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アーモンド

 彼の愚かさは、世界中の人間が知っていた。

 故国で一番の大学を出るまでひたすら学問に打ち込み、多くの知識を吸収した彼は、幼い頃から神童と呼ばれ、成長した頃には天才の名をほしいままにしていた。しかし、宇宙飛行士として地球から遠く離れたステーションで何年か過ごしている間に、嘗ての彼はどこかへ消えてしまった。

 孤独の中で神経を使う作業に明け暮れたせいだとか、宇宙を飛び交う放射線にあてられたのだとか、未知の宇宙生物による改造が行われたのだとか、勝手な推測が飛び交った。それほど、地球に帰ってきた彼は、誰がみても明らかに、様子が違っていたのだ。

 暫くしてから彼は、自身が所属していた世界最高峰の宇宙研究機関を爆破した。人命はひとつも失われることがなかったが、それまで機関が積み上げてきた数々のデータや貴重な資料は失われた。それが彼の仕業だと判明した頃には、もう彼はその国にはいなかった。それから程なくして、他のあらゆる国々の宇宙研究機関が、同じように破壊されていった。

「宇宙など虚だ。そんなものに巨額の金と多大な時間を掛けるくらいなら、地球についてもっと研究した方が有益だ」

 それが、自ら出頭して捕らえられた彼の言葉だった。精神鑑定の結果、責任能力があると判断された彼は、明晰な頭脳のまま狼藉に及んだとして、世紀の愚者と世界中から非難を浴びせられた。彼のことをよく知り、面会を希望した高名な研究者たちにも、彼の言葉の意味はよく分からなかった。宇宙の真理を目にしたという彼の訴えは、誰にも届くことがなかった。

 ただ一人だけ、彼の師でもあった学者は、幾度にも渡る面会の後、ぽつりと呟いたという。

「彼は天才すぎた」

 その学者は面会室から出てすぐ、自らの肩書と研究成果を全て白紙にして、行方をくらましたという。

花言葉「愚かさ」。

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