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プロテア

 王宮の奥には魔が潜む。王族以外には決してその姿を現さず、誤って出逢ってしまった者は、塵も残さず喰われてしまう。一方、王族には予言を施し、王国を繁栄へ導いてきたと言う。

 子どもの頃、乳母から聞かされた物語では、魔は恐ろしい獅子の形を取っていた。南洋に浮かぶ小さな島のこと、獅子という動物は見たことも無かったが、要は、魔とは見たことのないような化け物であるということだ。

 そんな話は嘘だった。

 王は、自分が王位についてから数度目となる予言の宣託に挑みながら思った。目の前に立つのはすらりとした美人。清浄極まりない美麗な衣から覗く日に灼けた黒く光る肌、真白く並びの良い歯、大きく円い、無限の星を湛えた瞳。肌と対照的に白い髪は腰まで届き、艶々と輝いている。

 果たしてコレは、男だろうか女だろうか。

 平伏し、王宮の奥庭の地面に額をつけたまま、王は考えを巡らせる。しかし、あまりの美しさ、その身から発される芳しい香りに目眩がするようで、いつも結論は出ず仕舞いだ。

 どちらでも構わない、これだけ美しければ……。

「王よ、予言を施しましょう」

「魔」は、冠を取った王の頭に手を置き、その姿に相応しく美しい声で言う。

「まもなく、東の島より災いがやってくるでしょう。賢人達の知恵を借りなさい……」

 王は、「魔」の手が自分から離れ、声も遠ざかりそうになるのを感じた。目に、耳に、鼻に、その存在を感じ取れなくなる時が近づいていることを知った。次、また予言の宣託を受けるのは、いつになるか分からない。

 深く考えている暇もなかった、いや、初めからそうするつもりだったのかもしれない。音もなく立ち上がった彼は、今しも庭の暗がりへ消えようとしていた、「魔」の後姿に抱きついた。

「そなたが何でも構わぬ。我がものになるのだ」

 若い王の腕の中で、「魔」は微かに身をよじった。その口元に笑みを浮かべて。

「私が貴方のものになれば、予言の力は失われましょう。国の繁栄と引き換えに……その覚悟が、あるのならば」


 程なくして東の島より攻め込んできた軍勢に劣勢に立たされた王国は、賢人たちの知恵も及ばず、戦局に関わる予言を受けることも能わず、一夜にして滅び去った。

南アフリカ共和国の国花であり、昔は国王しか目にすることができなかったということから着想しました。

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