表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/365

クジャクアスター

 キダチ課長は、いつもご機嫌だ。

 眼鏡の奥から覗く理知的な眼差しと、隙のないスーツ姿で颯爽と仕事に取り組む姿から受ける印象とは違って、とても穏やかで愛想の良い人だ。おれの入社面接を担当してくれたこともあって毎日何かとお喋りするが、飼い犬の話や映画の話などで、毎回とても盛り上がる。世の中には嫌味や罵声を浴びせてくる上司も多いと聴く中で、おれはかなり運が良いのではないだろうか。

 だから、課長に関する同僚の言葉を聞いた時は、にわかには信じ難かった。

「課長の機嫌? そんなの、いつも最悪だろ」

 肩をすくめる同僚に、おれは食い下がった。

「え、でも……犬を可愛がってるとか、犬が出てくる映画の話とか、……しない?」

「そんな話、したことねーよ。てか、仕事以外の話なんてしてる暇ありませんってオーラばりばりじゃん」

 そうなのだろうか。そう言われれば確かに、仕事中にはそんな話をしたことはなかった。エレベーター内で一緒になった時とか、たまたま同じ地下鉄に乗り合わせた時に、向こうから話しかけてくれて……。

「お前、相当可愛がられてるんだよ。課長に声をかけるのに気後れしないやつなんて、お前以外にいない」

 キッパリ断言されてしまった。

「でも、なんでおれだけなんだろ……。別に仕事で手柄立てたわけでもないし」

 首をひねるおれを少しの間眺めていた同僚は、急にポンと手を打った。

「分かった。似てるんだ」

「は? 何に?」

「犬だよ、犬。なんかこう、全体的な雰囲気がさ。課長、犬が好きなんだろ?」

「いや、絶対違うわ。あの課長がそんな基準で人を選ぶ訳がない」

 そんな会話をして、営業先へ向かった同僚と別れて職場に戻る途中、キダチ課長に声をかけられた。

「お、レオ……ナルド・ダ・ヴィンチを主題にした映画を公開してるんだってな。観たか?」

「それなら、今度観に行こうと思ってました」

 答えながら、おれは先ほどの同僚に拍手を送りたい気分になった。

 課長が飼っている犬の名前は、レオだ。

花言葉「いつもご機嫌」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ