第1章 第11話 闇夜の光
「うおおおおおおおおっ!」
身体の神経に電流を流し、真光へと向かう。だが暴力を振るうつもりはない。真光に勝てるわけがないからだ。
せいぜい俺にできるのは肌に触れることだけ。奴の服はうちの学校の制服。肌が露出している部分は顔と手、そして脚。リア充が……! スカート短くしてること後悔させてや……
「……は?」
真光の脚に触れる寸前、視界がひっくり返る。そして背中に痛みが走った。そして頭上には俺を見下ろす真光の瞳があった。
「この完璧人間が……!」
柔道もかじってない女に、普段の力の倍以上を発揮し、さらに身体能力を上げた男が投げられた……! いや……それも不思議なことではない。制蛇真光とは、そういう存在なのだ。
「どうしてわざわざ脚狙いなの? まさか実の妹の脚を触りたかったわけじゃないだろうし……。ふーん、肌に触れなきゃ意味ないんだ、あなたは。おにぃの方が上じゃん」
「……ああそうだよ。光輝はすごいんだ。自分が言えたことじゃないがな」
立ち上がり再び向かうが、テニス仕込みのステップは俺の直線的な行動を全て避けていく。
「俺はお前みたいな妹がいたら諦める。集団でしかいじめられない奴はぶちのめす。自分が楽に生きるためにだ」
「……裏人格がなに言ってるの」
「裏人格だからこそだ。俺が思ってるってことは、光輝も少なからずそう思っているはずなんだ。それなのにあいつは動じなかった。結果も出ないのにただ努力を重ねてきた」
「だから。裏人格が何言ってるわけ? そんなにおにぃのことすごいと思ってるなら早く身体返してよ!」
「それは無理だ。あいつは他人を傷つけられない。今俺たちがお前に勝てる可能性は、進化能力を使った力しかないってのに。だから俺がやるしかないんだよ。あいつの本性である俺が!」
「おにぃがお腹の底では他人を傷つけたいみたいな言い方しないで!」
「……進化能力は環境に適応するための力だ」
「突然なに言ってるの?」
「だから俺たちの発電は、生き残るための手段。周りを傷つけてでも光り輝くための力! わかるか真光。これが俺たちの本性だ!」
「そんなことおにぃが……」
「お前にはわかんねぇよっ! 愛され期待され、褒められてきた普通の人間には! ほんの僅かでもいい。友だちでも彼女でも何でもいい。傷つけてでも誰かに見てほしいっていう俺たちの手が届かない夢はっ!」
「おにぃはそんな人じゃない!」
「だからお前には……!?」
真光を見失った。確かに今まで俺と戦っていたはずなのに。闇夜の中に消え失せた。
「ありがとう。ピカピカ光ってくれたおかげでよく見えたよ」
「がぁっ……!?」
そしてその直後俺は組み伏せられていた。背中に乗られ、後ろに組まれた腕を袖の上から抑えている。戦いの中一瞬目を逸らした隙に俺の背に回ったんだ。だが、
「この距離なら当たる……!」
「っ……!」
俺に放電はできないが、これだけ近ければ別。背中に集中して電撃を放つ。脳に指令を出すことはできないが、それでも離れられれば……!
「絶対に放さない……!」
だが真光は電撃を浴びても尚。俺から。いや、光輝から手を離さなかった。
「あなたがおにぃの裏人格なら覚えてるよね……。私たちが幼稚園生だった頃、ショッピングモールで迷子になった時のこと」
「あ……?」
「私のせいで迷子になって、でも私は泣くことしかできなくて、おにぃだって不安だったはずなのに……おにぃは必死に私を励ましてくれた。それどころか別の迷子になった女の子のお母さんを探すのに協力した」
「…………」
「すごいかっこよかった。私もおにぃみたいになりたいと思った! おにぃみたいに、自分を犠牲にしてでも誰かを助けられるような人に……! そんな私の理想が、褒められたいだなんてくだらないこと思うわけないでしょっ!?」
「……お前みたいな天才じゃないんだ。そんな昔のこと一々覚えてるかよ……」
俺たちの記憶に残っているのはただ一つ。
「あの時も! 褒められたのはお前だけだっただろうがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
全ての電力を、真光が抑えている腕に一極集中させる。
「袖を……電気で焼いて……!?」
「自分を犠牲にしなくてもいい奴がぁ! これしかできない俺たちを馬鹿にするんじゃねぇよ!」
俺の肌は火傷を負ったが、これで俺と真光の肌は触れ合った。
「俺たちの奴隷になれぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
黒い光が、真光の脳に突き刺さった。




