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ハゲイトウ

 成長して、年老いて、死んでいく、なんて、おとぎ話の中でしかあり得ないと思っていた。

「じゃあ君たちは、本当に各個体が老化して死ぬの?」

 わたしが彼らの代表らしい個体に尋ねると、その個体は目立つ腹部をさすりながら頷き、翻訳機械越しに「そうだ」と言った。「私たち地球動物は、基本的には皆、老いて死ぬ」

 わたしたち……正確には「わたし」という意識を共有している一つの巨大な群体は、内部意識同士で寄り集まって議論を白熱させた。

『わたしたちの星に、そんな動物はいなかった』

『わたしたちは一度も死んだことが無いから分からないが、死とはそもそも何なのだ』

『個体が一つにならず個々で活動して、おのおの勝手に死んでいくとは、なんと無駄の多い』

 わたしたちの意見は、未だ理解不能な「死」についての周縁をなぞるばかりで実りはなかった。

「君たちにとって、死とは何なの?」

 わたしたち全てが抱いた疑問をぶつけると、太った個体は汗を拭きながら答えた。「私たちにとって死とは、終わりであり、始まりであり、救済であり、破滅であり、土に帰るということであり、天上の世界へ向かうということであり、無になるということであり、生まれ変わるということであり、新たな苦難の幕開けでもあり、苦難に満ちた人生の幕引きでもあり、……つまり、生の終わりを意味する」

『まったくもって意味が分からない』

『とてつもない矛盾を孕んでいる』

『こんなにも理解不能な生態を持った動物たちの星にいるのは恐ろしい。早く逃げよう』

『それが良い、そうしよう』

 わたしたちは太った個体への挨拶もそこそこに、急いでその星を飛び出した。宇宙広しと言えども、老いて死ぬなどという不気味なサイクルを繰り返す動物はこの星にしかいまい。

 わたしの全ての内部意識が、一斉に安堵の息をついた。

花言葉「不老不死」

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