを見る。


「結局、俺を焦牢に突っ込んだ連中ってのは、今回の騒動で何とかなったのか?」

「少なくともプラウディアの方面は。多くの方々と協力しましたから」

「お礼、みんなに言っておかないとなあ……」


 ウルがこうなってから、多数の協力者がウルの状況の改善に手を貸してくれたことはシズクから聞いていた。”陽喰らいの儀”で一緒に戦った様々なヒト達が手を貸してくれたと言うことも。

 結果として、ウルと黒炎払い達が自力で焦牢の外に出てきたのは間違いないが、その後の扱いが「たまたま黒炎の元凶を消し去ることが出来ただけの罪人」でなく「陰謀により牢獄に入れられていた英雄」として扱われたのはシズクと、彼らの尽力があってのことだろう。

 一段落が済んだら頭を下げて回らなければならないだろうなとウルはぼんやり想像した。


「黒剣騎士団と焦牢の仕組みを悪用した腐敗はおおよそ、摘発できるかと」

「つまり……いろいろな諸々が解決はした?」


 ウルは期待を込めて尋ねた。シズクはニッコリと微笑みを返した。


「していません」

「何故」

「そりゃ勿論、エンヴィー側の連中はまだ残ってるからね」


 そう言ったのは、ウルでもシズクでも無く、他の皆でも黒炎払いの面々でも無かった。来賓室の扉の前に何時のまにか、一人の青年が立っていた。柔和な笑みを浮かべた見覚えのある美形の男は、ウルに向かって爽やかに手を振った。


「や、ウル。久しぶり。元気してた?」

「……すっげえ友達みたいなノリで来るじゃん。お前」


 エクスタインがいた。ふらりと遊びに来た友人のような面構えに、ウルは脱力した。


「おい、ウル、アイツ誰だよ」

「幼馴染み。古い友人。俺が焦牢に落ちた時彼方此方に手を回した実行犯」


 ガザの質問に対してウルは素直に全てを答えた。ガザは、ウルの言葉の軽さと情報のギャップにフリーズした。そして、


「敵じゃね!?」

「そうだな」

「シャンとしろよ敵だろ!?」

「なんかもう疲れて頭回らん」


 ガザに肩を揺すられるが、ウルは疲れていた。大勢の前で仰々しい言葉を噛まない様に喋るのだけでも結構しんどかった。慣れない為か魔物と殺し合いをするよりよっぽど疲れた。それでなくとも黒炎砂漠突破の強行軍の疲労感が今も抜けきっていない。脳の動きが極限まで鈍かった。

 レイとガザは慌てて身構えるが、二人とも武器は持っていない。バベルの塔に入ったとき、武装の類いは全て没収されている。だが、エクスタインは慌てず両手を上げた。


「慌てなくて良いよ。ここに身を晒した時点で、僕もう何も出来ないし」

「何もって……」

「ほら」


 そう言ってエクスタインは背後を指さす。すると彼の背中からはいつの間にか人骨の死霊兵がまとわりついてその首筋に剣を突きつけていた。反対側の彼の首元には、緋色の刃が今すぐにでも彼の首をかっきろうとしている。ディズがアカネを長大な剣にして構えていた。

 ロックにディズにアカネが、エクスタインの首根っこを掴んでいた。


『カカカ。ええ度胸してるの女装男』

「酒の席の痴態を言いふらすのは止めてよロック。それに酷いなアカネ。幼馴染みに」

《にーたんいじめんならおやでもぶっとばすよ?》

「ウルの妹だなあ……」


 何故かエクスタインは嬉しそうにしながらも、本当に抵抗する様子はなかった。両手を挙げたまま、ウルの前のソファーに座った。


「それで、なんの要件だ?」

「アカネに僕なんかを殺させたくないし、単刀直入に言おうか。」


 エクスタインはのんびりと、その日の天気を語るように穏やかな口調でそれを口にした。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「………ん?」


 真正面からそれを聞いたウルはそれを全く理解できずに暫く思考を停止させた。ウルのみならず、ディズやアカネ、ガザやレイ、黒炎払いの面々も全員、エクスタインのその発言に反応が出来なかった。

 そしてそのウル達の動揺に対してまるで配慮する様子もなく、エクスタインはさらに続ける。


「前々からあった中央工房と神殿の対立だ。元々、限界ギリギリだったところに、あちこちに火がついて、一気に爆発しちゃった。流石にまだ死人は出ないと思うけど、魔導機械が発達してる分、派手だよね」

「まて、ちょっと待て……」


 ウルは手を上げて停止を促すと、エクスタインは素直に黙る。ウルは恐る恐る訪ねた。


「……俺が原因で?」

「はは、まさか。きっかけではあったけど、原因では無いよ」

「じゃあなにが原因だよ」

「うん、僕」

「お前かあ……」


 ウルは頭痛を覚えた。


「立場上、自分の国の火種には詳しかったからね。ちょっとあちこちで火をつけた」

『なにしとんじゃあお前さん』

「故郷、軽く滅ぼしておこうかなって思って」

「狂気」


 昔のエクスタインは頭がいいが、そこまで自発的に問題を起こすような性格では無かったはずなのだが、なにが原因でここまで頭がぶち切れてるのだと、ウルは本気で訝しんだ。

 エクスタインはそんなウルの様子に微笑む。


「といっても、長引くことは無いよ。君の一件で、どう考えても中央工房が不利だ。四方八方からボコボコにされて終結する。……うん、そのはずだったんだけど」


 少し歯切れの悪くなったエクスタインに、ウルは猛烈にいやな予感がした。


「んだよ」

「ちょっと一気に追い詰められすぎたんだろうね。中央工房のトップが、【竜吞ウーガ】を内乱鎮圧に利用しようと、【ガルーダ】でウーガに向かってね」


 僕は途中で中央工房で保管されていた転移術式をパクって、プラウディアに駆け込んだのが現状。と、そこまで一息で説明し、至極真面目な顔で頷いた。


「つまり、ウーガがピンチだ。ウル」

《にーたん、エクスぶんなぐっていい?》

「いいぞ」


 アカネはエクスタインをぶん殴った。思い切り拳が顔面にめり込み、鼻血が噴き出していたが知ったことでは無かった。


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はいはい、ご褒美ご褒美
[良い点] でもなんだろう、エクスって嫌いにはなれないキャラなんだよなぁ……
[良い点] エクス「前がみえねぇ」
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