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ヘメロカリス

 皆様方は、日頃の激務や人間関係、もしくは思わしくない体調に、悩まされておいでかと存じます。そんな憂さを、今宵この場で、ぱっと晴らしてお帰りください。ここは一夜限りのこの世の楽園、外の常識非常識とは無縁の場所。普段なら非難されるようなことも、考えることさえ不埒と思われるようなことも、したいだけして良いのです。

 このホテルは最上階まで全室貸切です。ここにお集まりになったのは総勢三百名、これはと思った相手と二人きりで親密に過ごすのもよろしいですし、色んな相手とやりたいようにやってくださっても結構。ただし、せっかくの場ですから、壁の花よろしくひとりで過ごすのだけはおやめください。ひとりでは振り払えない重苦しい気持ちを、誰かとともに過ごすことで軽くするのが、この会の趣旨なのですから。

 皆様方には既にたっぷり会費をいただいておりますから、料理も酒も、その他サービスも、全てお好きなように。皆様方は、この楽園の主なのです。

 おや、そこの方、なんだか不安そうでらっしゃる。え? そんなやりたい放題が、なぜこんなにも多くの人の間で許されるのか? ……ああ、ひょっとして、この会には入りたてでらっしゃいますね。

 大丈夫なのですよ、何が起きても。皆様方が先ほどお飲みになったシャンパンの中には、忘れ草の露を入れてございます。明け方には露の効力によって、皆様方のひと晩の記憶は、綺麗さっぱり消える仕組みとなっております。入会の際の契約書にも、その旨は明記してございますが……ああ、思い出されましたか。それは良うございました。

 それではそろそろ、お時間です。皆様方、ひと夜限りの目眩く恋を、どうぞお楽しみくださいませ。

花言葉「一夜の恋」「愛の忘却」、別名「忘れ草」

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