表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/365

ノウゼンカズラ

 空は青かった、とは学校でも習うし、祖父さまもよく言っていた。人間は青い空も突き抜けて月まで到達していたとか。でも正直、見たこともない月の話をされたって何の感慨も湧かない。今、天を覆っているのは、オレンジ色の花々と、その蔓なのだから。

 蔓性の植物が繁茂しやすいのは子どもでも知っている道理だ。祖父さまが子どもの頃に宇宙開発事故が起きた。地球全土に宇宙ステーションの破片が燃え尽きずに降り注いだ時、あの植物が目を疑うスピードで伸び、その破片に絡みつき、互いに絡み合って、それが地上に降り注ぐことを防いだという。植物は海上にも伸び、地球の空を覆い尽くした。だから今、ぼくたちは生き延びることができている。

 ぼくが生まれた時から、空はいつでも薄暗かった。何重にも張り巡らされた蔓の間からは、空の青さなんて見当たらない。最近では、そろそろ蔓から破片を取り除いて、ついでに植物にも退去してもらおうなんて案が出始めているらしいけれど、ぼくは別にこのままで構わないと思っている。

 なぜって、植物はいつも、ぼくたちのために木漏れ日を作ってくれるからだ。彼らは多分、破片を分解している。そしていつでも、地上の生き物たちを気遣っている。

 いつもありがとう、とそっと呟くと、オレンジ色の花が柔らかく、お辞儀をするように動いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ