表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私は偽物かもしれない

作者: まるマキ

「まじで?」「本当に?」「嘘でしょ?」


 この世には、自分の想像の範疇を越える事柄に出会ったときに相手の方を疑う言葉の何て多いことか?

 常日頃、言葉の意味を気にしすぎるきらいのある私は本当にこの手の言葉が苦手だった。


「凄い」「そうなんだ」「知らなかった」


 でいいじゃないか。こういう言葉なら誰も傷つかない。


 軽い言葉だ、ただの感嘆符なんだと思って聞いていても、自分の常識を、経験を、存在を疑われていると感じてしまって少し頭がフリーズしてしまう。

 そして近頃そのフリーズが少しずつ長くなってきていると感じていた。


 少しの綻びを気にすればするほど、直そうと触れば触るほどいびつに大きくなってしまうように、私のフリーズはどんどん長くなっていった。

 その時間の間、私は繰り返し考えていた。


「私はまじか?」「私は本当か?」「私は嘘つきなのか?」


 今まではその疑問を打ち消し正気に戻ってきていた。

 だがある日とうとう正気に戻れなくなってしまった。


「私は偽物だ。」


 繰り返し自問自答させられた末に私が出した答えだった。

 これほど頻繁に疑われているのだ。今ここにいる私は偽物の私なんだ。そうに違いない。


 自分が偽物だと知ったとき、私の欲望を抑えていた理性はまったく働かなくなってしまった。

 その時の抑えていた欲望とは破壊衝動だった。


 私はすぐ横に陳列してあったハンマーで目の前の男性を殴った。

 その殴られた男性はさっきまで私に


「は?マジかよ?ほんとに使えねーなー」


 と繰り返していた客だった。


 1発でうずくまり膝をついて虚ろな目でこちらを見上げた。

 3発殴ったら頭から血を流し大人しくなった。


 自分が偽物とわかったゆえの万能感に私はとても興奮した。


 そうすると無理難題を押し付ける客にも、自分の無知を自覚しない自称DIYヤーにも、対応に苦慮していても手助けに来ない上司にも、全てに腹が立ってたまらなくなってきた。


 興奮し破壊衝動が収まらない私はその後も周りの陳列棚を薙ぎ倒し、止めに来る同僚たちを工具や刃物を使って殺し、惨状に悲鳴をあげ逃げる人々を襲った。


 勝手知ったるわが職場を破壊し尽くしたところでその時の破壊衝動が収まった私は「ホームセンター無差別殺人鬼」として逮捕された。


 でも大丈夫。逮捕されたのは偽物の私なのだ。

 そう思っていた。


 あれから5年、死刑囚の独房で私が言えるのはただ一つ


「自問自答を繰り返して、本当の自分を見失ってはならない」


 と言うことだ。



下野さんがホラーが好きと言っていたのでなんとかホラーを絞り出しました。

ホームセンター好きの私は色々想像できて殺害シーンはキツかったです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ