第1章 第3話 進化
(これ……何やってるんだよ……)
『わからないか? 授業をサボってるんだ』
蜂須賀さんを叩いて席を取り戻した僕の身体は、その数分後には再び屋上にいた。
『どうだ? 一度やってみたかっただろ?』
(そう……だけどさ……)
確かに授業サボりたいなーとは思ったことがある。でも実際にやってみたら……こう……何もすることがない。
『次は授業中に寝てみるか』
アノンはそう心の中で笑うが、僕は全く笑うことができない。これからどうすればいいんだ……クラスメイトを踏みつけ叩き、さらには授業をサボってしまった僕は。
『そんな心配するな。お前、予習復習はちゃんとやってるだろ』
(結果には出てないけど。どれだけ勉強したってせいぜい中の下。僕はそういう人間なんだよ)
『お前は、そうだろうな。だが俺は違う。お前が学び、身につかなかったものは記憶の彼方に飛んでいるだけ。つまり俺の中にしっかりと残っている』
(そういう仕組みなんだ……)
となるとアノンはずいぶん完璧人間らしい。なんせ僕とは正反対なのだから。
(そんなにすごいなら教えてくれよ。どうやったら僕はお前から身体を取り戻せるのか)
『さぁな。何度も言うが、俺はお前だ。お前が知らないものを俺が知っているわけもない。ま、お前が気づいていないことには気づけているけどな』
裏人格は未知の領域が多すぎる分野。まだまだわからないことだらけだろう。
わかっているのは覚醒の条件が過度のストレスということと、
(僕の『進化』はわかるのか?)
進化。ニュースでは、生物の進化情報は脳の7割に当たる裏人格の中にあり、人それぞれ。個体ごとにその環境に適した進化が裏人格内で行われていると言っていた。
(確か羽が生えたり爪が鋭くなったりするんだろ? 僕の場合は……)
『あぁ、それならさっき壁を蹴っていた時に気づいた』
そう言うとアノンは人差し指を立てる。するとその先から黒い電流のようなものがピリピリと放出された。
(これは……?)
『発電。それが俺たちの進化だ。デンキウナギのようにな』
発電……。この身体の中で、電気を生み出せるというのか……。これは……。
(なんか……僕らしくないかっこいい能力だな……)
『ってもたいした発電量じゃない。人間1人、痺れさせるのが精一杯だろうな。ま、身体機能の一部だし鍛えれば向上するだろうが』
なんだ……やっぱりダメダメなんじゃん……。
『そう悲観するなよ。放電は駄目だが、体内に流すことは充分できる。壁を蹴り上がったのを覚えてるだろ? あれは神経に電流を流し、身体機能を活性化させたんだ。そういうの、俺たちは好きだろ?』
……まぁ、確かに……。
『それに繋がりさえすれば電気を流すこともできる。だからこの進化の本質はな……』
「……げ」
アノンと心の中で会話していると僕と同じくサボったのか、蜂須賀さんが屋上へと姿を見せた。だが僕の姿を発見すると、すぐ踵を返そうとする。その瞬間、僕の身体に黒い電流が走った。
「待てよ」
「っ!?」
そして次の瞬間僕の手は、蜂須賀さんの手首を掴んでいた。これが僕の進化の力……。
『いいや、違うな』
そうアノンが心の中でつぶやくと僕の掌を通じ、わずかだが電流が蜂須賀さんへと流れ込む。
「なにこれ……身体が動かない……!?」
そしてこの発言。電流で痺れて動かないのだろうか……いや違う。
『電気信号を送ったのさ。この女の脳に、動くなという指令をな』
これが……僕の進化の本質……!
相手の身体に触れることで、行動を強制する。
「さて、復讐させてもらおうか」
異常な身体能力の向上に加え、実質的な一撃必殺。
アノンを止めることは、誰にもできない。
いよいよ物語が本格スタートになります。実質的な洗脳能力+ドS。多くの個性豊かな女子と絡んでいきます。
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