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ヤブラン

 義姉(ねえ)さんは綺麗だ。兄さんが常日頃、緩んだ顔で自慢するのも分かる。初めてうちに来た時、女優さんが番組の企画で突撃訪問してきたのかと思って慌てたのを覚えている。

「リリです、よろしくね」

 彼女は気さくに、ちゃんとお辞儀をして挨拶してくれた。中学生でただのガキの、ぼくなんかに。義姉さんが頭を上げると、微かな花の香りがした。その時の香りも、覚えている。

 結婚式は盛大だった。兄さんも義姉さんも友達が多くて派手好きだから、そりゃもう豪勢だった。教会の入り口からブーケを投げる時、義姉さんの後ろから何羽もの白い鳩が飛び立つ演出なんて、凄かった。それは手品と言うよりも、義姉さんに相応しい魔法と言う方が相応しかった。純白の羽が舞う中で大きく腕を動かす彼女は、天から降り立った女神のようだったから。

 二人はひと月に一度くらいの頻度で、顔を見せに来た。それが十二回ほど続いて、次に会った時、義姉さんは新しい命を宿していた。

「まだどっちか分からないの」

 そう言いながら微笑む彼女は、愛おしげに、まだ膨らんでもいないお腹をさすった。

「……触っても良い?」

 おずおずと聞くと、義姉さんは「もちろん」と頷く。ぼくは初めて、彼女に触れた。その優しい温度を感じた。そして、中にいるものが、このまま永遠に出てこなければ良いのにと思った。

花言葉「隠された心」

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