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クロッサンドラ

 友だちの数が八百人を超えた。

 小学生になった時、友だち百人できるかななんて歌っていたのが冗談みたいだ。八倍だよ、八倍。

 それと言うのも、私に友だちがいないのを哀れんだ母が妙なセールスに引っかかって抱えてきた「友だち製造機」のせいだ。やたらとイケメンで良い声のセールスマンが巧みなトークと共に彼女に押し付けたその機械は、一見するとただの炊飯器だ。炊飯器と違うのは、「炊飯」ボタンの代わりに「友だちを作ろう」ボタンがあしらわれていることと、作った「友だち」の人数カウンターがあること。あと、無駄に格好いいカラーリングで、赤と黒の綺麗なグラデーションが掛かっているのも特徴か。母曰く「炊飯器と間違わないためだろう」ということだが、こんな訳の分からない代物を現金で即買いしてしまう人間の推測など当てにはならない。

 ひっきりなしに通知が来るスマホを持て余した私の横で、母がまたもや「友だちを作ろう」ボタンに手を伸ばす。止めたって無駄だ。八百回試して、流石にもう諦めた。母の指が離れると、機械はぶるぶると震え出す。側面にある、待ち時間を示すらしいメーターがすぐに一杯になり、同時に私に「友だちが出来る」。

 最初は、クラスメート達だった。今まで私のことなんて眼中になかった彼らから突然メールが届き、電話がきて、近所に住んでいた何人かは家にやって来た。クラスメートの次は同学年、その次は他学年……最終的には学校の関係者ほぼ全てが私の「友だち」になった。四百名を超えた辺りから、家の近所、通学路……と徐々に範囲が広がってきて、今では市内の何処を歩いても誰かに捕まってしまう。

 でも、こんなことに何の意味があるんだろうか。

 私に友だちがいなかったのは、友だちになりたい相手がいなかったからだ。無理をして人に合わせてまで誰かとつるみたいなんて、思ったことがない。現在のこの状況も、毛ほども嬉しくない。心が通う僅かな人を、自分の目で見定めて交友する楽しさは、ここには無い。

 けれど、私が母の手を無理にでも止められないのは。

「これで貴女にもお友達が出来たわね」

 カウンターの数値が増えるたびに、今まで見せたことのない嬉しそうな顔をする、母のせいなのだ。

花言葉「友情」

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