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ローズゼラニウム

 遺伝子操作で産まれた彼女は、薔薇の香りがした。今時デザイナーベビーはありふれたもので、彼女の両親は調香師だったので、香りを基準に彼女をデザインしたらしい。容姿は二の次だった訳だ。しかしながら彼女は美しく成長し、その香りも相まって、多くの求婚者に追いかけられる生活を送ることになった。おれもその一人……と言いたいところだが、そうではない。おれは、その逆だ。

 何でだか分からないが、おれは彼女の香りが好きではなかった。彼女の容姿や性格には好感を持っているのに、どうしても彼女と共に漂ってくる香りを受け付けなかった。だから、隣近所に住む幼馴染みだというのに、おれは彼女のことを避けて生活するようになった。それが、彼女には新鮮に思えたらしい。自分に言い寄る男とは違うところに惹かれたとか言って、毎日押しかけてくるから困りものだ。

 しかし、なぜおれが彼女の香りが嫌なのか、ようやく分かった。それは彼女から逃げて大きなデパートに入った時、特に好きでもないのに香水売り場に踏み入ってしまったことがきっかけだ。薔薇系の香りが漂ってきた途端に、もう駄目だった。鼻が曲がって死にそうになりながら退散したおれは、その夜、親から重要なことを聞かされた。

「あなたは蚊の遺伝子を持ったデザイナーベビーなの」

 蚊は薔薇に似た香りを嫌う。

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