表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
270/365

キブシ

 墓地で待ち合わせなんて、変ですよね。でも、貴方と会えるなら、それがどこだろうと構わないのです。今日はとても良いお天気で、きっと貴方も機嫌良く、目を細めて歩いてくるでしょう。出逢った頃、その穏やかな表情に惹かれたのを今でも思い出せます。

 桜の花が、今年も綺麗に咲きました。この間お会いしたときはまだ、蕾さえ見えなかったのに。月日の移ろいは美しく、そしてなんて儚いものでしょう。毎月お会いするたびに、私はその流れに心を打たれます。そして、未だに貴方がここに来てくれることが、嬉しいのに切ない。もう私のことなど忘れてくれても構わないのです。そうしたら、きっと私も桜とともに、春風に吹かれて消えてしまえるでしょう。

 ああ、やはり貴方は今日も来てくれました。手には春の花が混じった供花を持ち、そしてやはり、穏やかに目を細めて。昔よりもゆっくりとした歩調で、そして入口で立ち止まる。

 ここに立っていると、目が合うような気がするのです。貴方は、ただ石段を見上げているだけですけれど。

 膝を庇うように上りだした白髪の貴方の、隣に寄り添うこの瞬間が、私には何より嬉しい瞬間なのです。

花言葉「待ち合わせ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ