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ツルニチニチソウ

 かわいいあなたと過ごした日々は、あなたと過ごすのを心待ちにしていた日々と同じくらい長く、そして短かった。初めに口にする言葉は、好きになる食べ物は、お気に入りのおもちゃは、将来は。

 まだ見ぬ未来は永遠に未来のまま、私たちの胸の中に凍りついて、決して溶けない。立つことも、歩くこともないまま、あなたは私たちの腕の中から飛びたってしまう。

 せめてもの慰めは、今日の空が、抜けるように青く晴れていること。眠るあなたを飾る、この明るい紫色の花を目印に、きっと天使が迷わず迎えにきてくれる。

 ……ああ。本当は、誰にもあなたを渡したくなどない。こんな悲しい場所に、まだ何も知らないあなたを一人で置いておかねばならないことが、悔しくてたまらない。こんな悲しみがこの世にあるのなら、もしかするとそれを知らずに行くあなたは、幸せなのかもしれない。けれど、それは私たちには幸せではない。

 小さな指、すべすべの肌、どこに触れても柔らかな体と、純白の魂よ、どうか天上で健やかに。いつか、あなたを心から愛する二人が会いに行く、その日まで。

イタリアでは亡くなった子どもをツルニチニチソウで飾るため、「死の花」と呼ばれるところから着想しました。

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