表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/365

アジアンタム

 先祖が受けた呪いだとかで、わたしの体は水に濡れる事が無い。体表に触れそうになった水は、全てわたしを避けて地面に落ちていくのだ。幸い水を飲むことは出来るので生きていけるけれども、生まれてこの方シャワーを浴びることもお風呂やプールに入ることも叶わず(浴槽やプール内の水がわたしを避けるせいで、さながらモーセのようになってしまう)、自分の体は清潔なのかどうか、よく分からない。まあ面と向かって臭いだとか汚いだとか言われたことはないので、多分大丈夫なんだろうと思う。体が、そういう風に出来ているのだ。

 確かに不便なことも多いけれど、雨や雪の日は濡れることもなく快適だし、正直言って、大した呪いじゃないよなと思っていたのは事実だ。けれど、先祖にかけられた呪いがピンポイントで私に発現したことには、きちんと理由があったのだ。

 その日、神話以来の大洪水が起きた。

 世界中の陸地が全て海に沈み、方舟が出来上がる間も無く、陸に生きていた全てのものが水の底に沈んだ。

 わたし以外。

 わたしは全くモーセそのもので、海に沈むこともなく、海の生き物に脅かされることもなかった。わたしが歩く周りだけ綺麗に水が引き、海はその断面を見せた。

 美しい水の牢獄に囚われながら、わたしは泣いた。その涙さえ、頬を伝うことは無い。指を濡らす事はない。

 世界中にたった一人、わたしは呪いの意味を理解した。

葉が濡れず、学名の由来となったところから着想しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ