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コモンセージ

 庭のアイツをどこかへやってくれ、と、寝台に横たわった祖父に言われたので、私は驚いて首を振った。

「アレをお払い箱にしたら、お祖父様、死んでしまいますよ」

 庭に佇む女の形をしたアレが在るからこそ、寿命をとっくに通り越した祖父は生きていられるのだ。俯き加減に立つ、髪の長い女の姿のアレは、見た目こそ不気味だが、持ち主の命を守る存在なのだ。

 しかし、祖父はこわばった顔で、主張を譲らなかった。

「アレがあるから、おれは死ねないのだ。もうとっくのとうに死んでいて良いのに。おれはもう、朝日が昇るのを見たくない。月が昇るのを見たくない」

 近年、人類の平均寿命がぐんと伸びた最大の理由は、アレの出現だった。人によって、アレと出逢うタイミングは違い、アレの姿形も違う。事実、祖母のアレは、ぼろぼろになったぬいぐるみの姿をしていた。人によっては、アレと出逢わないまま一生を終えることもあると言うが、それは稀なケースで、現在、世界中の大多数の人々は、アレに出逢い、アレを手放すことで命を終える。

「もう、アレを手放すときが来たんだ」

 祖父の乾いた頬に、涙が伝うのを私は見た。だから、朝日が昇る前に、庭の女を手で払った。女は霧のように消え、祖父は夜のうちに息を引き取った。その安らかな顔を眺めながら、私のアレは、一体いつ、どのような形で現れるのだろうかという疑問が胸をよぎった。

古いアラビアのことわざに、「庭にセージを植えているものが、どうして死ぬことができようか」とあるほど、古くからその薬効が知られていることから着想しました。

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