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第二話 ケモ耳少女と見知らぬ地

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 …………ここは?


 意識を取り戻すと、目の前に見知らぬ平原が広がっていた。


「大丈夫にございますか?」


「うわっ!」


 突然、声をかけられた僕は、驚いて情けない声を出してしまう。


 声の主は……ケモ耳少女! しかも、髪がパールブルー! おまけにミディアム! さ、さ、さらに! メイド服じゃないか!


「ええっ! 君、それはなに? コスプレ? コスプレだよね? うわあ……すっごく似合っているよ」


 おっといけない。完成度の高さに興奮して、言葉攻めを展開してしまった。


 ケモ耳少女は恥ずかしそうに身を捩りながら、

「あの……『コスプレ』とはなんのことでしょうか?」

 と一言。


 これは、僕を馬鹿にしているのだろうか? というか、コスプレを知らない人類が存在したとは………希少種にもほどがある。それに、コスプレを知らずして、この格好をしているとは……まさかこの子、天然か? 


「ああ、ごめん。君、天然だったんだね。僕の気遣いが足りなかったよ」


 発言の意図が伝わっていないのか、ケモ耳少女は首を傾げる(なんだこれ、首を傾げるだけで胸がときめいてしまうぞ)。


 そんなことより、今はここがどこなのか訊かないと。


「ケモ耳少女さん、一つ訊いてもいいかな」


「ケモ耳少女というのは、私のことでしょうか?」


「いやいや、君しかいないでしょ。おっとそうか、この子は天然だったのか。これまた失礼」


 ケモ耳少女はそのふわっふわのケモ耳を撫でながら、

「私は、『シュミネ・モウーラ』と申します。どうぞ、シュミネとお呼びください」

 と言った。


 シ、シュミネ? モウーラ? この女の子は海外から来たのだろうか。


「わかった、シュミネ・モウーラね。よろしく、シュミネ」


 シュミネは、返事の代わりに一礼をしてみせた。


 その所作は、やけに無駄がない。いや、無駄がないというか、パーフェクトだ、非の打ち所がない。


「随分と綺麗なお辞儀だね」


「毎日お辞儀をしておりますので慣れております」


「毎日って……仕事とかで?」


「はい。私、サコック・ツンデ帝国で使い魔をやっております」


 平然と知らない単語を羅列されてしまう。まさか……この子は、相手が知らない単語を言いまくって、マウントを取るのが大好きな意識高い系女子? そうだとしたら、僕の一番苦手なタイプだ。サコックなんとかについては触れないでおいた方が無難だろう。


「おっと、僕の自己紹介がまだだったね。僕の名前は『三留辺蔵みとめへんぞう』。みんなからは………いや、みんなと呼べるほど友達はいないか。………数少ない友達からは、ヘンゾーって呼ばれているから、シュミネもそう呼んでよ」


「はい! ヘンゾーさん」


 うわあ……信じられないほど可愛いんですが。


 僕が癒されていると、シュミネはなにかを思い出したのか、パチンと両手を合わせた。


「ヘンゾーさんの質問、途中でしたね。私にお答えできることでしたらなんでも」


 な、な、な、なんでもっ!!?!!?!!! って、僕。いやいや、変なことは期待するな。僕は迷子、僕は迷子、だから、この場所を訊ねるべきなんだ。


 心を落ち着かせた僕は、不審そうに見つめてくるシュミネに、笑いかけてみせた。多分ぎこちない笑顔だったと思う……。


「僕、ここがどこかよくわからなくて。さっきの口振りから察するに、シュミネは知っているよね?」


 僕の言葉に首肯し、シュミネは柔らかな笑みを浮かべた。


「はい、ここはサコック・ツンデ帝国のココウマデ平原でございます」


 ああ、さっき言っていたサコック・ツンデ帝国というのはここのことだったのか。いやしかし、そう言われてもよく理解できない。何故なら、僕は生まれてから一度もサコック・ツンデ帝国という地名を聞いたことがないからだ。もしやこれも天然の一つ?


「サコック・ツンデ帝国ね……で、本当は東京のどこなの?」


 訊くと、シュミネはキョトンとした表情を見せた。


「ト、トーキーオウ?」


「いや、ここって東京でしょ?」


「………トーキオウというのがよくわからないのですが」


 完全にとぼけている。


 顔立ちは外国の方と言われてもわからないくらい整っているが……幾らなんでも東京を知らないなんてことはないだろう。


 おそらくだが、意地でも天然キャラを突き通したいのだろう。僕はその信念を尊重してあげるし、わざわざ咎めるようなことはしない。


 しっかし、こうなればここがどこなのか、どうやって突き止めればいいんだ。


 ………そうだ! ここに来る前のことがわかれば…………うっ!?! 頭が痛い! 数分前のことを思い出そうとしただけなのに、その部分がすっぽりと抜け落ちたような、剥がされたような、そんな感じがした。無理に思い出そうとするのは得策とは言えないな。


 かくなる上は……歩く。歩いてここがどこなのかヒントを掴むしかない。


 しばらく考え込んでいた僕を、シュミネは心配そうに覗き込んできていた。


 綺麗な顔が至近距離にあり、僕は慌てて離れた。


「僕、ここがどこなのか思い出せないんだ」


 そう言うと、一瞬だけシュミネの表情が曇ったような気がしたが、すぐに明るい笑顔に戻った。


「もしヘンゾーさんが迷惑でなければ、私にこの土地をご案内させていただけないでしょうか?」


「え! むしろいいの? 僕としては、ぜひともお願いしたいけれど……」


 シュミネはスカートをひらりと持ち上げ、

「かしこまりました、ヘンゾーさん」

 と言った。


 思い出せないのであれば、手がかりを探すしかないが……僕が思い出せない出来事は、僕にとって大切ななにかのような気がした。

Twitter:@shion_mizumoto


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