お手紙
まだ屋敷にきたばかりのリリアンたちの様子です。
「うーん」
私は今日も、悩んでいた。
オーウェン様に媚びようと決めたものの、公爵邸に来てからというもの、ちやほやされてばかりだ。
媚を売るどころか、とてもよくしてもらっている。
……まずい。いずれ地雷を踏んで殺されるというのに! このままでは、地雷を回避するどころか、私自身が地雷になりかねない。
「困ったわ……」
大きくため息をつく。すると、紅茶をいれてきてくれたマージが不思議そうに首をかしげた。
「どうされましたか?」
「マージ、あのね……」
素直に、一年後地雷を踏んでオーウェン様に殺されるかもしれないから、その回避方法を考えてる……と、伝えようとして、やめる。
絶対おかしくなったと思われちゃうわ!
でも、嘘はつけないし。
「あのね、マージに好きな人がいるとして……」
「はい」
マージから紅茶を受け取り、話を続ける。
「そのひとに、こ……好かれるためにはどうしたらいいと思う?」
「……ふふ」
マージは小さく笑うと、そうですねぇ、と口に手を当てた。
「私は、正直に気持ちを伝えますね」
「ええっ! いきなり!?」
それはかなり積極的だ。
「……というのは冗談で」
良かった、冗談だった。
「まぁ、さまざまな方がいらっしゃるので、一概にはいえませんが、距離を少しずつつめようと試みますね」
「なるほど」
それはいい作戦かもしれない!
「距離をつめるかぁ……」
「旦那様とリリアン様はまだ出会ったばかりですからね」
「そうなの! ……あ」
思わず、大きく頷いてからはっとする。
「ち、ちちちちちちが、いや、ちがわないんだけど……」
恥ずかしい。
「手紙、などをかかれるのはいかがですか? 自分の趣味や特技だとか、いろいろとしっていただくことは大事かと」
「手紙……」
確かに。自己紹介もそこまで深くはしてないものね!
これは有効かも。
「わかったわ! ありがとう、マージ」
「いえ、お役に立てたならよかったです」
そうと決まれば、さっそく、書いてみよう。
まずは、改めて私を婚約者に選んでくれたお礼と、自己紹介よね。
◇◇◇
「旦那様、ずいぶんと楽しそうですね」
そういえばさきほどお嬢様が手紙を旦那様に持ってきていた。
そんなことを思いながら尋ねると、旦那様は微笑んだ。
「……ダグラス。ああ、こんなにかわいらしい手紙をもらったのは始めてだ」
旦那様はそういうと、愛しそうに便箋を撫でた。
「どんなことがかかれていたんですか?」
「彼女の得意なこと、苦手なこと、好きな食べ物――そして、わたしはなにが好きなのか知りたいと」
「それは、よかったですね」
「ああ。知りたいなんて、初めていわれた」
そういって微笑む旦那様は、幸せそうで。
最近、よく旦那様のこの顔を見られるようになった。それは――間違いなくお嬢様のおかげだった。
ときにから回っていることもあるが、お嬢様は、心のそこから旦那様を大切にしてくれている。
改めて、お嬢様がこの公爵邸にきてよかったな、と思いながら、私は旦那様に返事をかくことをすすめた。
いつもお読みくださりありがとうございます。
本作のコミカライズの一巻が、明日9月9日に発売されます!
レーベル:モンスターコミックスf
漫画:ムネヤマヨシミ先生
キャラクター原案:なま先生
です!
また、本作の書籍の3巻が、電子書籍で発売することが決定しました!すでに予約開始しておりますのでよろしくお願いします。
発売は、10月です!
何卒よろしくお願い申し上げます。




