エリカ
船から見渡す限り、と言うか全球型レーダーで確認する限り、その星には何も無かった。かつて青い星だとか水の星だとか形容されていた面影は微塵もなく、ただ一面に茫漠たる砂の原が広がっているのみだ。
「やっぱり、生き残りはいなかったな」
相棒が隣で操縦桿を操作しながら呟く。船が着陸態勢に入り、砂を巻き上げ波紋を作っていく。その時、ふとレーダーに、人工物を示す波が映った。
「確認しよう。もしかしたら……」
「あまり期待は出来ないぞ」
相棒は渋々、レーダーに従って船を動かしてくれた。やがて肉眼でも、それを確認できる距離に入った。人類の平均的な身長くらいの高さのある、像だった。素材は調べてみないと分からないが、一面が砂になるような状況でも耐え抜くだけの頑強さを持った何かであることは確かだ。像は、シンプルな布をまとった女性をかたどっていた。
「美人だ」
「ああ。生きてたら多分、もっとな。……でも、やっぱり……」
地上に降り立って、ぼくと相棒は像をよく調べた。女性の持っている花束に触れた時、何かが作動する音がした。
とっさに身構えたぼくたちの耳に、優しげな調べが届いた。音楽が流れ出したのだ、と気がついて、ぼくたちは構えを解いた。聴いたことのないメロディだが、懐かしい気がした。過去、ぼくたちの祖先とたもとを分かち、この星に残った人たちが遺した音楽。もう誰にも届かなかったかもしれない、孤独な音色。
それまで楽器の音だけだったのが、曲の終わりの方に、人の声が入っていた。誰か、この像を作り、ここに置いた人が、ぼくたちに向けて保存した言葉だ。その時、録音できた可能な限りの言語で保存したのだろう。色々な発音の言葉が次から次へと聴こえてきた。
「初めまして。それに……」
「おかえりなさい」
ぼくたちはポータブルレーダーの翻訳機に映し出された、そのメッセージを読み上げた。ぼくたちがいつか帰ってくるだろうことを信じ続けた誰かの孤独が、今終わったのだと思いながら。
花言葉「孤独」「寂しさ」




