スズラン
スズちゃんのメイクが、また変わった。いや、メイクだけじゃない。昨日までゆるふわに巻いていた髪の毛はクールなモブになっているし、お姫様みたいなフリルのついたワンピースばかり着ていたのが、シンプルなパンツスタイルになっている。
「スズちゃん、また彼氏と別れたの」
「んー。なんかね、他に好きな人できたって言うから」
グラスに残った氷を噛み砕きながら、スズちゃんはつまらなさそうに言う。メイクや髪型、服装をいくら変えても、スズちゃんはとても可愛いしカッコいい。こんな女の子をふる人間がいるなんて、ちょっと信じられない。
「スズちゃんなら、もっと素敵な人と出会えるよ」
「んー。そうだと良いんだけど」
付き合う人が変わるたび、スズちゃんはその人の好みに合わせて外見を変える。フリーである今は、だから素のスズちゃんだ。恋人のいない時期限定の、レアなスズちゃんだ。
「ねえ、友だちがフラれたってのに、なんか嬉しそうじゃない?」
「いやいや、そんなことないよ」
じっと私を見つめる綺麗な目に、どきっとする。
ああ。このまま、誰とも付き合わないでいてくれないだろうか。
凛としたスズちゃんの、その素の美しさを、私はずっと眺めていたい。
花言葉「あなたの美しさ以上にあなたを飾れるものはない」




