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第1章 第8話 利害の不一致

「ふく……しゅう……?」



 壁ドンされ顔を近づかれた古見さんが、赤い顔をしながらもしっかりと僕の目を見つめてくる。



「私……あなたに何もしてない……」

「そう。何もしてないんだよ。俺がいじめられている時。去年から同じクラスだったお前は何もしなかった」



 古見さんの脚の間に膝を入れながらアノンは言う。



「それを忘れて自分の好きなものの話をされるのは、ちょっと納得いかないと思わないか?」

「それ、は……。でも私には……何もできないから……。それに……」


「俺へのいじめを止めれば。次の標的はお前だもんな。都合よかったよなぁ、俺がいじめられてると」

「そんな……こと……っ」



 古見さんの頬に触れたアノンの手から黒い光が放たれる。同時に股の下に入れた膝も前後に動かし始めた。



「や、め……っ」

「確かにお前は悪くない。でも俺には関係ないんだよ。そうは思わないか?」


「ごめ、んなさい……っ」

「だから謝らなくていいんだって悪くないんだから。それでも俺にとっては怨むに充分足る存在だってだけだ」



 電気が爆ぜ続け、古見さんの瞳には涙が浮かび上がる。見てることしかできない自分が情けないくらいにかわいそうな姿だ。



(アノン……やめろよ……!)

『お前はこの女と友だちになりたいんだろ? だったら必要な禊だと思わないか?』



 唾液を胸へと垂らし小さく痙攣する古見さんを見てアノンが笑う。



「人……来ちゃう……っ」

「お前が言ったんだろ? この辺は人が来ないって」



 アノンが何の指令を出しているかはわからない。それでも小見さんの紅潮したこの顔からわかる。よくないことをしていることに。そして、



「きてる……ほんとに来てる……っ」



 誰かがこちらに近づいてくる足音がする。こんなところ見られたらまずいなんてものじゃない。それなのに、



「っ!?」



 より一層、小見さんへと詰め寄った。



「な……あ……っ!?」



 僕の後方を男子生徒が通っていく。僕の顔も小見さんの顔も見えないはずだが、恥ずかしくて仕方ない。それは小見さんも同じ……いや……!



「っっっっ――!」



 大きく震え、僕の制服のジャケットを強く震えながら声を必死に押し殺している。



「――ぁあっ」



 我慢しきれなくなったのか開かれた口には唾液の糸が引いており、苦しそうながらも気持ちよさそうな表情をしていた。



「……?」



 そんな古見さんの姿に気づかない男子生徒は怪訝そうな顔をしながらも通り過ぎていく。そしてそれを目の端で捉えた古見さんは本棚を背にしたままどさっと尻もちをつく。



「はぁ……っ、はぁ……っ」

「よく声出さなかったな」



 黒ストに包まれた脚を震わせている古見さんに近づくために屈んだアノンは、長い黒髪を撫でながら耳元で囁く。



「こいつもお前も、1人じゃ何もできない弱い人間だ」



 悪魔のような、甘い声を囁き続ける。



「だからお前が苦しい時は俺が助ける。今みたいにな。だから俺が苦しい時は助けてくれ。これなら少なくともどちらかだけいじめられるってことはないだろ? 両方いじめられたら慰め合えばいいんだ。そう思うと気が楽にならないか?」



 この提案を古見さんが受けるメリットはない。現時点で古見さんはいじめられていないのだから。それでもいかにも正論っぽい言葉に彼女は、



「う……ん……。がんばる……」



 顔を紅くさせたまま、頷いた。



(アノン……)

『こいつには悪いと思ってるよ。茉鈴にもだ。それでも俺たちには必要だろ? 家族に捨てられた時の心の拠り所が』



 それを聞いて、理解した。僕が何をしたいのか。これまでの暴走は何のために必要だったのか。



『身体にも進化能力にも、言葉にも慣れた』



 僕の劣等感の根本的な原因。いつかは向き合わないといけないと理解しつつも逃げ続けてきた存在。



『家に行くぞ』

ブクマ100件超えました! ありがとうございますっ! 引き続き頑張りますので応援よろしくお願いします!


次回からはちょっとストーリー進ませていただきます。少し暗くなるでしょうが、必ず元のラブコメに戻るのでご安心ください!


これまでおもしろいと思っていただけましたら☆☆☆☆☆を押して評価を、そしてブックマークといいねもよろしくお願いいたしますっ!

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