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第1章 第12話 初勝利

「ぁ……ぁ……」



 俺を押さえつけていたものが背中から剥がれていく。



「……はは」



 立ち上がり、見下ろすと。真光が倒れていた。



「ははは……」



 白目を剥き、口から泡を吹いて。情けなくがに股になって、ビクンビクンと痙攣している。俺たちの奴隷になれ。その指令を脳が処理しているのだろう。



「ははははは……!」



 つまり、俺の。俺たちの勝利だ。



「はははははははははははははははははははっ!」



 勝った! 勝った! 勝ったぞ! あの真光に!



 たいした練習もせずにテニスで全国制覇を果たし! たいした勉強もせずに全国トップクラスの学力を誇り! アイドルや女優、モデルにスカウトされまくりの! 誰からも愛される、俺から全てを奪い取ったような完璧超人に! 俺たちは勝った!



「見たか光輝! 勝ったぞ! 俺たちが勝ったんだっ! はははははっ! ざまぁねぇぜクソ女! 俺を馬鹿にしやがって! あのクソ親だってそうだ! 自分たちの最高傑作が出来損ないに負けたんだ! どんな気分なんだろうなぁ、おい!」



 いま俺の心にあるのは、幸福感と優越感。天にも昇るほどの全能感。そして、



「何やってんだ俺は……」



 それらを容易く呑み込むほどの、絶頂の余韻のような虚脱感。



「こんなことやっても誰も褒めてくれないのにな……」



 今この場にいるのは俺たちと真光だけ。そして真光も正気を失った今、誰も俺たちを見ていない。見られてないのにどうやって褒めてもらえって言うんだ。一番見てほしかった相手は俺たちの手で奪ったというのに。



「……なぁ、光輝。お前は今の俺を見て、なんて思ってるんだ?」



 返事はない。まだ奥底に逃げているのか、自分の裏人格に失望しているのか。それはわからないが、何も言葉を返してくれない。



「俺は……俺たちは……何をしたいんだろうな……」



 俺は光輝の願いを叶えてきた。少しでもいじめてきた奴を見返したいと思ってたらそうしてきたし、友だちがほしいと思ってたらそうしてきたし、真光に勝ちたいと思っていたからそうした。



 裏人格は人間の欲望の権化だ。普通の人間を大きく超える力で、普段できないことをすることが使命と言える。



 じゃあ今。全てを叶え、欲望を失った俺は何をすればいい。何をすればお前に認めてもらえるんだ。



「……解除」



 存在価値を失った俺は、目の前に転がる妹の洗脳を解除し、逃げるようにその場を立ち去った。

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