第四話 次に目を覚ますと......?
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生まれてこの方、お城のことばかり学んできました、この国のことばかり学んできました。
でも、この国こと以外はなにも学んでいません。幼い頃からずっと言われ続けてきたのは、『あなたにはこの国以外のことを学ぶ権利がない』ということ。
私が外の世界に興味を持つ度に、必ず『あなたは異常だから、正しくあろうとしなさい』と叱責されてきました。
教え通り正しくあろうとしました。言葉を信じ、教えを信じ、私はこの国に忠誠を尽くしてきました。しかし、外の世界への想いは、正しくあろうとする度、それに逆らうように募っていきました。
私は結局、使い魔として忠誠を尽くしつつも、本心では納得していませんでした。
いつからか活力を持てなくなっていた私でしたが、ある時『ペルお姉様』が手を差し伸べてくれました。
外の世界への憧れを打ち明けると、ペルお姉様は、「ここにいながら異国よりも、何倍も魅力がある外の世界を学べる方法がある」と言いました。当然、私はその言葉を疑いましたが……話が深まるにつれ、すっかり信じ込んでいきました。
そして今日、ペルお姉様が示した『とある方法』が上手くいき、『彼』と接触することができました。後は事情を伝えるのみです。
私が彼の髪をそっと撫でると、幸せそうに口元を綻ばせました。
薬の効果が切れるまで、まだ時間がかかりそうです。
「ヘンゾーさん、もう少しお眠りくださいませ」
陽だまりの包むような優しい香りがする……あっ!
僕は飛び起きた。
眠ってしまっていたようだ。………確かシュミネとランチタイムを過ごしている時に、急に眠気が襲ってきて……駄目だ、はっきりと思い出せない。
それにしても、ここはどこだ? 目に付くのは、僕が寝ていたと思われるふかふかのベッドと……。
「ヘンゾーさん、お目覚めですか」
「うおっ!」
声をかけてきたのはシュミネだった。
「すみません! 驚かせてしまいましたね」
「いや、それはいいけれど……ここは一体どこなの?」
「ここは私の自宅にございます」
…………はい?
「えーっと、もう一度言ってもらってもいいかな」
「は、はい。ここは私の自宅にございます」
おいおいおいおいおいおいおいおいっ!!! 嫌な予感がするぞ。
僕が眠っていたこのベッドって、もしかして、もしかして、もしかして……シュミネのベッドなんじゃ………。もしそうだとしたら、嫌な予感という表現は『嬉しい予感』の間違いだ。まあ、それは一度忘れるとして。
「ごめん、シュミネ。状況が飲み込めないんだけれど、なにがあったの?」
僕が説明を促すと、シュミネは胸元に手を当てた。
「昨日のお飲み物に『睡眠薬』を混ぜました」
クエスチョンマーク。すぐに理解できない。
「質問攻めで申し訳ないけれど、どういう意味?」
「言葉の通りにございます。私は、ヘンゾーさんに睡眠薬を飲ませ、ここに連れ去りました」
「それって誘拐じゃ………」
「あっ、でも、決して悪戯目的ではございません。あのままお城の周辺にいたら、ヘンゾーさんの身が危険に晒されてしまったはずです。だから、私の家に」
僕の身が危険に晒される?
「わけがわからないよ。僕、なにも悪いことしてないよ?」
「それでも危険です。…………ヘンゾーさんが異世界の方だから」
「異世界?」
「……はい。ヘンゾーさんは、ゲートを通って、こちら側の世界にいらっしゃいました」
ちょっと待ってほしい。話が飛躍しすぎている。
「シュミネ、嘘は良くないよ。子供の妄想じゃあるまいし、そんなことありえないよ」
「いいえ、事実です」
宝石のようにきらきらとしたその瞳は、やけに真剣味を帯びている。
信じられるはずがないけれど、あのドラゴンなんてまさに異世界のそれだ。お城だってそうだろう。
「……本当に本当だね?」
「はい。本当に本当です」
「……わかった! 正直、とても信じられるような話ではないけれど、信じてみるよ。そうしないと話も進まないしね」
シュミネは、「ありがとうございます」と一礼をしてみせた。
「それで、そのゲートはどうやって?」
「ゲートはペルお姉様に助力いただき、出現させることができました。あ、ペルお姉様の紹介がまだでしたね。えーっとですね……」
「呼んだ?」
「きゃあ!」
「うわあっ!」
突然、室内に白髪ロングのお姉さんが入ってきた。
急に現れたことにも驚いたが、そんなことよりももっと驚くものが眼前に。僕は、思わず自分の目を疑い、何度も擦ったが………やはり圧倒的に不自然なものがそこにはいる。
そのお姉さんは『逆さ』で宙に浮いていた。
Twitter:@shion_mizumoto
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