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ブッドレア

 もはや呻き声すら出さなくなった男が、裸の背を痛々しく腫らして項垂れる。異端審問官は舌打ちしながら、真っ赤な鞭の痕に手桶の冷水を浴びせた。

「強情な奴め。いい加減折れたらどうだ」

 男は無言で、ただ激しく呼吸をしている。その合間にも胸の内で神の名を唱えていることが、多くの異端者を告発してきた審問官には分かった。

 審問官は更に、持って来させた塩を男の傷口に擦り込み、熱した鉄を皮膚に押しつけ、他にも思いつく限りの責め苦を行った。が、それでも男は祈りをやめず、信仰の撤回をしない。死んでしまったかとも思ったが、しっかりと生きている。そこまでされながらも意識を保っている男を見て、審問官は段々に恐ろしくなってきた。

 人間が耐えうる苦痛の限度をとっくに超えながら、それでも男は音を上げない。こんな異端者は初めてだった。

 審問を始めて一週間後、審問官は震えながら、かろうじて人の形を保っている男の前に跪いた。脱帽し、こうべを垂れ、許しを乞うた。

 真実の信仰は、もはやその男を本当の神に変えたのだと、審問官はようやく悟ったのだった。

花言葉「深い信仰心」

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