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クリスマスローズ

 耽美主義で知られる皇帝の命によって、彼女たちは作られた。特殊な技術で、ものを記憶する能力を格段に引き上げられた美しい少女たち。人々の慰めのために作られた彼女たちは「追憶」と呼ばれ、それぞれの主人のもとで大切に扱われた。

「追憶」は、真冬のある時期にしか咲かない花の香りを身に纏い、主人の心を癒す。そして語るのだ。主人が覚えさせた、主人と誰かとの大切な思い出を。

 その時代は、皇帝が耽美に逃げ込んだほど戦争が多かった。多くの若者が、愛する家族、友人、恋人と二度と会えないことを知りながら、戦地に赴かなくてはいけなかった。だから「追憶」が作られた。残された人々が、行ってしまった大切な人との思い出を風化させないために。

「追憶」は語る。

 主人の父、息子、弟、兄、恋人、友人、知り合いの、出立前夜の言葉を。その慈しみに溢れた調子をそっくりそのまま、可憐な声で写し語る。主人の頬を伝う涙をそっと掬い取り、傷んだ心を優しく撫でる。

 誰もが「追憶」を愛する。家族同然に思い、大切に世話をする。

 彼女たちは記憶力の無理な拡張によって、大人になる前に死んでしまうのだ。

 美しいまま、美しい記憶だけを詰め込んで、少女たちは眠るように息を引き取る。彼女たちを愛する者たちに見守られながら、自分自身の記憶は一切、持たないまま。

花言葉「追憶」「私の不安を和らげて」

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